下記の記事は日経グッディオンラインからの借用(コピー)です
最新の抗老化研究によって、健康寿命を延ばし、何歳になっても心身ともに元気で社会貢献し続ける「プロダクティブ・エイジング」の実現が可能になりつつある。そのカギを握る一つが、私たちが生きていくうえで欠かせない体内物質であるNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を増加させ、長寿遺伝子からつくられる酵素サーチュインを活性化させること。NADを高めて老化を遅らせるために、今すぐできることはあるのだろうか。前回に続き、哺乳類の老化・寿命のメカニズムの研究と抗老化方法の確立を目指す、ワシントン大学医学部発生生物学部門・医学部門の今井眞一郎教授に聞く。
法則1 「運動」で老化制御に欠かせないNADを増やす
老化を遅らせるために、40~50代の人が今すぐ始めたほうがいいことはありますか。
老化制御に欠かせないNADを増やすには、軽~中程度の有酸素運動、筋トレがよい。写真はイメージ=(C)Darya Petrenko-123RF
今井 すぐに始めてほしいことの一つが、運動です。運動が老化を遅らせることは、複数の研究で科学的にも証明されている間違いのない事実です。
アスリートのような非常に激しい運動をする必要はなく、ウォーキング、ジョギング、自転車こぎ、水泳などの軽~中程度の有酸素運動、筋トレが効果的です。
運動をすると筋肉中のNAMPT(ニコチンアミド・ホスホリボシルトランスフェラーゼ)の量が上昇して、エネルギーの産生とサーチュイン(老化や寿命をコントロールする酵素)の活性化に不可欠なNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の量が増えます。NAMPTというのは、体の中でNADを合成するために必要な酵素です。
運動が体にいいことは分かっていても、忙しくて続けられない人も多いのですが、継続の秘訣はありますか。
今井 私は週2回、スポーツジムへ行き、筋トレをするようにしています。日本の多くのビジネスパーソンがそうであるように、私もなかなか運動をする時間が取れないのですが、スケジュールの中にあらかじめジムへ行く時間を組み込むようにしています。普段からエレベーターやエスカレーターではなく階段を使うなど、日常生活の中で意識的に体を動かすことも大切です。
法則2 「朝食」をがっつり食べて生体リズムを整える
今井 そして、もう一つ、NADを増やすために重要なのが、生体リズムを整えることです。私たちの体の中のNADの量は、サーカディアンリズム(概日リズム)と呼ばれる生体リズムに従って増えたり減ったりしています。マウスは夜行性なので、NADの量が昼間の明るいときに減り、夜は多くなります。人間は逆で昼にNADの量が増え、夜には減るようになっています。
要するに、NADはエネルギーを生み出すうえで必須の物質なので、活動期に増えるようになっているのです。NADの値を昼間にしっかり高めてサーチュインを活性化させるためには、人間が本来持っている生体リズムを保ち、午前中にNADをしっかり増やすことが大切なのです。
そのために有効なのが、1日の始まりのエネルギー源となる朝食を最もカロリーの高い食事にすることです。実は、私もかつては、夜遅く帰ってデザートまでたっぷり食べ、その2時間後には寝るような生活をしていました。2014年に生体リズムに関する学会に呼ばれて講演したときに、栄養が生体リズムに与える影響についての最新の知見を聞き、家内と相談して、それまで夜に食べていたような食事を朝にとるようになりました。
次に紹介する写真が我が家の朝食の一例です。
朝に良質のタンパク質をしっかりとることが重要なので百数十グラムのステーキや大きな魚を食べ、ポリフェノールが豊富なカカオ90%のチョコレートなどのデザートも楽しみます。昼は普通に食べ、夜は軽くワイン1~2杯とチーズやハム、フルーツをとるくらいで、20時以降は何も食べないようにしています。
血糖値が下がるのには食後4時間くらいかかるので、ベッドに入るときには血糖値が下がっている状態にすることが大切です。また、ブルーライトは生体リズムを乱しますので、就寝前にスマートフォンなどデジタル機器を使わないようにしてください。
今井教授の朝食の一例。百数十グラムのステーキや大きな魚を食べ、朝に良質のタンパク質をしっかりとるようにしているという。黒っぽい長方形のものはチョコレート
法則3 長生きしたいなら少し「小太り」くらいがベター
アカゲザルやマウスの研究でカロリー制限が寿命を延ばすと報告されています。老化を遅らせるためには、カロリー制限も有効ですか。
