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「私の本棚2017.2.28」

2019-05-06 17:17:55 | 経営コンサルタント

 

■         今日のおすすめ

 『日本の論点2017~18』(大前研一著 プレジデント社)

 

■         年初に当たりこれからの日本の論点を整理してみよう(はじめに)

 新しい年のスタートの時期に当たり、PESTに係る本をご紹介します。

 英国エコノミスト誌から、「現代世界の思想的リーダー」として、ドラッカー(故人)やトム・ピータースと共に名前が挙げられている大前研一が、プレジデント誌に連載している「日本のからくり」の過去1年分のストック及び特集記事から読者の反響の大きかった記事に、加筆修正して出版したのがこの紹介本です。

 トランプが大統領選を制した直前に出稿された本ではありますが、トランプが共和党候補として、民主党候補のクリントンと互角の選挙戦を戦っていたことから、そこにアメリカの右傾化、ポピュリストの台頭を見出し、併せて世界の右傾化を指摘している点は、先を読める大前研一ならではと思わせます。

いずれにしても、2017年がどのような年になるのかを一言で表現するならば、

「不確実性の年」と言えるのではないでしょうか。不確実性の時代を出来る限り正確に見通そうとするならば、いま世界で起こっていることの「メタ(一般的情報の背後にある、決断の根拠にできる事実情報)」を認識することです。

 その点で、本紹介本はピッタリと言えるでしょう。それは著者の豊富な経験と分析力によると思います。それでは、「日本の論点」の中から、これは注目に値すると思われるいくつかを次項でご紹介します。

 

■         注目したい日本の論点

【巨大ビジネス創出!「アイドルエコノミー」】

 「アイドルエコノミー」のアイドルはIdolではなく「Idle」即ち「働いていない」「使われていない」「空いている」を意味します。「アイドルエコノミー」の大きな変化が起きている例としてアメリカの宿泊業界の例を著者は挙げています。アメリカのサンフランシスコにある2008年創業のAirbnb(エアービーアンドビー)社は、個人の所有する空き部屋を宿泊希望者に仲介する、いわば「民泊」のプラットホームを世界190か国で展開しています。Airbnbは宿泊者の本人確認をメールアドレスなどによりしっかりと行い、宿泊後は空き部屋提供者と宿泊者双方が評価し合い、新たなユーザーはその評価を参考に安心して利用できるシステムを構築しました。これにより、Airbnbは客室数で、マリオット(米)やインターコンチ(英)などに比肩するまでに成長しました。

 このような「アイドルエコノミー」は、すでにタクシー業界には猛烈なスピードで入ってきています。また国境を越えてエンジニアやクリエイターのクラウドソーシングサービスを手掛けるアメリカの最大手Upwork社は、専門家の空き時間をマッチングするという点で「アイドルエコノミー」の象徴的プレイヤーと著者は指摘します。

 このような国境を越えた「クラウドソーシング・ビジネス」「アイドルエコノミー」に注目していく必要があると著者は強調しています。

【財政赤字の問題】

 著者は、アベノミクスの景気浮揚効果を阻んでいる一つの要因として、1300兆円の国家債務が国民の将来不安を生み、消費より貯蓄という行動を生んでいると指摘します。また、これまでに「黒田バズーカ」で日銀が購入した国債は400兆円。万が一国債が暴落した場合は、日銀そのものが爆死し、中央銀行としての機能が果たせなくなる、危険な水域に入っていると指摘します。

 著者は、将来不安を無くすための政策として、道州制のような新しい統治機構が出来たタイミングでの、資産税と付加価値税の導入を提言しています。資産税についていえば、国民の固定資産と貯蓄を合わせると3500兆円。法人部門の固定資産と内部留保(預貯金等で運用)を合わせると1500兆円。合計資産は5000兆円になり、これに1%課税すれば50兆円の税収。また付加価値税については、一律10%とすると、GDPの10%として50兆円の税収。資産税と付加価値税を合わせ100兆円の税収になり、予算を70兆円前後とすれば、毎年20~30兆円は、国家債務を減らしていくことが出来、将来不安を解消できるとしています。資産税を徴収すれば、当然相続税等はなくなり、家族関係を歪めている要因を無くすメリットも有るとしています。

 道州制などの新しい統治機構が出来たタイミングで、また、中産階級を増強していく仕組みを組み込むことを前提に、資産税、付加価値税の導入という提言は、頭の中に入れておきたいと思います。

【その他の「論点」】

 上記以外にも「イタリアの地方創生法」「蔡英文台湾と中台関係」「世界を席巻するポピュリスト旋風」等、大前研一流の知見と深い洞察力で書かれている「日本の論点」が多く掲載されています。詳しくは紹介本をお読みください。

 

■         2017年は世界に向けて感性の高い情報アンテナを張ろう(むすび)

 著者は、読者に向けて、『ビジネスパーソンとして、「世界経済を自分の肌感覚でつかめる」ようになるには、NHKBS1の朝4時から7時までの「ワールドニュース」を見るだけで、1年後には相当力が付く』と勧めています。朝の苦手な人は録画しておけば時間の空いた時に見ることが出来ます。確かに海外放送局の放映をダイレクトに見ることは、国内ニュースでは得られない新たな情報が入ってきます。

 不確実性の時代に「メタ」を得ていく具体例として、「ワールドニュース」のお話を紹介しましたが、感性の高いアンテナを張りめぐらし、そこから得た情報を生かしながら、企業経営に係るビジネスに生かしていく年にしたいですね。

 

【酒井 闊プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/

http://sakai-gm.jp/index.html


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