■ 今日のおすすめ
『すべては戦略からはじまる』(著者:西口 貴憲 発行所ダイヤモンド社)
■ 楽しみながらフレームワークを身に着けよう(はじめに)
4年ほど前に“もしドラ”という言葉が流行語になったのを記憶しておられる方も多いと思います。 “もしドラ”は野球部の女子マネジャー川島みなみがドッラーッカーの理論を取り入れ、甲子園に出場するチームに育てあげるという物語でした。今日ご紹介する本は、経営不振企業K&H社の経営再建のために親会社から派遣された高嶺舞と今井慎也の二人が、K&H社を「フレームワーク」を使いながら立て直して行き、最後にK&Hは再生し、二人の愛が結ばれるハッピーエンドの物語です。理論を物語で読む面白さ、記憶の定着度の高さを実感できる本ではないでしょうか。
ところで、「フレームワーク」というマネジメント・ツールをどのようにお考えですか。私は、「フレームワーク」をマネジメントの仮説を創出する“幾何学でいう補助線”と位置づけています。補助線をどう引くかで、幾何学の問題が正解に導かれるか否かの分かれ目になるように、マネジメントの問題解決の道が、「フレームワーク」を使うことで的確に導かれると考えます。勿論、仮設を立て検証し、真の問題解決をするには「フレームワーク」以外の他の手段を併行して使っていかねばならないことはいうまでもありません。
■ 「フレームワーク」が使われる場面を散策してみましょう
【舞が新製品の販売競争でベテラン営業部長に勝つ】
経営再建に来た舞は、ベテラン部長の近藤から、新製品を3週間でどちらが多く売るか、勝負を挑まれます。結果は舞チームが近藤部長チームに倍の差をつけ圧勝します。なぜ圧勝したのか。ここで「4P(Product・Price・Place・Promotion)」という有名な「フレームワーク」が出てきます。なぜ舞いチームが勝ったのか。読んでからのお楽しみ。どうですか?教科書を読むより楽しいでしょう。「4Pのフレームワーク」は、こんなふうに使うのか、成程と妙に納得しませんか。
【会社はどこに向かうべきか】
舞と慎也の二人は、K&H社に将来の核となる事業があるかを検討します。「経営戦略の策定プロセス」「戦略ドメイン3つの軸」「戦略の3段階(3階層)」「PEST分析」「SWOT分析」「フェルミ推計」「PPM」「5フォース」「ビジネススクリーン(GEグリッド)」などの「フレームワーク」が、物語の中で使われます。教科書などで、「フレームワーク」だけの解説がされると途中でいやになりますが、この物語では面白く読み進めます。なにか「フレームワーク」に親しみすら感じ始めます。
そして、検討の結果、K&H社には、将来の核となる事業は何もないとの結論になるのです。
【新規事業を模索する】
舞と慎也の二人は、将来どのような事業に進出して、K&H社を立て直すのかという一番難しい課題に取り組むことになるわけです。「ポーターの3つの基本戦略」「競争上の地位と基本戦略パターン」「3つの組織構造」「マッキンゼーの7S」「ハーズバーグ2要因論」「ポジショニングマップ」「新製品開発プロセス」「新たな価値を発想する6つのパス」「戦略キャンパス」などの「フレームワーク」を使いながら、組織改革の中で新たに抜擢された依田開発部長を加えた3人が中心になり、新製品の売り出しに成功し、ハッピーエンドになります。さらに舞と慎也の愛が結ばれるというエピローグでこの物語は終わります。
■ フレームワークを日常的に使えるために(むすび)
「フレームワーク」を日常のビジネスで、頭の中の引き出しから出して使えることは、コンサルタントに限らず、あらゆるビジネスパーソンにとって、一つの強みになります。教科書で頭に叩き込むのも必要な方法ですが、それに加えて、紹介本により、物語のシーンの中で「フレームワーク」の使われている場面を頭の中の引き出しに入れておくことで、生きた「フレームワーク」として、ビジネスの場面で効果的に活用できるのではと思っています。
皆様のお仕事の一助になればと思い、本書を紹介させていただきました。
【酒井 闊プロフィール】
10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます