世界における水分の絶対量は
一定しているので、だれかが
涙を流すと、そのぶんだけ、
海の水が少なくなるのである。
海水と涙の成分は、ともに
塩素とナトリウムとH2Oを
ふくむ。
なめると「しおからい」のは、
そのためである。
ということは、涙で魚を飼う
こともできるという証拠であ
る。
だが、涙で一尾のカレイを飼
うためには、どれくらい泣かな
ければならないか、というこ
とは、まだ学問的に立証されて
いない。
満潮は、ひとがだれも涙をなが
さぬひととき
―― 世界に海水があふれ、
干潮は、ひとがみな涙をながす
ひととき
――世界に海水が涸(か)
れはじめる。