背寒日誌

2024年10月末より再開。日々感じたこと、観たこと、聴いたもの、読んだことなどについて気ままに書いていきます。

中年の魅力、ケーリー・グラント

2005年10月02日 13時46分41秒 | アメリカ映画
 ダンディな品格があり、チャーミングで大人の魅力を備えた男優。ケーリー・グラントはそんなアメリカの二枚目俳優だった。私の知っているケーリー・グラントは、もちろん戦後の彼で、ヒチコック監督の「泥棒成金」そしてスタンリー・ドーネン監督の「シャレード」に出演した彼である。麗しのグレース・ケリーやオードリー・ヘップバーンを見事にエスコートできる中年男は、グラントをおいて他にない、と思ったのは私だけではあるまい。それほど魅力的な中年だっだ。ケーリー・グラントには茶目っ気があり、しかも頼りがいのある男の余裕といったものが備わっていた。だから、若い女性の美しさが引き出せたのだろう。「北北西に進路を取れ」では、地味な女優エヴァ・マリー・セイントが特別に美しく輝いて見えたのは、グラントのおかげかもしれない。
 ケーリー・グラントはこの頃、映画の中で必ず背広を着ていた。あの横に分けた髪型も同じで、いつも金持ちの実業家のようだった。演じる人物の性格も同じというか、まさにケーリー・グラントそのもの。明るく楽天的で、陰湿なところが微塵もない、いかにもハリウッド・スターらしいスターだった。
 グラントが主演した恋愛映画で最も有名なのは、デボラ・カーと共演した「めぐり逢い」である。どちらかというとシリアスなメロ・ドラマだったが、私は事故の後の暗い後半よりも、豪華客船の中で出会った二人が愛し合うロマンチックな前半の方が好きだ。イギリス人の女性は美人が少ないという悪い評判があるが、「めぐり逢い」のデボラ・カーのなんと美しいこと!彼女はイギリス出身の女優だが、ヴィヴィアン・リーと双璧をなすイギリス美人の代表である。私は今でもそう思っている。そういえば、ケーリー・グラントも実はイギリス出身で、若い頃アメリカに渡り、そのまま定住してしまったのだそうだ。聞く所によると、あのクラーク・ゲーブルの代役として映画に出演したのが、グラントの出世のきっかけだったらしい。もちろん戦前の話だ。そして戦後、「ローマの休日」のキャスティングではグラントが主演を断ったのだという。そこでオードリー・ヘップバーンの相手役にグレゴリー・ぺックが選ばれたのだそうだ。ヘップバーンとは後に「シャレード」で共演することになるが、「ローマの休日」で、もしケーリー・グラントが新聞記者役を演じたとしたら、もっと素晴らしかっただろう。
<デボラ・カーとグラント>
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