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『「失敗の本質を語る」ーなぜ戦史に学ぶのかー』
(野中郁次郎著 聞き手 前田裕之 日経BP)
- “私の本棚”活動は10周年を迎えることが出来ました。感謝です。(はじめに)
【“私の本棚”はお陰様で10周年を迎えました】
当“私の本棚”に投稿させて頂いてから今回が10周年に当たります。この間、私の投稿をお読み頂いている読者の皆様に心から感謝申し上げます。
2012年10月23日、最初の投稿『「失敗の本質」(野中郁二郎他5氏共著 中公文庫)』を投稿ました。
爾来10年、毎月第4火曜日の投稿を続けてきました。執筆にはそれなりの準備が必要ですので、負担感はありましたが、振り返ってみると続けてよかったとの思いで満たされています。読者の皆様の“いいね”は励みになりました。改めて感謝です。
【“私の本棚”活動10年の思い出】
この10年間の投稿を通じての思い出を記させて頂きます。
一つ目は、投稿に寄せられた紹介本の著者の喜びの声です。遠く英国からもありました。インターネットの力を感じました。友人の著書の投稿では、友人との共感を深めることができました。
二つ目は、多くの知見を得られたことです。読むだけでは、右から左に抜けてお終いですが、投稿活動により文字化することで脳が活性化し、海馬を経て大脳皮質に多くの知見が蓄積されました。コンサルタントの引出しが充実しました。つん読の名著をものにすることも出来ました。「ビジョナリー・カンパニー」シリーズ(2022.3.22投稿)、「7つの習慣」(2019.1.22投稿)、「文明の衝突」(2015.11.24投稿)、「人を動かす」(2014.1.28投稿)、等です。
三つ目は、P・E・S・Tの真実の追求と未来の読み解きです。『「脱炭素」は噓だらけ』(2021.10.27投稿)、『「アメリカ一極体制の崩壊」と世界激変の行方』(2017.3.28投稿)、など現在の世界の混乱を読み解く投稿ができました。
四つ目は、普通投げ出したくなる膨大なページの本を自家薬籠中のものに出来たことです。「ビジョナリー・カンパニー」シリーズ:2049ページ(2022.3.22投稿)、「世界標準の経営理論」:803ページ(2021.1.26投稿)、等です。
【“私の本棚”活動の「知識創造プロセス(SECIモデル)」効果】
最初の投稿の「失敗の本質」と書名が似た「失敗の本質を語る」を最近偶然見つけ、10周年の記念月である今月の紹介本にしました。「失敗の本質を語る」は著者の野中郁次郎が「失敗の本質」から38年後の2022年5月、「著者自身の歴史」を振り返って発刊した本です。著者は最初の著書「失敗の本質」に続き「アメリカ海兵隊」「知識創造企業(2014.7.22投稿)」「戦略の本質」「国家経営の本質」「ワイズカンパニー」を始めとする多くの著書・研究を振り返り、ナラティブ(物語る)しています。
「失敗の本質を語る」を、10周年の記念月に採り上げたのは、“私の本棚”活動が、著者の著作の中核である「知識創造プロセス(SECIモデル)」と気付いたからです。
『“私の本棚”活動と「知識創造プロセス(SECIモデル)」』について、次項で述べさせて頂きます。
- “私の本棚”活動と「知識創造プロセス(SECIモデル)」
【“私の本棚”活動は、「知識創造プロセス(SECIモデル)」パラダイム】
SECIモデル(注1)の素晴らしい点は、進化を続けていることです。最新のSECIモデルでは「経営学」に「現象学」を加えています。つまり、モデルのプロセスの間で生じる「認識論」に加え、知識を創造する人と他者の間で生じる「存在論」の次元を強化しています。個人間、チーム内、組織内、等における「相互主観性」で繋がる相互作用を通じて、フロネシス(賢慮な知見〈知識が「体化」したもの〉によるリーダーシップ)のもと、高次の知識創造が、Continuous(途切れない)に促進され、企業・組織の成功に繋がるとします。加えて、過去の研究事例を踏まえ、フロネシスの重要な要素は「共通善(パーパス、存在意義など)」とします。
かかる理論のもと、知識創造の源を“人間中心”の「人格的知識」としています。「人格的知識」は次の二つです。「個人の身体への体化(職人芸など)」の知識と「個人そのものに体化される認知スキル(視点、信念、パラダイムなど)」の知識です。
