Mのミステリー研究所

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『100人館の殺人』山口芳宏のミステリ

2015-08-10 10:28:30 | ミステリ小説
                             

大富豪の館でメイドのアルバイトをしている妹からのメールで兄の神尾は、叔母から紹介された自称名探偵の西園寺と共に館に赴く。


数学科の大学院生だった妹があっさり大学を辞め派遣会社の紹介で破格の条件のメイドの仕事に就いたのは一ヶ月ほど前だった。

その契約もパーティが終わり後片付けをすればそこで終了のはずだった。しかし、一緒に来ていた友人の詩織が主人の様子が変だという。脅迫文のような紙を見ていて
机の引き出しに隠すのを見たという。犬が殺される事件も起きていたので不安を感じた神尾結衣子は兄にメールを打ち呼び寄せていた。

プロローグはこんな調子で少しライトノベルっぽい感じがしますが、中身はけっこう本格ミステリの世界でいろいろなミステリの約束事が使われた手の込んだ内容です。

館から麓に下りる一本の道にある橋が爆破され外は暴風雨。電話線が切断されケータイは圏外。お約束の閉鎖状況のなかで起きる不思議な連続殺人。

外の世界とは遮断された館の中での事件ですから容疑者は館にいる人物といえます。しかし、館には100人を越える人がいました。

新商品のモニターとして集められた招待客、館の主の親族、使用人、これらを合わせると100人を越えていました。

本の初めに人物一覧があり親族21名、招待客63名、使用人29名、その他5名となっています。そしてすべての人物に名前と職業が書かれています。

このあたりの著者の拘りというか意気込みについ笑ってしまいます。何故容疑者は100人なのか? それがこのミステリの核です。

事件と状況がこの設定を必然としています。自称名探偵の西園寺と神尾は犯人探しを始めますが次々と犠牲者が生まれます。

何故?どうして?が神尾たちを悩ませます。ある意味ミステリの禁じ手を逆手に取ったような手法が使われていたりといろいろな要素が盛り込まれています。

これはこれで成功といえる内容のミステリでした。

     
          
   
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