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「私の本棚2017.8.22」

2019-05-06 17:48:02 | 経営コンサルタント

 

■         今日のおすすめ

 『「2050年の技術」〈英〝エコノミスト〞誌は予測する〉』

                  (英〝エコノミスト〞編集部著 土方 奈美訳 文芸春秋)

 『インダストリー4.0時代を生き残る!中小企業のための「IOTとAIの教科書」』

                  (島崎 浩一著 総合法令出版 )

 

■         デジタル革命に至る歴史を見てみよう(はじめに)

 今回二冊の本を紹介します。何故でしょう。それはどちらの一冊でも十分ではないと思うからです。「2050年の技術」は技術の基盤となる広い大きな流れを把握する観点から、総論として一読しておきたい本です。一方、企業経営の観点から言えば、具体論がなければ、総論だけでは意味がありません。広い大きな技術の流れの中で、企業経営に甚大な影響を与えるものは何かという観点から、「IOTとAIの教科書」を選びました。「IOTとAIの教科書」は中小企業がデジタル革命の潮流の中で生き残る方法を語っている本として必読の書と言えます。

 まず、デジタル革命(第4次産業革命、インダストリー4.0、IOTなど色々な言葉で表されている)を、歴史的に見て今は何処なのか確認したいと思います。第1次産業革命(手工業から蒸気機関などによる機械工業への変革)、第2次産業革命(電力の普及とベルトコンベアーによる大量生産と石油の利用による自動車産業の急速な発展)、第3次産業革命(PLC〈プログラマブル・ロジック・コントローラーの略。シーケンサーとも呼ばれる;制御装置〉に代表される、電気とIT(情報技術)を組み合わせたオートメーション化)を経て、今まさに突入しているのが第4次産業革命です。

 IT(情報技術)の観点から、第4次産業革命と第3次産業革命の違いはどこか。『2050年の技術』は、ITテクノロジーを7つの波に分けて説明しています。『第1の波は、メインフレームとメインフレーム型ミニコンピューターを世に送り出した時代。第2の波は、オペレーティングソフト(OS)とデスクトップパソコンのソフトを主戦場とするパソコンの時代。第3の波は、インターネットとそれに乗った、アマゾン、グーグルの時代。第4の波は、アップル、グーグル、アマゾン、フェイスブックが活躍するクラウドとモバイルコンピューティングの時代。第5の波は、ビッグデータの時代。第6の波は、「モノのインターネット(IOT)」の始まりの時代。第7の波は、始まったばかりであるが、AIとAIを使ったアプリケーションの時代』と説明しています。

 『2050年の技術』は、『第5~第7の波が第4次産業革命の始まりであり、この波の勝者が「2050年の持続的成長企業」となる』と言います。「2050年の持続的成長企業」になるために、第4次産業革命をどのように勝ち抜いていくか、『IOTとAIの教科書』に基づき、次項で考えてみたいと思います。 

 

■         「2050年の持続的成長企業」になるために

【内閣府発表の「日本再興戦略2016」の副題は-第4次産業革命に向けて-】

 「日本再興戦略2016」は、日独の「IOT・インダストリー4.0の協力に関する共同声明(2016年4月)」の直後の2016年6月に公表されました。その副題は「第4次産業革命に向けて」です。「日本再興戦略2016」の中に、『データ利活用のアイデアによって、だれが競争力を有するかは一夜で変わる。製造現場など日本が強みを持つ分野と人工知能等の第4次産業革命のカギを握る技術をどう組み合わせて勝負するのか。勝ち目はあるが、ここを逃せば後はない』と危機感を表明しています。それは、例えば、「トヨタ生産方式」の「JIT(ジャスト・イン・タイム)」も、インダストリー4.0のキーワードの一つである「マスカスタマイゼーション(個々の消費者に合せた一品一様の商品作り)」には負けると認識していることなのです。

【第4次産業革命(インダストリー4.0)の3つのキーワード】

 3つのキーワードは「スマート工場」「サービタイゼーション」「マスカスタマイゼーション」です。この3つのキーワードを経営・現場・バリューチェーン・サプライチェーン(グローバルを含む)、IT(情報技術)の観点から十分理解することがスタートです。その内容については紙面の都合上『IOTとAIの教科書』の説明に譲ります。

【中小企業と第4次産業革命】

 『IOTとAIの教科書』の著者は、『日本もドイツも中小企業の比率の高さでは共通点を持っています。ドイツでは中小企業向けプラットフォームを一括で供給する「フラウンフォーファー研究所」というシステムインテグレーターが存在しますが、日本ではそのようなシステムインテグレーターは大企業向けのシステムに集中してしまい、大企業も自前のものに最適化し、外には出さないのです。ここに日本の問題点があります。大企業も中小企業もこの問題点を自覚し、クリアーしていかないと、ドイツなど他の国で「スマート工場」がグローバルスタンダード化してしまうと、「ものづくり大国」「世界一の製造技術」「オートメーション、ロボットの活用先進国」の日本がガラバコス化してしまい、大企業も中小企業も経営が立ちいかなくなります』と主張します。

 それでは中小企業として、この問題にどう立ち向かっていったらよいのか、について書かれたのが『中小企業のための「IOTとAIの教科書」』です。著者は『第4次産業革命は、今まで得意としてきた「改善(カイゼン)」ではなく、製造業に「改革」を迫るものであり、そのことを忘れると安易な対応に終わってしまい、結局は取り残される』と警告する一方で、『真剣に取り組む企業は必ず生き残れる。1社1社独立しつつも、中小企業連合体(クラスター)が共存共栄している未来を強く感じる』とも言い、また、『横に繋がることで、中小企業が「単なる下請け」から「イニシアティブをとれる存在」に変革できるチャンスの時』とも言います。

 『IOTとAIの教科書』には、「インダストリー4.0導入プロジェクトの進め方」や、インダストリー4.0の成功事例なども多く掲載されています。ぜひ手に取り熟読してください。このテーマを乗り越えずして「2050年の持続的成長企業」にはなりえません。

 

■         デジタル革命が進む中で、何をすべきか(むすび)

 第4次産業革命(インダストリー4.0)の3つのキーワードについて前項で記しましたが、「サービタイゼーション」については、GEの飛行機エンジンに係る「Predix」をはじめ、『「売り切り型」から「アフターサービスの事業化」』に成功する色々な事例が出てきている感があります。「スマート化」については成功事例が少しずつ出てきています(安川電機など)。「マスカスタマイゼーション」についてはまだ成功事例が少ないと思います。

 いずれも、これから本格化していく時期ではないでしょうか。その意味で、まずは「このテーマから目を離さないこと」「何か課題を考える時には、第4次産業革命の3つのキーワードを頭に置きながら思考すること」が大切ではないでしょうか。

 その上で、良いタイミングで、3つのキーワードの実現に向けて具体的な行動を起こすことでしょうか。

 

【酒井 闊プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/

http://sakai-gm.jp/index.html 

 


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