今井 ヒトでのカロリー制限についての報告では、ある程度、老化を遅らせる効果があるということになっています。ただ、カロリー制限をしたマウスやサルをウイルスに感染させるとあっという間に死んでしまいます。体の代謝が良くなるのは間違いないのですが、病原体に対する抵抗性が相当落ちることには注意が必要です。
特に、ダイエット志向の強い日本の女性に知っておいていただきたいのは、BMIが20未満になるようなダイエットは危険だということです。BMI20未満の人は特に高齢になると肺炎や感染症、心臓病などでの死亡率が上がります。日本人を対象にした疫学調査(*1)では最も死亡率が低いBMIは女性が23.0~24.9、男性25.0~26.9で、ちょっと小太りの人のほうが長生きできる可能性が高いのです。
世界的に見てもBMIは女性で22~23程度、男性25~26くらいが最も死亡率が低くなります。BMIが30を超えるような太り過ぎはメタボリックシンドロームのリスクを上げるので良くありませんが、臨床医の間では、少し小太りの人のほうが手術後の合併症の発症リスクが低く、透析での予後が良好であるなど、ある程度脂肪があったほうがいいのはよく知られた事実です。
*1 J Epidemiol. 2011;21(6):417-30.
BMIと全死因の死亡リスク(ハザード比)の関係
死亡リスクは、BMIが23.0~24.9の場合を1とした値(J Epidemiol. 2011;21(6):417-30.)
さらに、私たちの研究で分かってきたのは、脂肪から分泌されNADの合成に欠かせないeNAMPT(細胞外に分泌されるNAMPT)という酵素が、脳の視床下部という老化のコントロールセンターの機能を支える重要な役割を果たしているということです。前回、NADが加齢に伴って減るという話をしましたが、同じようにeNAMPTも減少します。マウスでは血液中のeNAMPTが多いほど長生きできることが分かっており、知りたいかどうかは別にして、ヒトでも血液中のeNAMPT量を測れば、どの程度長生きできるか予測できる可能性があります。
老化を遅らせるためにはある程度は脂肪も必要で、脂肪から分泌されるeNAMPTの量をある程度維持できれば、長生きできる可能性も高いということでしょうか。
今井 そうです。遺伝子操作で脂肪からeNAMPTを分泌する量を高めたマウスの実験では、人間の70代くらいに相当する18カ月齢になっても身体活動量や睡眠の質、血糖値を下げるインスリンの分泌量、目の網膜の機能、学習・記憶能力が若いマウス並みに保たれ、健康寿命が延びることが分かっています。ただし、健康寿命は延びたのですが、最大寿命はeNAMPTを高めていないマウスと変わりませんでした。人間でもそうですが、マウスは高齢になると脂肪が失われやすくなります。そのことが、最大寿命が延びなかった原因ではないかと考えています。
私たちの研究室ではさらに、若いマウスの血液から取り出したeNAMPTを26 カ月齢の高齢マウスに3カ月間週1回注射する実験を行いました。すると、人間の90代に相当する29カ月齢になっても活発に動き回り、毛並みもつやつやした状態になり、最大寿命も延びました。人間では、若い人のeNAMPTを注射するというわけにはいきませんが、eNAMPTの量は脂肪量とある程度比例します。
太り過ぎはもちろんよくありませんが、脂肪の組織から老化・寿命のコントロールセンターである視床下部に非常に重要な酵素が送り込まれているわけですから、老化を遅らせるためには、ある程度、最適な量の脂肪を蓄えておくことが必要なのです。
運動をすることや脂肪を蓄えることはある程度実現できるとしても、朝食をメインディッシュに変え、夕食を少しにして20時以降は何も食べないようにするのは、残業が多い日本のビジネスパーソンには難しいように思います。
今井 市民公開講座などで朝食を最もカロリーの高い食事にし、20時以降は食べないという話をすると、よく「日本では無理ですよ」と言われます。日本人が、それほど太らなくても糖尿病などの老化関連疾患になりやすいのは、残業が多くて夜たくさん食べて朝食を抜くような生活をしている人が多いからなのかもしれません。前日からある程度準備をする必要はありますが、これまで夕食に食べていたようなものを朝食に回すようにしてみる価値はあります。私自身、もう6年間そういう生活を続けていますが、体調もいいですし、夜は熟睡できます。
ドイツと中国には、「朝食は皇帝のように、昼食は王様のように、夕食は物乞いのように食べろ」という意味のことわざがあるそうです。私が最先端の科学の成果を実践しようとした末にたどり着きつつあるのは、先人の知恵に学べ、ということです。
