■ 今日のおすすめ
『それでどうする!「日本経済」これが答えだ!』
(竹中平蔵 榊原英資 対談 田原総一郎責任編集 出版社:株式会社アスコム)
■ 日本の未来に希望はある(はじめに)
新しい年が始まり、早1か月を過ぎようとしています。私は、年末年始には、新しい年及びその先の将来の見通しに関する論点の整理に参考になる本を、手にします。
経営コンサルタント、あるいは経営に携わる方々が、経営を考えるとき、初めに行うのがPEST分析です。つまり、経営の土台となる政治(Politics)、経済(Economics)、社会(Social)、技術(Technology)に関する状況を正確に認識することがまず求められます。
今日お勧めする本は、最新のPESTに関する論点の整理をするには、格好の書であると思います。テレビでおなじみの、竹中平蔵と榊原英資というタイプの異なる学者・評論家が持論を対談方式で、グローバルにそして多岐にわたり、簡単明瞭に展開します。文庫本200ページ余りで、あまり時間を掛けずに読める事もこの本の良さです。
この本の極めつけは、最終章です。国連が2012年6月に発表した「InclusiveWealth Report 2012」(「包括的≪人的、自然的、物的)な富」の報告書)において、日本が、一人当たり包括的富は世界NO1、国別では、アメリカに次いで世界NO2であったことを挙げています。「一人当たり世界NO1になったポテンシャルを生かし、ポテンシャルを更に引き上げていくために、横たわる障害を除くことによって、日本には明るい未来がある」と、日本の将来の希望への道筋を示している事です。
■ この本から読み取れるPESTのポイント
【日本について】
グローバル化、グローバル時代のマーケッティング、少子化、外国人労働者、円高、規制緩和、既得権益、官僚制度、政治のリーダーシップ等多くの論点が討論されています。結論が一致する所と別れるところがはっきりしている所が面白い。又傾聴すべき点も沢山あります。
【中国について】
中国について交わされている論点はなかなか面白い。特に中国を絡めたTPPの見方、国際政治における、「スマートパワー」(「ハードパワー」≪軍事など)プラス「ソフトパワー」≪文化交流、人権など≫)の重要性という新しい概念は、傾聴に値する。
【アメリカについて】
アメリカがシェールガスやタイトオイルの開発に成功し、エネルギー大国となったときに、世界に及ぼすインパクトに関する論点は、押さえておきたいポイント。
【ヨーロッパについて】
ユーロ体制については、混乱の解決は簡単には収束しないとの結論であるが、日本が福祉などの点で、ヨーロッパに学ぶ点があるとしている点には注目したい。
【原発について】
問題が問題だけに、論点の指摘にとどまっているものの、日本のエネルギー体制に関し、「電力の自由化」「現状維持体制の打破」には傾聴すべき点がある。
■ 岐路に立つ日本及び日本企業(結び)
この本から読み取れることは、今まさに日本あるいは日本企業が岐路に立っていると言う事ではないでしょうか。それは、日本の国民性にまで行き着く事項と思われます。
たとえば、「和を以って貴しと為す」等の良さが、「長いものには巻かれろ」的に、異論を排除する文化を生み出したり、組織内融和を重視することが高じ「保身」や「体面」が先行する文化が生まれてきているのではないでしょうか。
今こそ、「何をなすべきか」「何をなさざるべきか」をはっきり認識し、新しく生まれ変わらせていこうと言う心意気が必要な時代であると、この本は教えてくれていると思います。
【酒井 闊プロフィール】
10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます