本を開くと最初のページに「ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードに捧ぐ」とあります。
映画の好きな方ならピンときますよね。
私もこの本については何の前知識もありませんでした。どんな内容なのかまったく知らなかったのです。
タイトルを見ても、内容を想像するのはちょっと困難と思えるようなタイトルですよね。
しかし、最初のページのこの一文です。思わずニヤリとしました。 これは読まずにいられない、そう思いました。
フフ、そっちの話しか、と理解しました。 そうすればタイトルの意味合いもボンヤリとはあっても分かります。
絵画の世界、 美術界を舞台にしたものはそう多くは無いと思いますが原田マハの作品に面白いものがありました。
でも、こちらはあのような作品とは違った系統のものであることはハッキリしています。
どのように料理して読むものを楽しませてくれるのか期待が膨らみます。
前半は一人の男と一人の女の云ってみれば人生の転落の様子が語られます。 この二人の日常に直接の接点はありません。別々の世界に暮らす男女の人生のつまずきを描いています。
しかし、この男女はこの物語の重要人物です。 もう一人の人物に係わって来る経緯をじっくりと書いて、読者に違和感を持たせないように丁寧に仕込んでいかなければいけません。
そういう意味では、二人がしくじっていく過程がありそうな話で描かれていて素直に納得ができます。こういう男も女もいるだろうなと思わせます。 この辺はけっこう大事な部分で
お座なりな書き方では人物の動かし方が都合良過ぎととられますので注意が必要です。もっともプロの作家にとっては釈迦に説法な話でしょうね。
さて、この手の話しはオチがもっとも重要です。あれだけ盛り上げておいて最後のオチはその程度かい?と思われるようではハッキリ言って失敗作とみなされます。
それではこの本はどうなんでしょう? 私としては飛び切りの傑作とはいかないまでも及第点は上げられると思います。
美術界の見解についても原田マハの本とはまた違った角度からの見方で、その内容からもこの著者の人間的な部分が透けて見えるようで私としては好感が持てました。
後半からのスピーディな展開と意外なオチを楽しませてくれるこの「大絵画展」。読後感も良くておススメ出来る一冊です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます