Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

【パフューム-ある人殺しの物語-】 悪意なき純粋・・・

現在、全国上映されている映画【パフューム】を鑑賞した。

この映画の原作は、ドイツで大ヒットした小説。1738年のパリが舞台だ。この物語の主人公は、パリのドヤ街(闇市みたいなところ)でと或る魚売りの女性から産まれたジャン=バティスト・グルヌイユ。彼は、幸か不幸か、犬死することなく生き延びた。彼は、生まれながらに野生の動物なみの臭覚をもっていた。「臭い」に天才的天性を得たグルヌイユは、母親に捨てられ、人身売買の対象となっていく。皮なめし職人グリマルに売り飛ばされたグルヌイユは、孤独に黙々と働き続ける。そして、青年になり、自分の才能を開花させていく。だが、天才と狂気は紙一重とあって、彼は、とある女性の匂いに惹かれ、その女性の匂いに陶酔してしまう。

しかし、その陶酔がゆえに、その女性を誤って殺してしまう。悪意はない。彼は、自分が犯した罪以上に、彼女の匂いが忘れられない。彼女の匂い、その匂いが彼をどんどん支配していく。彼は、その匂いを再現し、その匂いを永遠に保存しようと考える。「匂いの保存」はこの映画の重要な単語だ。彼は、その後、調香師のバルディーニ(ダスティン・ホフマン)に才能が認められ、引き取られることになる。そこで彼は、調香師として大活躍していく。だが、「匂いの保存」を求めるグルヌイユは、彼に迫る。「匂いの保存の仕方を教えてくれ!」、と。そこで、バルディーニは、匂いの都、グラースのことを彼に伝える。彼は、グラースへと旅立つ。その途中で、自分に自分の匂いがないということに気付き、深く傷つく。透明な存在・・・

グラースは城壁で囲まれた町。城内は人でにぎわっている。そこで、彼は、かつて匂いに魅せられた女性とそっくりの女性、ローラの存在を知る。彼は、自ら取得した方法、「脂に香りを移す冷浸法」を使うために、グラースの女性を次々に殺害し、その女性の死体からパフュームをつくり出していく。女性の謎の死が徐々に明らかにされるにつれて、町はどんどん混乱していく。当のグルヌイユは、罪の意識を抱くことなく、虎視眈々と次々に女性たちを殺していく。彼には全くの迷いも憐れみもない。そもそも、そういう人間の常識的世界を生きていないのだ。そして、最後にとうとうローラをも殺害してしまう。そして、最高のパフューム、媚薬をつくり出すことに成功する。

だが、ほどなくして、彼はグラースの市民によって捕獲される。処刑されることが決まり、公開処刑の罰に課せられる。だが、史上最高のパフュームを完成させた彼は、その香りを、処刑の番人たちに嗅がせる。世界最高の香りを嗅いだ番人たちは、その香りに陶酔し・・・ 

この作品最後の結末は圧倒であった。ちょっと無理のある部分もあるが、最後まで緊張感をとぎれさせないパワーと構成力があった。映画の監督は、「ラン・ローラ・ラン」のトム・ティクヴァ氏。実はこの原作、スピルバーグ他、世界を誇る有名映画監督たちがこぞって、映画化しようと試みた。が、原作者のジュースキント氏はそれを認めなかった。トム・ディクヴァ氏だけが、原作の映画化を許されたのだった(おそらく、ハリウッド系の作品にされることを懸念したのだと思う)。

最近、ドイツの映画がとても活気付いている。この作品も、英語での上映だったが、スタッフ、企画などはすべてドイツ語だったようだ。「ベルリン映画現象」とも言うらしい。ドイツにこだわる僕としてはとても嬉しい傾向だ。ドイツ映画には、是非頑張っていただきたいと思う!
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