結局は、日の出と共に起きて体を動かして働き、夕食を軽めに食べて日が暮れると共に寝る、太陽の周期と共に動く生活が生体リズムを整え、老化を遅らせる方向にも働くわけです。皆さんもぜひ、3つの法則を実践して老化を遅らせ、死ぬ直前まで自分の人生をフルに楽しみつつ社会貢献もするプロダクティブ・エイジングを実現していただきたいと思います。
今井眞一郎(いまい しんいちろう)さん
ワシントン大学医学部発生生物学部門・医学部門教授/神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センター・老化機構研究部特任部長
下記の記事は文春オンラインからの借用(コピー)です。
これまで20万人超の患者を診てきた牧田善二医師は、「人間ドック等で行われる血清クレアチニン検査では腎臓が悪化していく過程を捉えられず、結果、いきなり『人工透析です』と言われる人が続出している」と警鐘を鳴らす。特に高血圧、高血糖、高コレステロールの人はリスクが高いため、尿アルブミン検査を受けるべきというのだが──。
※本稿は、牧田善二『医者が教える最強の解毒術』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
「あるとき突然、透析」の恐怖
55歳の女性Aさんは、自宅近くの不動産会社で平日の9時から15時まで働いています。結婚前、建築関係の企業に勤めていたときに宅建の資格を取得しており、時短勤務とはいえ、Aさんは会社にとって貴重な戦力として活躍しています。
子育てが一段落したこともあり、休日には夫婦揃(そろ)って旅行をしたり、仕事が終わってからの時間は映画を観たりと、充実した生活を送っていました。「いました」と過去形にしたのは、Aさんにとって予想外のことが起きたからです。
Aさんは、40歳を過ぎてから血糖値の高さを指摘されていたものの、かかりつけの病院で糖尿病の治療を受けていたことから安心していました。しかも最近は、ヘモグロビンA1cの値が大幅な改善傾向にあって喜んでいたのです。
ところが、ある日いきなり主治医から「透析専門の病院を紹介しますから、これからはそちらに通ってください」と言われてしまいました。
医者もわかっていない「腎臓病の進行プロセス」
「透析? 私が? なんで?」
「ヘモグロビンA1cだって良くなっていたじゃないの!」
人工透析は、5時間ほどかかる治療を週に3回も受けなくてはなりません。とても旅行どころではないし、勤めも続けることはできないでしょう。また、55歳の女性が人工透析に入ると、余命は15年も短くなってしまいます(透析学会、2004年データより)。
「私の人生これから!」と思っていたAさんは、大変なショックを受けました。しかし、取り乱すAさんに、主治医は血液検査の「血清クレアチニン」という項目の数値を示して、「こうなると、もうどうしようもないのです……」と、淡々と説明するだけでした。
実際の医療現場でも、Aさんのようなケースはよくあります。患者さんはちゃんと糖尿病の治療を受けていて、なにも問題はないと思っている。ところが、腎臓がいつの間にかひどいことになっていて、いきなり医師から「人工透析が必要だ」と告げられるのです。
このような悲劇が繰り返されるのにはもっともな理由があって、Aさんの主治医が指標にしていた「血清クレアチニン値」では、慢性腎臓病を早期に発見することはできないのです。
「インスリンすら解毒できない体」の恐ろしさ
Aさんは、人工透析が必要なほど腎臓の状態が悪化していたにもかかわらず、ヘモグロビンA1c値は改善に向かっていました。いったいぜんたい、どうして、そんなことが起きたのでしょうか。
実は、皮肉なことに糖尿病の合併症の腎症がかなり進行すると、血糖値のコントロールが良くなるのです。なぜなら、腎機能の悪化で「インスリン」すら体外に排出できなくなってしまうからです。
私たちがなにか食べると血糖値が上がります。すると、上がった血糖値を下げるためにインスリンというホルモンが膵臓(すいぞう)から分泌され、血糖値の上がり方をほどほどに抑えてくれます。そして、数分間働いたインスリンは、腎臓で解毒されて尿へと排出されます。
このときに、糖尿病の患者さんはインスリンの効きが悪く、血糖値がかなり上がってしまいます。そのため、Aさんは注射でインスリンを補充していました。
インスリン注射をしても、なかなか血糖値コントロールは難しく、かつてはAさんのヘモグロビンA1c値も高く推移していました。
ところが、腎臓が悪くなったことで、本来なら数分後には消えてなくなるはずのインスリンが排出されず、いつまでも血液中に残ります。そして、血糖値を下げる働きをずっと続け、結果的にヘモグロビンA1c値が下がるのです。
