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「私の本棚2016.2.23」

2019-05-06 16:10:10 | 経営コンサルタント

 

■         今日のおすすめ

「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら」

                                                                             (著者:岩崎 夏海 ダイヤモンド社)

「イノベーションと企業家精神―Innovation and Entrepreneurship―」

                                                (著者:P.F.ドラッカー 訳者:上田 惇生 ダイヤモンド社)

 

■         「もしイノ」は面白い経営書です(はじめに)

 2009年12月に「もしドラ」が出版され、ドラッカー・ブーム、マネジメント・ブームが起きたことは皆様の記憶にも残っているのではないでしょうか。あれから6年後の2015年12月に「もしドラ」の第二弾と銘うって「もしイノ」が出版されました。「もしドラ」はドラッカーの「マネジメント」を教科書にして、既存の野球部にマネジメントを取り入れ、強化し、見事甲子園に出場するという青春物語でした。

 「もしイノ」の教科書は、ドラッカーの「イノベーションと企業家精神」です。「マネジメント」に比べ、やや難解な経営書です。やや難解な経営書が「もしイノ」にどのような物語として具象化されているのか興味があって「もしイノ」を読みました。

 物語は、かつて甲子園に出場した実績を持ちながら廃部になっていた野球部を、主人公の夢を中心とする六人のマネージャーと教師として赴任している「もしドラ」著者の文乃を部長としたメンバーのみで、ゼロから再スタートさせます。「イノベーションと企業家精神」の教えをもとに、新入学する野球部員の募集、監督の選任、野球部員の育成などを行い、その中で、イノベーションを実践し、スタートして3年目に甲子園に出場を果たすというストーリーです。

「もしイノ」を読むことで、やや難解な「イノベーションと企業家精神」を身近に感じることができます。読み始めると吸い込まれるように、あっという間に読み終えるでしょう。物語の中味は読んでからのお楽しみに。

「もしイノ」を企業の社員の皆さんで読み、「インフォーマルなミーティング」を開いてみたら、身近なイノベーションの機会に気づく良いチャンスになるかも知れませんね。

 

■         この機会にドラッカーの「イノベーションと企業家精神」も読んでみましょう

 「もしイノ」につられ、30年前に読んだドラッカーの「イノベーションと企業家精神」に再挑戦しました。「イノベーション」とは何か、「企業家精神」とは何かを改めて考えました。ドラッカーの紹介本で警告していることは、初版から30年経った今でも大切な警告として生きていると思います。

 本論に入る前に、英文の原著名が「Innovation and Entrepreneurship」となっていることに注目してください。翻訳の「企業家」は「企業家」+「起業家」の両意があると理解しますと、より深く読み取れると思います。

 ドラッカーがこの書で一番言いたいこと、それは『企業のサステナビリティー(持続性)は、イノベーションの機会・源泉を見つけ、それを企業家精神(体系的経営管理によるマネジメント)により事業として実現することにより、避けられない既存事業の衰退・陳腐化を乗り越え、新たな企業に発展・脱皮していくことに依る。しかもそれは多角化ではなく、今の事業を発展、成功させることに依らねばならない。』ではないでしょうか。更に、『「イノベーション」を、事業化(黒字化)するまで25年もかかったコンピューター産業などのハイテクのみ、と思ってはならない。「外へ出て、よく見て、問い、よく聞くことにより得られるイノベーションの機会を取り上げ分析し、明確な目的意識のもとに、合理的かつ体系的に行われる組織的活動」をイノベーションと捉えるべきで、ローテク、ノーテクも大切なイノベーションである。』と言っています。紹介本の中のドラッカーの主張を、三つのポイントに絞り、ご紹介したいと思います。詳細は紹介本をお読みください。

【イノベーションの実践―イノベーションの機会―七つの源泉】

 イノベーションこそ企業家に特有の道具です。企業家はイノベーションにより資源に新たな能力を付与し、真の資源たらしめることができるからです。イノベーションは一般的に平凡です。なぜなら、変化を利用しているに過ぎないからです。イノベーションの機会を与える、典型的な変化についての体系的検討のノウハウが、七つの源泉です。七つの源泉の順番は、信頼性と確実性の大きな順番に並べられています。加えて最初の四つは、組織の内部、所属する産業の内部の事象(身近に存在する事象)です。残りの三つは企業や産業の外部における事象(よく目立ち派手ながら結果の予測が難しい)です。

<イノベーションの機会―七つの源泉>                               

①予期せざる成功・失敗などの、予期せざるものの存在。②調和せざるものの存在、すなわちギャップの存在。③必然的に必要なる物、すなわちプロセス上のニーズの存在。④産業や市場の構造変化。⑤人口構成の変化。⑥認識の変化、すなわちものの見方、感じ方、考え方の変化。⑦新しい知識の獲得。

【イノベーションにおける企業家的経営管理(企業家精神)】

 「七つの源泉」による機会の分析と体系的・勤勉な努力を土台とした、明確な目的意識を持つイノベーションのみが、成功すると強調します。加えてイノベーションを明確に区別された仕事とし、既存のものから切り離した組織としてマネジメントされるべきと主張します。また、区別された組織は企業家的経営管理によりマネジメントされるべきと主張します。

【イノベーションにおける企業家的戦略―手薄なところを攻撃せよ】

 イノベーションを実践するに当たり、企業家的戦略の立案が重要と強調します。その戦略の一つとして、最もリスクが小さく成功の公算が大きい戦略を示しています。「創造的模倣戦略(半導体の進化によりスイスでクォーツ・デジタル時計が世に出たが、スイスが既存時計に依存していたところに、日本のセイコーがクォーツ・デジタル時計を標準化し市場に投入し、世界のベストセラーとなった例。市場志向・市場追従戦略。)」と「企業家的柔道戦略(ゼロックスは開発したコピー機を大型ユーザーに絞っていたが、日本のメーカーは比較的小さな顧客のニーズに答えた製品を出し、その市場を押さえた例。)」です。つまり手薄なところを狙う戦略です。イノベーションの成功には必ず戦略が必要であることを示しています。

 

■         今がイノベーションの大切な時(むすび)

 イノベーションは労働人口の減少社会、経済のグローバル化の中でその必要性は増す一方です。大企業は勿論ですが、中小企業こそイノベーションが生き残りのために必要とされます。

 ドラッカーは、イノベーションを成功に導くのは、前述した「機会の分析に基づく明確な目的意識」「イノベーション組織の企業家的経営管理」「イノベーション組織の企業家的戦略」の三つが一体としてマネジメントされた場合と言っています。

 本書を参考にしながら、まず身近なイノベーションの機会を探すことからはじめてみませんか。

 

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/

http://sakai-gm.jp/index.html


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