詩人
2020-08-25 | 版画
生まれたばかりの、まっしろな本。
その紙が、とても白くて
自分の指の皮脂で汚してしまいそうで
ページをめくるのがためらわれた。
異国の路地の飲食店、
金属の串がたくさん刺された1個のレモン。
そのレモンのイメージがあまりに美しく、強く
カメラ越しの映像だという文字が
頭の中からすっかり消し去られていた。
詩人は周りの世界から繊細にイメージを深く広げて
文字を紡ぐ。
わたしは詩の形式も疎くて
たまたま好きな作家が数人だけ、
ペン画で描いてきた中原中也と
ポオにブレイク。
中也は自分の環境を透明な眼でイメージを広げながら語り
ポオは空想の世界をリアルに表現し。
先のレモンの詩が
カメラ越しの映像だということに
軽い衝撃を受けた。
現代詩がどんなものなのかわからないけれど
これは現代詩だ、と
なぜだか強く思えて。
詩人はカメラ越しの世界も
こんなに印象を深く感じ、文字に綴る。
コロナ下ではありますが
ある人はどこまでも世界を広げられるのですね。
詩集を送ってくださった詩人の方の
その誠実な人となりが詩から染み入るように感じられてきて。
ご受賞、おめでとうございます。
次作品、とても楽しみにしています。
※ 「休息」 メゾチント
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