腎臓が悪くなって透析が避けられなくなると、血糖コントロールがかえって良くなるなんて皮肉な話です。実際に、インスリン投与を止めることができる人も少なくありません。
しかしながら、こうしたケースでは、いくら血糖値が下がってもまったく喜ぶことはできません。その人の腎臓は、もはやあらゆる毒性物質を排出することができなくなっているわけですから。
「生活の質」はだだ下がり…
人工透析とは、機能が低下した腎臓に代わって解毒を行う治療です。そのため、一度、透析に入ったらやめることはできません。
透析の患者さんは「身体障害者1級」という最も重度の障害者と認定され、医療費はすべて国か健康保険組合が負担します。
透析は前述の通り、1回の治療に約5時間かかり、週3回ほど行います。以前はもう少し短く、4時間程度で終えることもありましたが、透析時間はできるだけ長く取ったほうが患者さんの体にとっていいことがわかってきました。
本当は、5時間よりももっと時間をかけたほうが望ましいのですが、それではまさに一日仕事で、患者さんはほかになにもできなくなってしまいます。せいぜい5時間が限度なのでしょう。
それでも、患者さんのQOL(生活の質)は大きく落ちてしまいます。また、透析を始めると血管が傷み、動脈硬化が著しく進みます。そのため、心不全、心筋梗塞や脳卒中といった血管系の病気が高頻度で起こります。加えて、透析の患者さんではがんの発症率も高くなることがわかっています。
実際に、透析に入った患者さんの5年生存率は60%。4割の患者さんは5年以内に亡くなります。だからこそ、透析に入らないで済む段階での治療が望まれるのです。
血清クレアチニン検査の大問題
ところが、腎臓の状態を判断するのに多くの医師が用いている「血清クレアチニン」の検査は、はっきりいって“役立たず”です。異常値が出たときには、たいてい手遅れだからです。
血清クレアチニン値は、腎機能を知る指標として、一般的な健康診断でも測定されます。おそらく、あなたの手元にある人間ドックや健康診断の検査結果表にも、その値が載っているはずです。そして、基準値内に収まっていることでしょう。
しかし、たとえ血清クレアチニン値が「正常」であっても、実際の腎機能はとうてい正常とはいえないケースが多々あります。
そもそも、慢性腎臓病は急性のものではなく「徐々に」進行しています。「だったら、主治医が途中段階で適切な治療を施していれば、そもそも透析になどならないではないか」と、Aさんでなくとも思いますよね。ところが、血清クレアチニン値を追っていても「徐々に」はキャッチできません。ここが問題なのです。
にもかかわらず、いまだに「血清クレアチニン値に少し異常が出始めたということは、腎機能も少し落ちているのだろう」などと呑気に構えている医師も多いのです。
本当はもっと早い段階で、血清クレアチニン値に異常が出て、透析が必要になる2年前までに正しい検査でキャッチして、「このままでは透析になる危険があるから、治せる病院を紹介します」と言えば患者さんは助かるのに、とても残念です。
患者を治すことができない医師たち
いずれ透析になるであろう患者さんを前に、医師がギリギリまで告げずにいるのには理由があります。自分では治せないからです。そして、今は医学が進んで、実際にはかなり腎臓病が悪化しても治せるようになったということを、あなたを担当するかもしれない医師の多くが知らないのです。
早くから患者さんに伝えれば、「なんとかしてください」と頼まれてしまいます。でも、治す方法を知らないからそれはできない。患者さんの願いに応えられないというのは、医師としてとても辛いのです。
白状しましょう。かつての私自身がそうでした。
本当に重要なのは「尿アルブミン検査」
私がまだ、母校の北海道大学付属病院で働いていた30年以上前のことです。北大病院には北海道各地から治療の難しい患者さんが集まってきていて、糖尿病の場合も同様でした。
当時の私は、合併症の腎症の怖さはわかっていたものの、血清クレアチニン値にばかり気を取られていました。そして、患者さんの血清クレアチニン値に異常が出ると、尊敬する腎臓病専門医に紹介状を書いていました。
すると、あるとき、その先生からこう言われたのです。
「牧田君は、患者さんの血清クレアチニン値に異常が出たら、『腎臓が少し悪くなり始めたくらい』と思って僕に紹介状を書いているでしょう。ほかの糖尿病専門医もみんなそうですけど、それは大きな間違いです。血清クレアチニン値に異常が出たらもう手遅れで、腎不全を起こしていて数年で透析に入るしかないんです。そうではなく、もっと早く紹介してくれれば治せるんです。尿アルブミンの検査をして、数値が300を超えたらすぐに紹介してください」
このとき私は、はじめて尿アルブミン値を把握することの重要性を知りました。
血圧の薬で腎臓病が良くなる?
