背寒日誌

2024年10月末より再開。日々感じたこと、観たこと、聴いたもの、読んだことなどについて気ままに書いていきます。

ジェーン・フォンダ

2006年02月25日 19時37分42秒 | アメリカ映画

 ジェーン・フォンダにぞっこん惚れていた時期がある。あの豹のような顔、ぐっと見つめる鋭い目つき、意志の強そうな口元、そして、豊満でも痩せぎすでもない締まった肢体に魅せられていた。女とはこういうものだと、中学生の私は思った。もう今から40年も前のことだ。ジェーン・フォンダ(1937年~)に強く惹きつけられた最初の映画は、忘れもしない、「危険がいっぱい」(1963年)だった。フランスのルネ・クレマンが監督し、アラン・ドロンと共演したサスペンスあふれる白黒映画で、私は一発でジェーン・フォンダという女優のとりこになった。あの美男子アラン・ドロンを意のままに操り、時には弄ぶほどの魅力的ですごい女だった。もちろん、これは映画の役柄に過ぎなかったとはいえ、私の目には、ドロンでさえ、彼女の前ではかしずきそうな予感を抱いた。これは後で知ったことだが、「危険がいっぱい」というフランス映画に出演したことはジェーン・フォンダにとって人生の転機になった。ドロンが彼女を友人の映画監督ロジェ・ヴァディムに紹介したからである。
 ロジェ・ヴァディムという男は、男性の映画ファンにとっては羨望の的というか、嫉妬の対象にすらなった監督である。ドン・ファン監督とさえ言われ、若くて美しい女優を餌食にして映画を作ることで有名だった。カトリーヌ・ドヌーヴの後釜として、ヴァディムは事もあろうにジェーン・フォンダに手をつけた。ドヌーヴもフォンダも好きな私としてはヴァディムという男は憎き敵(かたき)なのだ。しかし、もうそのヴァディムも今はこの世に無い。

<ロジェ・ヴァディム(1928年~2000年)>
 ドロンに紹介され、ヴァディムはジェーン・フォンダを自作「輪舞」(1964年)に出演させた。制作時の二人のアツアツぶりはジャーナリズムの話題をさらったほどだと言う。ドヌーヴとは二年間の同棲生活の末、子供まで孕ませて彼女を棄てたヴァディムだったが、フォンダとは「輪舞」の直後に結婚した。そして、二人の結婚生活は八年続く。
 ヴァディムが若妻ジェーンを主役にして撮った映画は、「獲物の分け前」(66年)と「バーバレラ」(68年)である。どちらも、映画の出来はそこそこなのだが、ジェーン・フォンダだけは最高に輝いていた。先日、「獲物の分け前」を再見した。ストーリーは今にしてみればありきたりで、近親間の不倫話である。フォンダは20歳も年の離れた金持ちの実業家(ミッシェル・ピコリ)の妻の役。郊外の豪邸で若いピチピチした肉体をもてあまし、仕事で留守がちな夫に対し性的不満を抱いている。家には大学生の義理の息子(夫の連れっ子)が同居していて、二人とも我慢ができず、ついにただならぬ関係になってしまう。そして、二人で駆け落ちしようとする。この映画の中で、フォンダはセミ・ヌードを披露し、魅力の限りを振りまいている。

<獲物の分け前>
 この頃のフォンダは、演技力はまだまだ (後に開眼する)だが、しなるような瑞々しい肢体には男ならしゃぶりつきたくなるだろう。いや、ムチでも打ちたくなる。そんな男の願望に対し、これでもかと見せ付けた映画が次作「バーバレラ」だった。これはSF的な作品で、ジェーン・フォンダの衣装の大胆さが評判になった。私は高校生の時、封切りで「バーバレラ」を見て、彼女に圧倒されたのを覚えている。ぜひもう一度見たい映画だが、フォンダの魅力だけで成り立っていた作品なので、今見たら失望しそうな気もしている。(冒頭に掲げた写真は「バーバレラ」の彼女である。)
 他にもジェーン・フォンダの出演作はたくさんある。アメリカ映画では、デヴュー作「のっぽ物語」(60年、アンソニー・パーキンス演じるバスケットボール選手との青春恋愛ドラマ)、「裸足で散歩」(67年)、「ひとりぼっちの青春」(69年)が佳作である。そして、ヴァディムとの仲が冷え切っていくにしたがい、ジェーン・フォンダは別の面で過激になっていく。いわゆるセクシー女優から脱皮して、演技派女優の道へと歩み出すと同時に、反戦運動の女闘士としても活躍し始めた。演技派への転身は歓迎すべきことであったが、なりふりかまわず政治活動に傾いていく彼女を見ることは、ファンのわれわれにとって大きな驚きで、いささか眉をひそめたくなる言動に思えたことも確かである。
 その後、「コール・ガール」(71年)、「ジュリア」(77年)、「帰郷」(78年)、「チャイナ・シンドローム」(79年)、「黄昏」(81年、生き別れずっと恨んでいた父親ヘンリー・フォンダと共演した名作)と、ジェーン・フォンダは次々と大作に挑戦し演技派女優としての地位を築いていく。が、もうこの頃には、彼女への私の熱情もすっかり冷めていたのだから、ファンというのも気まぐれなものだ。女優への熱き思いは、映画の良し悪しとは無関係に、ファンの心の中で勝手に募っていくものなのかもしれない。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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はじめまして (JSBACH2005)
2006-05-27 17:33:16
私も「危険がいっぱい」を見ました。 女をだます積りがダマされてしまう映画で、面白かったですね。



ではまた。
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ホントに面白かった (背寒)
2006-10-08 13:30:21
私はずいぶん前に名画座で見たのですが、白黒なのが、かえって良かったですね。ちょっと変わったサスペンス映画だと思いました。
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