Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

「楽園のカンヴァス」原田マハのルソー史

2014-12-21 10:08:41 | ミステリ小説
                                  

アンリ・ルソーにスポットを当てミステリのテイストで書かれている物語です。最後の意外性など美術に興味や造詣がなくても楽しめる内容です。
私自身のように美術館などには一度も足を運んだことの無い人間でも楽しく読めました。天才なのか日曜画家なのか評価の定まらない人物アンリ・ルソーの作品の真贋を競うという物語が興味深くその判定に使用する
材料が未発表の謎めいた文章で、七章まである文章を競う二人が交互に読み進めて最後に判定をするという設定がとても面白いと感じました。その二人にも縁があり人物描写がこの物語の彩をさらに高めている趣向です。

はるか昔に生まれその生涯を閉じた人の謎めいた部分にスポットを当てる書き方はとても興味を惹くものです。著者の経歴を生かした絵画の世界の裏側や仕組みなども少し見せて対決の場バーゼルに舞台は移ります。
そういうスイッチが入る人がいる、それはどの分野でもそうでしょう。絵画の、一枚の絵画の前から身動きできないほどの衝撃を受ける人。キュレーターとなり美術界に身を置く人を主人公にしたこの物語はとても新鮮で
読み応えのある内容でした。著者の得意分野であるこの世界を舞台にした次の作品も読んでみたいと思いました。次はハヤカワオリエの娘真絵を主人公にした新しい冒険の旅の物語を。


「逃げる幻」ヘレン・マクロイのミステリ

2014-12-21 09:13:57 | ミステリ小説
                                          

本国刊行が1945年のミステリですが今読んでも楽しめる内容です。人間消失と密室殺人が彩る事件となっていますがそれはホンのおさわりのようなものです。
初めから見え隠れしていた問題がありますがすっかり意識の他に追いやられていきます。それは家出を繰り返す少年という不可解な様子から開けた荒野で忽然と消える出来事や正体のハッキリしない人物が二人もいたりとするからです。事件の目撃者でありこの物語の語り手であるダンバー大尉は精神科医ということで関係者の格好、顔つき、視線、仕種、経歴、そして会話の内容などから登場人物の性格などを細かく分析します。ですがここにひとつ穴があります。それは登場人物の中にマドンナがいることです。そのマドンナにダンバー大尉は一目惚れします。このため彼の眼は少し曇ってきますので彼の視線で物語を追う読者も当然少し曇ってきます。ここがこのミステリのミソです。

後半過ぎから登場するこのミステリの探偵役のウィリング博士は部下であるダンバー大尉のように思い入れなどありませんから彼からこれまでの経緯を聞いて冷静に分析します。色々な謎も彼による明確な答えは至極もっともな話です。でも読んでいるコチラにはその答えが中々見えませんでした。ダンバー大尉同様に目が曇っていたからです。登場人物の会話などもその態度などもヒントになっていたのですが真相には気付かないように作者は周到に計算された書き方で読ませます。伏線もちゃんと書かれています。ラストの驚きの事実もなるほどと感じ入るほどですっかり作者の手の内で遊ばされていたことに気付きました。女性らしい繊細な言葉で表わす情景や雰囲気などに加え舞台になっている土地の風景や時代背景としての興味深い史実などもこの物語の重要なファクターです。心理のアヤがヒントにも目くらましにもなっているこの本のトリックにすっかりやられました。