そして、それ以来、この尿アルブミン検査で異常値が出たときの治療法を懸命に探しました。
すると、2007年に、テルミサルタンという血圧の薬を使うと軽症の腎臓病は治るということがわかりました。しかも、この研究では、血圧が正常で腎臓の悪い患者さんにも投与されて効果が認められました。
すなわち、テルミサルタンは血圧を下げるだけでなく、血圧に無関係に腎臓を良くする素晴らしい効果があることがわかったのです(Diabetes Care 2007;30:1577-1578)。
さらに、2012年頃からアメリカやヨーロッパで、スピロノラクトンという薬を上手に使うとかなり重症の腎臓病も治るという、今までの常識を根底から覆すような研究発表がなされました。それまで、この薬はカリウムという成分が体内で増える副作用があり、腎臓が悪い人には使わないようにといわれていたのです。
最初は私も半信半疑で、恐る恐る使ってみました。すると驚くことに、かなり悪化していた患者さんの腎臓が劇的に良くなりました。本来、尿アルブミン値は30を超えたら治療が必要なところ、なんと、2000を超えて人工透析が避けられなかったはずの患者さんの数値がほぼ正常にまで改善したのです。
こうした知見を私に与えてくれた先輩や世界中の研究者、そして一緒に闘ってくれている患者さんたちのおかげで、今の私は、「もう透析しかありません」とさじを投げられた人たちを救うことができるようになりました。
行きつけのクリニックで簡単にできる検査
私が「自分の患者さんを透析にだけはさせない」というモットーを貫き通すことができるようになったのも、こうした医学の進歩があってのことです。
だからこそ私は、今も血清クレアチニン値で判断している医療現場や、それによって慢性腎臓病を悪化させている患者さんたちに対し、「一人でも多くの人を透析から救えるように本当のことを知ってください」と呼びかけずにはいられないのです。
とくに高血圧、糖尿病、コレステロール高値などで通院中の方は、慢性腎臓病になりやすいので、いますぐにでも「尿アルブミン」検査を行ってください。
行きつけのクリニックでいいので、「尿アルブミン検査を受けたい」と相談してください。尿を採って検査機関に回すだけですから、この検査は本来どんなクリニックでも可能です。
ただ、この検査のことをよく知らない医師が多く、依頼してもやってくれないことがあるかもしれません。そのときはクリニックを変えてでも検査を受けてください。自分の体を守るには、みずから動くことがとても重要です。
この検査は保険がきき、3割負担の方なら、検査費用だけなら300円程度で可能です。
尿アルブミン検査の結果と、血清クレアチニン検査から求める「eGFR」という指標の2つがあれば、あなたは一生涯人工透析にならないための治療を早めに、かつ、適切なやり方で行うことができます。
拙著『医者が教える最強の解毒術』でさらに詳しく説明していますので、こちらもご参照いただき、ご自身の体を守る行動を起こしていただきたいと切に願っています。
牧田 善二(まきた・ぜんじ)
AGE牧田クリニック院長
1979年、北海道大学医学部卒業。地域医療に従事した後、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、「The New England Journal of Medicine」「Science」「THE LANCET」等のトップジャーナルにAGEに関する論文を筆頭著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授を歴任。 2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業。
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10月26日に眞子さまと小室圭さんが入籍し、同日に記者会見が行われると宮内庁から正式に発表された。皇族が結婚されるにあたって催される一連の儀式は行わず、“正式婚約なし”の結婚は戦後初という、超異例の運びとなった。
一般の結納にあたる『納采の儀』などの結婚関連の儀式は、秋篠宮家の私的行事のため、当主である秋篠宮さまが行うか否かの判断を下されるもの。しかし、両陛下に挨拶をする『朝見の儀』や皇室の先祖がまつられている宮中三殿を拝礼する儀式すらも行われないのはなぜなのか。
