帰り道、果樹の圃場の網に何か大きな動物が引っかかっていた。近寄るとキジ。前から、ケンケ~ンっと声だけは聞こえていたけど、君だったんだね。オスですね。
網の隙間を逃げ惑うので、傷つかないように網でおさえて手をいれ、抱きかかえて救出。暖かい。一瞬だったけど、ふとニワトリを抱いたときの感触に似ているなと思った。尾の長いところ、翼の羽根がしっかりしている感じ、背や胸の羽根が柔らかい感じがちょっとちがうようだけど。圃場の間の道にそっと置く。
だだだだだっ・・・すたたたたっ・・・とととととっと一直線に走り去り、50m以上先で左の梅林に駆け込んでいった!
??自分が飛べることを忘れちゃったのかな?
もうひっかかっちゃだめだよぉ~~~
電車の中で、また、このときのことを思い出した。抱きかかえたときの感触とともに、強烈に印象に残っているのは彼の目だ。
正面からまじまじ目と目をあわせたわけでもないのに、横目で私を見ていたのだとおもうけど、あの目。写真をみると、そう、彼の目は横についている。
だから、横や後ろから近づいたのに 何か いつも彼がこっちを見ていたような気がしたんだ。
横に目が付いていると、前方から後方まで視野が広い。きょろきょろしなくても広範囲見えているのだ。ウサギやウシなど植物食の動物がこのタイプ。長時間草を食べていても、反芻していても、四方を注意していられる。
いっぽう、目が前についていると、両目の視野が重なるので、結果視野は狭いがその多くの範囲を両目で見ていることになる。すると、効き目と遠近感をつける目とで距離感がわかる。獲物に飛びかかったり木から木へ飛び移ったり、肉食動物のネコ科や猛禽類や森のサルなど、そして人間の目がこのタイプだ。
もし、ヒトの目が横についていたら、いつも同じ電車で一緒になる好きな人の横顔を遠くからそっと見つめるなんてことは出来ないし(横顔みても目と目があってしまう・・・)前を向いていても後ろのほうまで見えてるから、スリや痴漢はやりにくくって減るだろう。っていうか、こんな満員電車の中って、普通、みんな出口のほうや窓のほう見て、他人とは目を合わせないようにしているのに、目が横にあったらつらいだろうな。
しかし、あのときのキジの目。「ひっかかっちゃったよ~ たすけて ありがとう!」ではなくて、「でられないよ 近づくなよ やめろよ さわるな ひゃぁ~~~っ」って感じだった。 ある解剖学者の先生が怖くないかと聞かれ、・・・怖いとしたら目と手だ・・・動いたらと思うと怖い・・・とご著書に書いていた(関係ないか・・・)。 目は口ほどに物を言い・・・ともいう。あの目、すごく緊張していた。
とにかく、野生の動物と目があうってのは貴重な体験だったかもしれない。
キジ
Phasianus colchicus
キジ科
全長 オス80cm メス60cm
日本の国鳥 上野動物園でも正門を入って右、鳥のコーナーの一番初めのケージにいる。国鳥だけど狩猟鳥。4~7月ころ地上に巣を作る。メスは全体に薄茶色で地味。
参考 藤本和典著 小学館フィールドガイドシリーズ⑭ 都会の生物 ほか