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「私の本棚2018.8.28」

2019-05-06 18:19:20 | 経営コンサルタント

 

■         今日のおすすめ

 『あたたかい管理のための「管理会計の教科書」〔営業・マーケッティング編〕』

                        (今井 信行著 秀和システム)

 

■         「管理会計」のイメージを変えられました(はじめに)

 私の「管理会計」の概念は、「制度会計」では判断ができない事項を「管理会計」で実態を明らかにし、“経営の意思決定と業績向上”に役立てることを目的とするものと理解していました。具体的には、「CVP分析(損益分岐点分析)」等のCosting、「公式変動予算」等のBudgeting、派生的なものとしてERP、BSC(KPIにより数値化できる)、京セラ会計などです。まさに著者の指摘する、横割りで捉える管理会計、に止まっていました。

 しかし、著者の「管理会計」に対する考え方の重要なポイントは、『多くの研究者は、管理会計の考え方を横割りで捉えている。それが実務家・利用者の有用性を妨げている実務に管理会計を利用するには、部門別の利用法など縦割りで考える方が有用性を高める。』にあります。

 一方、著者は、部門別であるが故に、全体最適性から外れては「経営を診る」という重要な目的を果たせないとして、「管理会計の目指すべき八項」として、全体最適性、上位概念整合性、仕組みの持続、目的意識の持続、臨機応変思考、共有財産の蓄積、共有財産の拡大、人間性重視の8項目を挙げています。特に重要な項目として、部門別の縦割り管理会計になった場合、ともすれば、個人実績などに拘りがちな点に留意し、「人間性重視/温かい管理」を強調します。

 更に、本著の特徴は、縦割りの部門として、「仮説・検証・データのKKD」から遠く離れ「勘・経験・度胸のKKD (著者は「経験・勘・根性の3K営業」と表現)」で運営されやすい「営業・マーケッティング」分野に光を当て、見える化・管理会計化した点です。更に言えば、「営業・マーケッティング」分野は、ブラックボックス化している分野です。そこに管理会計を導入した意義は大きいと思います。縦割り横割りの盲点を埋め、更には基幹システム(財務会計システム、販売管理システム)との連携により、バリューチェーン全体の統合的な管理ツールが出来、全体最適なシナジー効果が出て来るのではないでしょうか。

 紹介本は、「営業・マーケッティング」分野の管理会計化や、「マーケティング」理論の管理会計化への発展的展開も含め、実用的で且つ新たな発見に出会える著書と思います。

 著書の中に見出した多くの新しい発見から、幾つかを次項でご紹介します。

 

■         初めて知る有用な“営業・マーケティング”の「管理会計」

WINS-ABC管理

 「WINS-ABC管理」の「ABC管理」は、いわゆるABC分析が基になっていますが、著者の分析はより意味のある深い分析になっています。例として、ABC分析を、急上昇型、標準型、フラット型に分け、それぞれの型の特徴と、留意点を記述しています。有用な分析です。

 ここで登場するのが「交叉比率」です。顧客管理において留意すべき「交叉比率」は売上構成比×粗利率です。単純に売上高の大きさのみに惑わされず、トータルでの顧客貢献度を算出している点は注目すべきではないでしょうか。

 話は飛びますが、本著書には「交叉比率」が随所に出て来ます。著者の「交叉比率」は実務・実用的で、他の処(本やWEB)には出てこない、独特の使い方をします。是非、本著を機会に、皆様の頭に入れてください。例えば、本著の中にマーケティング理論の「PPM」が紹介されています。“理論は解るが実用的でない”と一般的に言われている理論です。著者は、「PPM」のマトリックスの横軸(シェア)×縦軸(実績と予測に基づく成長率)を「交叉比率」とし、それを商品別に算出し、円グラフ化し、商品ごとの「PPM」に於ける位置づけを、分かり易くしています。

 話は元に戻ります。「WINS-ABC管理」の「WINS管理」は、顧客を、W(「weighted」重点化顧客)、I(「incubated」育成顧客)、N(「new」新規顧客/埋蔵顧客)、S(「sleeping」休眠顧客)と定義付し、区分します。

 その上で、横軸に、「ABCWINS」を置き、縦軸に『「現状・課題」「管理項目」「営業方針」「対象顧客」』を置いたマトリックス表を作成し、“営業力”を“顧客”という経営資源の開拓・拡大に、如何に効率・効果的に使っていくかを分析し、各セルに戦略・戦術・戦技を記述する管理ツールに仕上げています。

 この管理ツールの“顧客”を“商品”に替え、商品戦略における“営業力”マネジメントに応用しています。

「AIDMA理論」の、こんな使い方があった

 AIDMA理論は皆様よくご存じですので、細かいスペルは省略します。A⇒Iを「引き合い率」、I⇒Dを「案件化率」、D⇒Mを「見積率」、M⇒Aを「成約率」、と商談ステップに応じた定義をし、それぞれの数値を出します。この数値から、営業マン別にそれぞれの比率が算出され、各営業マンの営業生産性指数が算出されると同時に、比率の良い営業マンの行動好事例が判り、営業設備の一つでもある好事例集が出来てきます。営業管理職は、1to1コミュニュケーションによる、温かい管理で、個人別に比率向上を育成するためのデータにすることができます。

 又、算出ルートを上記とは逆に、A⇒M⇒D⇒I⇒Aに上記比率をそのまま使い、計画予算達成のために必要な「必要(目標)引き合い件数」を出します。計画予算達成のための「必要受注(成約)件数〔予算売上高/1件当たりの平均成約高〕」が決まると、それに伴う「必要見積件数」「必要案件数」「必要(目標)引き合い件数」が必然的に出てきます。

 その結果、営業マンが予算達成のための「必要(目標)引き合い件数」を十分有しているか、あるいは不足しているかが明確に出ます。

 予算達成のためには、引き合い件数を増やすか、上記比率を上げるのか、営業マンは、データに基づく効率的な営業活動を行えるようになるのです。正に、管理会計化の効果と言えます。

 

■         「守破離」で自分の管理会計を創ろう(むすび)

 本著を読み、そのツールを直ちに自分のものとするのは、なかなか難しいと思いました。そこで、まずは模倣し、自分のものになったら、そこから始めて自分流のものを創り上げていく、いわゆる「守破離」で行くのが、一番の近道と思いました。

 

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/

http://sakai-gm.jp/index.html


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