宮内庁OBで皇室ジャーナリストの山下晋司さんは、これら2つの儀式を行わない理由を次のように推測する。
眞子さまはNYで就職先を確保
「今回の皇籍離脱の要因は結婚ですから『賢所皇霊殿神殿に謁するの儀』や『朝見の儀』を行うと“皇室は眞子内親王殿下の結婚を認めた”という誤解を国民に与える可能性はあるでしょう。
ただ、この2つの儀式は結婚以外で皇籍を離脱される際にも行われるものですから、『納采の儀』が行われないので、これらも行えないというものではありません」
『賢所皇霊殿神殿に謁するの儀』と『朝見の儀』を行うことを最終的に決断されるのは天皇陛下。
さらに、儀式を行うとなれば宮内庁が主導することになり「天皇陛下と宮内庁が眞子さまと小室さんの結婚を容認した」と受け止められかねないということだ。
上皇ご夫妻とは、どういった形でのご挨拶になるのか。
「皇族であろうが、一般国民の小室眞子であろうが、上皇・上皇后両陛下の孫であることに変わりはありませんので、ご結婚にあたり、ご挨拶はされるだろうと思います。
ただ、公式行事ではなく、私的なことですから、発表されない可能性はあります。10月20日は上皇后陛下のお誕生日ですから、この日に新型コロナウイルス感染症の対策を十分に行ったうえで、祝賀も含めてお住まいの仙洞仮御所に行かれる可能性もあります」(山下さん)
上皇ご夫妻を自身が勤務する博物館で案内される眞子さま('17年12月)
婚姻届の提出と前後して、会見やご挨拶などをすべてこなした後、おふたりはNYで新婚生活を送られる見通し。
「気になるのは渡米後の小室さんとのNY生活ですが、すでに眞子さまは、現地での就職先を確保されていると聞いています」(宮内庁関係者)
小室さんは、NY州・マンハッタンの超一等地にオフィスを構え、約350人もの弁護士を抱える『ローウェンスタイン・サンドラー』という法律事務所に勤務中。現在は法務助手として、最先端テクノロジー会社を担当している。
一方の眞子さまも、小室さんとともにNYで共働きを計画しているというのだ。
「就職先として有力なのは、小室さんの勤務先にも近い『A』という有名博物館です。1800年代に設立された『A』は、恐竜の骨格や動物のはく製、5千種類以上の鉱物など、自然科学や博物学に関する多数の標本や資料を所蔵しており、勤務するスタッフは1000人以上。
1日かけてもすべての展示物を鑑賞することはできないほど大規模で、あらゆる種類の動物を自然の生息環境とともに展示していることが特長です。
なんでも、眞子さまは数年前にお忍びで『A』を視察されています。おそらく、このときからすでに小室さんとのNY生活を想定されていたのでしょう」(秋篠宮家関係者)
入籍後に会見を開く理由
物価の高いマンハッタンで暮らすため、学芸員の資格をお持ちである眞子さまも現地でお勤めになり、家計を支える必要があるのだろう。
これらが眞子さまと小室さんの結婚、そして新婚生活までの全容なのだが、ここに至るまでの道のりはまさに“いばらの道”だった。それは『複雑性PTSD』の診断を受けるほど壮絶なものだったに違いない。
事情を知る宮内庁関係者のひとりは「ご両親の希望に応えようと必死に努力されていた」と明かす。
「世間では“秋篠宮ご夫妻のご意見や国民の声を聞かずに結婚を強行した”といった風潮ですが、それは違います。むしろ、30年間皇族でいらした眞子さまは、国民からどう見られているのかをずっと意識されてきた方。
精神的に追い込まれる中でも、殿下が求められたことに対しても、必死に応えようとされてきたのです。
以前、殿下が会見で“(金銭問題について)きちんと説明すること”を要望されました。これに対して今年4月に小室さんがトラブルの経緯について28ページにわたる詳細な文書を作成したのは、眞子さまのご意向が強かったからだといいます」
この関係者が続ける。
「昨年のお誕生日会見でも殿下は“結婚する段階になったら今までの経緯も含めてきちんと話すことが大事”だと述べられています。
今回開かれる会見は入籍後であり、強制ではありません。ましてや会見など行わず、そのまま渡米するほうがご本人たちの負担は少ない。それにもかかわらず、小室さんをわざわざ帰国させてまで会見を開くのは、お父さまのご意向に沿われるためです。
