女パチプロ・演歌のすみれ(TBSドラマ)
→後にVHSも販売(上の画像はビデオのパッケージ)。
放映日…1996年(平成8年)4月8日
制作:TBS
脚本:高木凜
演出:生野慈明
出演:浅野ゆう子、松岡昌宏(TOKIO)、国生さゆり、横山めぐみ、渡部篤郎、他
今では一寸考えられないが、この当時はパチンコをテーマにしたドラマや特番が頻繁に作られていた。1000万人とも言われた当時のパチンコファンは、TV視聴者としても大きなターゲットであり、時のパチンコブームにあやかって視聴率を稼ごうという制作側の意図が見て取れる。バッシング一色の現在と違い、パチンコに対する世間の目がそれ程厳しくなかった事も大きい。もちろん、車内での幼児放置など、一部の心ない人間が起こす事件・犯罪によって、パチンコそのものが叩かれる事も少なくなかったが…。
このドラマは、凄腕の女パチンカー・すみれ(浅野)が、ふと立ち寄ったパチンコ店で孝(松岡)という若者と出会う事から始まる。すみれは、訳あって全国各地のパチ屋を渡り歩いており、しかも大当りする台を「音」で聞き分ける特殊な能力を持っていた。彼女が目を閉じると、「大当りしたい」という台の声が、特殊な音として聞こえてくるのだ。すみれの類まれな能力にほれ込んだ孝は、彼女を「アネキ」と慕って行動を共にする。
連戦連勝のすみれだったが、女パチプロ・咲(国生)の陰謀で、店に「体感器ゴト師」と間違われる。翌日、体感器なしで大当りを連発し、イカサマの濡れ衣を晴らしたすみれは、自分をゴト師扱いした店長に「伊達や酔狂でパチンコ打ってるんじゃない!演歌のすみれとは、私の事よ!」と啖呵を切る。
一方、すみれ達はパート従業員・みどり(横山)と仲良くなり、彼女の家が地上げ絡みで多額の借金を抱える事を知る。みどりには修一(渡部)という銀行員の恋人がおり、修一はみどりを助けようとして銀行の金に手を付けてしまう。窮地に陥ったカップルを救うべく、すみれは確変の女王・咲との「パチンコ勝負」を行う。しかし咲には、体感器と同じリズムを刻む「人間体感器」の特殊能力が備わっていた…。
「大当り台を音で聞き分ける」とか「体感器のリズムを体が刻む」など、非常に現実離れした設定である。とはいえ、パチンコのドラマや劇画などには、時に「超人的能力」が要求される場合もあろう。「雷電」の主人公・大石が持つ「活動電流」然り、「JACK・パチスロ闇の帝王」の南井が乱数を読み切ってボーナスや小役を永久に出し続ける…なんてのも、ストーリーとしては非常に面白かったし。
また、本作は、パチンコを取り上げるのみならず、泥臭い人間関係にも焦点を当てており、ドラマとしての見ごたえも十分である。すみれが全国のパチンコ店を渡り歩く真の理由も、ドラマの伏線として非常に重要なポイントだ(すみれが持ち歩くアタッシュケースに秘密が…)。バブル崩壊による地価の暴落、銀行の不正融資問題など、当時の社会問題がストーリーに密接に絡んでいる。
キャスティングの多彩さも特筆すべき点で、主役の浅野ゆう子はもちろん、相手役にはTOKIOの松岡昌宏が抜擢されている(本作がドラマ初出演となった)。敵役の女パチプロ・咲を演じる国生さゆりも非常に魅力的である。その他の共演者も、「北の国から」の横山めぐみや、今やトップスターの一人となった渡部篤郎と、実力派揃いである。もちろん16年近く前のドラマなので、皆さん実に若い。
さらに、特別出演の短いカットで登場する俳優陣も、錚々たる顔ぶれだ。すみれを乗せたトラックの運転手に蟹江敬三、孝の横で薀蓄を垂れるパチ屋の常連に柳葉敏郎、「パチンコ勝負」を企画するパチンコ店オーナーに佐野史郎、すみれのOL時代の上司・恋人役に滝田栄、体感器ゴトで揉めるパチ屋の店長に平泉成、すみれに特殊能力を伝授する老人に三木のり平、といった具合である。故・三木のり平がFパワフルを打つ場面など、まずこの作品以外で見る事はできない。貴重である。
(撮影協力ホール)