どうもすっかりこのブログをサボってしまいました。もしどなたかお一人でもこのブログを気にかけて下さっている方が居られるとしましたら非常に申し訳なく思います。
多分それほどの方は居られないと思いますが。(笑)
「王とサーカス」米澤穂信 著を読みました。 この人の作品は何冊か未読がありますがそれ以外はすべて読んでいます。つまりこの作家が自分は好きなんだということですね。
視点というか切り口がセンス良く感じます。 例えば愚者のエンドロールとかあのような物語を書く発想力というか見方にとても魅力を感じます。
これは「さよなら妖精」という本の登場人物である太刀洗万智を主人公にした物語です。
著者があとがきに記しているように「さよなら妖精」の続編ではないということで、続編とするなら時間が過ぎてしまっているのでただ単に太刀洗万智を主人公に据えただけということでしょう。
主人公の太刀洗万智は新聞社を訳あって辞めフリージャーナリストという立場にいます。知人の雑誌編集者から声を掛けられて海外旅行特集の記事を書く事前取材のためネパールに来ます。
カトマンズの安宿トーキョーロッジに落ち着きますが、そこで出会った泊り客の人々との縁で突然起こった王家の殺害事件を取材することになります。
しかし、万智はまだジャーナリストとしては未熟です。 なぜ報道するのか?その根本的なことに対して自身の中にはまだ芯となる考え方が出来ていません。
王家の事件の取材に関して紹介された軍人に話を聞く機会を得ます。しかし、この軍人を取材する中で日本人であるお前に何故国の恥になることを話さなければならないのかと厳しく突っ込まれます。
万智は相手を納得させられる言葉がありません。自身にも記事を書くということはどういうことなのかまだ良く判らないからです。
取材は失敗に終わります。そして時間を置いてこの軍人の死体が発見されます。身体にはメッセージともとれるある言葉が刻まれていました。
ホテルのトーキョーロッジがある時外部から遮断されていたりと、濃くはないですが手の込んだ仕掛けを施されていたりとミステリらしい味付けがなされています。
しかし、この物語は太刀洗万智のジャーナリストとしての成り立ちを描いた物語です。謎は謎として一筋縄ではいかない深さがありますが、あくまで万智の人間としてそしてジャーナリストとしても成長する
そんな姿を追っていく物語です。しっかりとした伏線回収と万智の冷静な分析によって事件の真相も明らかになりますがメインは人間太刀洗万智の物語です。
今や人気作家となり次回作が注目されますが、プレッシャーに負けないでこれまで同様の面白い物語を読ませて欲しいと思います。 久しぶりに心安らぐミステリを読みました。こんな感想でした。
言わずもがなのことですが、このブログに載せている写真はすべて私が撮影したものです。カメラを買って数年、少しは上達しているのではないかと思っています。( ´艸`)