加えて、多くの国民から祝福されることを望まれる殿下のため、眞子さまは一時金の辞退と、すべての関連行事を行わないという選択をされたのではないのでしょうか。
小室さんとの結婚を殿下に懇願されていた裏には、そういった努力が隠れていたのだと思います」
《結婚は、私たちにとって自分たちの心を大切に守りながら生きていくために必要な選択です》
昨秋に公表されたお気持ちのまま、眞子さまは結婚の日を迎えられる──。
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寝つきの悪さは、どうすれば改善できるのか。早稲田大学先進理工学研究科の柴田重信教授は「睡眠の悩みは食事で改善できる場合がある。たとえば朝食でタンパク質をたっぷり摂れば、夜間のメラトニンの分泌量が増加して睡眠が改善することが知られている」という――。
※本稿は、柴田重信『食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門 体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病』(ブルーバックス)の一部を再編集したものです。
いくつかのアミノ酸に睡眠改善作用が知られている
最近、食品や食品成分で、体内時計に作用する可能性があるものが、報告されつつあります。
ただ、機能性表示食品の分類では、体内時計の変調を改善する作用を表示することは認められていません。一方、睡眠に対する表示は認められていて、機能性表示では睡眠改善効果となっています。もちろん、体内時計は入眠や起床など睡眠行動を強く支配しているので、食べたものが体内時計に作用し、結果的に睡眠の改善が期待できることもあるでしょう。
実際いくつかのアミノ酸に、睡眠や体内時計に対する作用が知られています。そのなかで、ここではグリシン、トリプトファン、L-セリン、γガンマ-アミノ酪酸(GABA)、テアニン、オルニチン、ヒスチジンなどのアミノ酸について、またそれ以外の食品成分や化合物、生薬についても解説していきます。
マウスの実験においては、いろいろな食品や食品成分あるいは漢方薬などが、時計遺伝子発現に影響を及ぼすことが報告されています。一方で、ヒトを対象とした研究においては、体内時計に影響を与えると明確にわかっている食品類はまだ少ないのですが、わかってきているものもあり、少し紹介したいと思います。図表1に、以下の食品成分の働きをまとめています。
出所=『食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門 体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病』
シジミは睡眠の改善につながるかも
アミノ酸をいくつか紹介していきますが、まずはシジミに豊富に含まれているオルニチンです。シジミから成分を濃縮したものや、合成などで作られたものが市販されています。一般的には疲労回復や二日酔い、あるいは睡眠に良いといわれています。
我々は、オルニチンをマウスに投与することで、血中GLP-1(食事を摂って血糖値が上がると、小腸にあるL細胞から分泌され、膵臓のインスリン分泌を促進する働きのあるホルモン)の上昇とインスリン濃度の上昇が見られ、それが肝臓の時計遺伝子、Per2の位相シフトを引き起こすことを報告しました。さらに我々は、マウスの細胞の研究から、このように時計遺伝子に作用する可能性を見出していたので、ヒトでの研究も行いました。
中高年の健常者にお願いし、1週間にわたって毎日、試験食品のオルニチン400mgを就寝前に飲んでもらいました。比較のために影響の出ない対照食を飲んでもらう対照群と共に、夕方から23時近くまで、薄暗い中で唾液を採取し、メラトニンの量を調べました。このメラトニンの分泌リズムを調べる方法は視交叉上核の体内時計を間接的に観察できる方法として広く用いられているものです。
今回のオルニチンの実験はクロスオーバー試験(すべての被験者が両方の条件下で実施する試験)といい、最初の1週間に対照食を摂った人は次の1週間はオルニチンを、最初の1週間にオルニチンを摂った人は次の1週間は対照食を摂取するというやり方で行いました。その結果、各週でオルニチンを摂取したグループはもう一方のグループと比較して、眠りを誘うホルモンとして知られているメラトニンの分泌リズムが有意に1時間程度遅れることがわかりました。