さて、“私の本棚”活動ですが、私の「人格的知識(暗黙知)」と紹介本、WEB上の「ハイパー・テキスト(注2)」情報、等々との「相互作用」、「共同化(Socialization)」を経て、文字化・形式知化され“私の本棚”原稿として「表出(Externalization)」されます。多くの“私の本棚”投稿が年月を経て蓄積され、その中の幾つかは「連結(Combination)」され、新たな知見ができます。新たな知見は私の「人格的知識(暗黙知)」として「内面化(Internalization)」され、私の引出しに貯蔵され、コンサルに活用する時の出番を待っています。
この様に、“私の本棚”活動は、SECIモデルによる知識創造と気付きました。加えて「共通善(真理、真実など)」を追求してきたと思っています。
(注1)知識創造の「SECIモデル」プロセスとは。
Socialization(共同化)。二人以上がお互いの「人格的知識(暗黙知)」を出し合い、共有・共同化するプロセスです。
Externalization(表出化)。共同化した多くの暗黙知を明確なコンセプトにするプロセスです。metaphor(比喩)、analogy(類似推論)、abduction(仮説化)、デザイン思考、等の形をとりながら文字、計算式、図表などの形式知として明示・表出化するプロセスです。
Combination(連結化)。表出された形式知を組み合わせ(連結し)て一つの知識体系を創り出すプロセスです。
Internalization(内面化)。連結化で出来た知識体系を書類、マニュアル、物語などに言語化・図式化し、その学習により、個人の新たな「人格的知識(暗黙知)」として「体化」するプロセスです。
このあとは、新たなSECIを回しスパイラル・アップをします。更には、個人から、チームへ、組織へ、組織間へ、社会へとステップ・アップし新たな知識創造を実現します。(【参考】図による理解はこちら)
(注2)「ハイパー・テキスト」とは
情報間の多方向的な結びつきを、ユーザー・オリエントで、即座に実現することができる、「言語情報の形態モデル」と定義できます。
因みに「https://www.」は「http=Hypertext Transfer Protocol」「www= World Wide Web」です。
要は、「世界中で、ユーザー・オリエントで取得できる言語情報ネットワーク」と言い換えることができます。
野中郁二郎が「知識創造企業」でいう「ハイパー・テキスト型」組織とは、誰かから与えられる情報ではなく、組織員各々が主体的に・世界的にネットワーク型で情報をやり取りできる組織と言い換えることが出来ます。
【“私の本棚”における「連結(Combination)」の好事例】
著者野中は著書「アメリカ海兵隊」の中で、アメリカ海兵隊の成功の本質を自己革新組織とし、自己革新組織の要素の一つとして「不易」の存在価値(仲間への愛など)と「流行」の機能価値(即応力など)を挙げます。
企業経営における「不易」と「流行」は何かを考えてみましょう。「ビジョナリー・カンパニー」シリーズの以下の理論と「連結(Combination)」することでより深い答えを得られます。つまり、ビジョン=コアバリュー(会社を導く哲学)→パーパス(存在意義)→ミッション(説得力ある目標)フレームを、ミッションを『進歩を促すための「BHAG(Big Hairy Audacious Goal :“社運を賭けた大胆な目標”; Hairyは身の毛もよだつの意。 Audaciousは大胆なの意)」』に置き換える“新フレーム理論”との「連結」です。
「連結」の結果、企業経営における「不易」はコアバリュー&パーパス(存在意義)、「流行」はBHAGと答えを導き出せます。加えて、BHAGが野中理論の機能価値(即応性)を備えるべきと考えたとき、「ハリネズミの概念(情熱、世界一、経済原動力の3つの輪の重なる部分を目標に置く)」によりBHAGを追求する一方、「ANDの才能(基本理念・計画の維持&変化の模索と実験、安定&変化、理念の管理&自主性の管理、等の二項対立(ダイコトノミー)を超越する力)」を実践する経営との答えが見えてきます。
- 引き続き「経営コンサルタントの知識創造」を続けます。(むすび)
人生100年時代(『LIFE SHIFT 2「100年時代の行動戦略」』2022.5.24投稿)に向けて、更なる知識創造に加え「共通善」追求し続けたいと思っています。引き続き宜しくお願い申し上げます。
【酒井 闊プロフィール】
10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。
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