当たり前の話ではあるが、少子化が止まらない。
僕ら団塊Jr.世代の人は各年齢、200万人くらいいる。今の35歳~40歳の人は今の若者たちの倍近くいるってことになる。
だから、例えばCDなんかは、「売れなくなってる=音楽離れが起こっている」じゃなくて、「買う人=若者が減ってる」、ってことなんだ。当たり前だけど、ちょっとびっくりした。
僕ら世代が若い頃は、CD100万枚以上売り上げたアーチストがたくさんいた。でも、人口からすれば、今は半分の50万枚で同じだけの人気だと言えるのだ。ボウイとか尾崎とかブルーハーツとかプリプリとかXJAPANとかが売れたのは、僕ら世代がたくさんいたからだ。
世の中に若者がたくさんいたから、お金が動いたし、若者を中心に経済が動いていた。若者の欲求を充たすことができれば、金儲けすることができた。
けど、今の若者は相対的に少ないから、経済的にあまりターゲットにならない。テレビの内容を見ても、若者っていうよりも、僕ら世代を意識した番組がますます増えているように思える。若い大人が喜びそうな軽いニュース番組や、分かりやすく時事問題を解説する番組など。今の若者たちは、「消費者」としてあまり期待されていないように思うのは僕だけだろうか。
で、企業は、うちら世代の消費を期待する。なぜなら、売り上げに貢献するのは僕ら世代だからだ。近年のバンド復活ブームって、そういう背景がある気がする。だって、みんなCDは買うし、コンサートにもいくもん。ガゼットのファンは若者中心だけど、ルナシーファンは若者の倍いる団塊Jr.世代だもん。そりゃ、お金が動きます。
しかも、僕ら世代のHERO(LUNA SEAにせよ、X JAPANにせよ…)なら、宣伝費がいらない。ネットで妖しげに告知するだけで、ネット上を通じて、勝手に広まっていく。莫大な宣伝費をかけて、TV局やラジオ局や雑誌社に売り込む必要もない。根本的に低コストなのだ。かつては、どかーんと宣伝して、どかーんと儲けるシステムが成り立っていた。が、今は、低リスク、低リターン。往年のバンドなら、宣伝費をかけなくても、確実にそこそこ売れる。で、でっかい儲けはないけど、赤字にはならない。赤字を防ぐことはできる。だから、逆に若いバンドが認知されない。若いバンドに対して莫大な宣伝費をかけても、肝心のリスナー層(若者の数)が減っているので、大きな利益が期待できない。
音楽だけに限らず、あらゆる分野で、こうしたことが起こっているのではないだろうか。かつての若者たち(現在の団塊Jrたち)は、「優秀な消費者」として煽るだけ煽られて、ファナティックになっていった。社会もその若者のパワーを容認した。なぜなら「優秀なお客様」だからだ。でも、今の若者たちは、もはや「優秀な消費者」ではない。数も少ないし、変に社会に煽られていないせいか、消費欲もわれわれほどではない。物欲のみならず、異性に対する欲求もどうやら弱いらしい。がっつり系じゃなくて、草食系っていわれるほどだ。
…うちら世代は、そのことを自覚してるのだろうか。 うちら世代はこのことをうまく利用しようと考えているだろうか。(ここからが重要!)
単純に考えれば、うちら世代の消費傾向をつかめば、お金が集まるってことだ。うちら世代がうちら世代の欲望や願望を把握すれば、何かでっかいことができるのではないか。これだけ経済が低迷して、これだけ先行きが見えなくなって、売るものもなくなって、お金がまわらなくなって、負の連鎖が止まらない中で、何かできるとすれば、僕ら以上の団塊Jr世代の消費を促すことなんじゃないかな?!と思う。
逆に、今年の新成人は120万とかって言われている。僕らはその倍いる。そうなると、企業も社会も今の若者に期待しなくなるのは当然といえば当然。
昨今のラーメンブームやB級グルメブームも、うちら世代が実はターゲットだったのかもしれない… 若者はやっぱそんなに外食しないから(ファミレス・ファストフードは除く)。つまり、「ブーム」という現象それ自体が、巨大なマス(大衆)に支えられているということだ。今の若者は、もはやマスではない。だから、若者からブームが生まれないし、ブームそのものが見えにくくなった。ガングロとかヤマンバやチーマーという言葉が懐かしい。
実は、今の日本の背景には、うちら世代を飲み込もうとする見えない力が働いているのかもしれない。その力に踊らされるか、それとも、それを逆手にとってうまく利用するか。1000万人はいるとされる今の35歳から40歳の人たちのニーズを把握すれば、たしかに時代の寵児になれるのかもしれない。それは、今の若者たちのビジネスチャンスにもなるかもしれない。
けれど、一番チャンスがあるのはうちら世代の人間だ。 僕らが僕らのことを一番よく分かっているはずだから(必ずしもそうはいえない部分はあるけど…)。僕らが欲しいと思うものを売る、そうすれば、もともとの母数が巨大だから、いろいろと売れるはず。多利多売が可能なのだ。
逆に、今の若者をターゲットにしようと思うと、どうしても、小さく作って小さく売ることしかできない。薄利薄売でいくしかない。今の音楽業界を見ていると、それがすごくよく分かる。インターネットによる価値の相対化、人口の減少によるマスの消滅、ポストモダンの思想的影響などが重なって、大きなビジネスモデルが描けなくなった。それが日本の今の現実なのかもしれない。
ただ、いずれにしても、僕ら世代の消費欲を刺激すること、僕ら世代を利用することが、経済を刺激するための大切な方策だと思うし、今の実際の社会はそういう方向で進んでいるように思う。
…が、その団塊Jrに元気がない。
さて、どうしたものか。