こんなに遠くまで来てしまった。そう思っていたけれど、僕は迷路の中を彷徨っていただけなんだ。遠くもないし進んでもいない。
あのとき橋の上でした約束も、あの場所にまだじっと蹲っている。
夢は哀しい。懐かしくて恋しい時間を見せておいて、それを手の中に感じることは決してさせない。
夢は夢。
その名を呼んでもどこにも届かず、目を開けるとそこにはもう名残さえない世界が待ち受けている。
時間が全方向に遠ざかる。ひとりはひとり。
風が吹く。耳元で誰かの声が聞こえた気がした。
「迷うときもあるよ、誰だって」
浅い呼吸と他人事にかわす社交辞令の薄い声。気づいているけど、気づかないふりをするのが礼儀なのかな。
「空を見てごらん」
また誰かが言った。僕は素直に空を見た。今度の声は密度が違ったから。
迷路の中から見る空に区切りはなかった。白鷺がゆったりと渡っていく。
ああそうか、この壁を登ればいいんだ。壁の上に立てばいいんだ。
なんだ、そんなことか。
僕は壁の小さなとっかかりに手を掛け、今一度空を見た。
ここから出よう。
夢は哀しい。でも僕は哀しくてもその夢を忘れたくない。哀しみと決別する苦悩より、哀しみと共に行く道を選ぶ。
ひとりはひとり。でもこの哀しみが僕を支えてくれる。
他人事の言葉はいらない。
あのとき橋の上でした約束も、あの場所にまだじっと蹲っている。
夢は哀しい。懐かしくて恋しい時間を見せておいて、それを手の中に感じることは決してさせない。
夢は夢。
その名を呼んでもどこにも届かず、目を開けるとそこにはもう名残さえない世界が待ち受けている。
時間が全方向に遠ざかる。ひとりはひとり。
風が吹く。耳元で誰かの声が聞こえた気がした。
「迷うときもあるよ、誰だって」
浅い呼吸と他人事にかわす社交辞令の薄い声。気づいているけど、気づかないふりをするのが礼儀なのかな。
「空を見てごらん」
また誰かが言った。僕は素直に空を見た。今度の声は密度が違ったから。
迷路の中から見る空に区切りはなかった。白鷺がゆったりと渡っていく。
ああそうか、この壁を登ればいいんだ。壁の上に立てばいいんだ。
なんだ、そんなことか。
僕は壁の小さなとっかかりに手を掛け、今一度空を見た。
ここから出よう。
夢は哀しい。でも僕は哀しくてもその夢を忘れたくない。哀しみと決別する苦悩より、哀しみと共に行く道を選ぶ。
ひとりはひとり。でもこの哀しみが僕を支えてくれる。
他人事の言葉はいらない。