このことから、オルニチンを摂取すると体内時計が夜型化する可能性が考えられ、特に極端な朝型の人にとってはメリットがあるかもしれません。極端な朝型になりがちな高齢者にとって睡眠の改善につながる可能性があります。
豆類や大豆加工食品で早寝早起き体質になれる可能性
アミノ酸であるL-セリンは、神経伝達物質であるGABAの作用を増強し、鎮静効果があると考えられます。GABAは視交叉上核に豊富に含まれていることから、L-セリンの体内時計に対する作用が調べられました。
明暗周期を前進させて新しい明暗環境に順応するまでの期間を測る実験では、L-セリンを投与したマウスではその時間が短縮し、順応しやすかったという結果が出ました。
また、GABA受容体の働きを阻害するとL-セリンの作用も阻害されたという実験があり、睡眠をもたらすことで知られるGABAはL-セリンの作用機序に関与している可能性が考えられます。
ヒトでは、入眠前にL-セリンを摂取すると、夜間のメラトニン分泌リズムの位相が前進しました。したがって、L-セリンは、若者に多い夜型の人が入眠薬として服用することで、体内時計を朝型に持っていけるかもしれません。L-セリンは大豆などの豆類や大豆加工食品などに含まれています。
豚肉、ホタテ、イカは目覚めを良くするかも
味の素が販売している、これもアミノ酸であるグリシンのサプリメントは、睡眠作用を有する機能性表示食品として市販されています。その入眠に導くメカニズムとして、視交叉上核に対する作用や体温低下などがあげられています。ただ、体内時計に対する作用に関しては、十分に解明されているとはいえません。
目から視交叉上核へ光の情報を伝える際には、グルタミン酸を神経伝達物質として使用しますが、グリシンはその受容体を活性化させる作用があるので、光に対する反応を促進させる可能性があります。すなわち、寝る直前に摂取したグリシンが明け方に効き、朝の光による体内時計の位相が前進し、メラトニン分泌の抑制をもたらす可能性があります。そのため朝の目覚め感を良くするのではないかと考えられています。グリシンは豚肉や魚介類(ホタテ、イカ)に多く含まれています。
タンパク質豊富な朝食を摂っておくと夜の睡眠に効果的
必須アミノ酸(体内で十分に合成されないため、食品で摂る必要のあるアミノ酸)であるトリプトファンは、脳内の脳幹にある縫線核という部位で、神経伝達物質として重要なセロトニンへと合成されます。
柴田重信『食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門 体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病』(ブルーバックス)
セロトニン受容体は主時計の視交叉上核にも発現していますが、その一つに刺激薬を作用させると、体内時計の位相を変えることが認められています。したがって、トリプトファンがセロトニンとして作用する可能性があります。
またセロトニンは、脳の松果体というところでメラトニンへと合成されます。メラトニンは視交叉上核からの情報を直接受け取り、夜に増加し睡眠を引き起こします。また、トリプトファンを多く含む朝食を摂取し、明るい光を浴びて日中を過ごすことにより、夜間のメラトニンの分泌量が増加したとの報告があります。トリプトファンを多く含む食品には豆腐や納豆などの大豆製品や牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、バナナや卵などがあり、朝食にタンパク質が豊富な食事を心がけると夜の睡眠に効果的です。
また、サプリメントとしてのトリプトファンの摂取によって睡眠が改善したとの報告があり、アメリカ合衆国ではよく使用されています。
柴田 重信(しばた・しげのぶ)
早稲田大学先進理工学研究科教授
1953年生まれ。1976年九州大学薬学部薬学科卒業。1981年同大大学院薬学研究科博士課程修了。薬学博士。早稲田大学人間科学部教授などを経て、2003年より現職。日本時間栄養学会会長などを務める。