Mのミステリー研究所

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まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

「火刑法廷」ディクスン・カーの古典

2014-01-02 19:51:58 | ミステリ小説
ジョン・ディクスン・カーの作品の中ではこの「火刑法廷」が一番とされているのが通説です。
この本の特徴は多分にオカルト的な要素が含まれていることです。ミステリとオカルトの融合したストーリーとしてはこの作品が原型なのかもしれません。
そのオカルト的な部分とは魔女と魔術に関することです。昔毒薬を使った毒殺事件は数多くあったようです。そして女が砒素を使って何人もの人を殺害した
事件も数多くあり、そういった事件を裁くのに特別に火刑法廷が開かれたそうです。
この本のタイトル「火刑法廷」はそういったところから来ているようです。
さて、この本の謎は大きく二つ。急死したデスパード家の当主に毒殺の疑いを持った甥のマークは、友人達の手を借りて埋葬された霊廟から遺体を掘り出
しますが、開けた棺の中にあるはずの遺体が無く消えていた。そして、当主が急死したその夜その部屋では古風な衣装を身に着けた女がいて、壁に塞がれたドアから出て行き
部屋から忽然と消えてしまうのが目撃されていた。この二つの大きな謎にマークと友人たちが戸惑いながらも解決の糸口を探ろうと使用人たちの話を聞きながら
調べていると、突然ブレナンと名乗る市警察の警部が現れる。誰かが秘密の手紙を送ったようでデスパード家の当主の死は毒殺であると密告していた。
ここから警察の調べた各人のアリバイなどが示されるが、消えた遺体の謎と部屋にいた女性の正体、そして部屋の塞がれているドアから消えた謎などがかえって
混迷することになる。このオカルト的な謎に合理的な判断で解決するのはいったい誰なのか。そしてどのように説明するのか非常に興味が湧きます。
この他に、友人で編集者のエドワードが預かった作家の原稿に一緒に挟んであった写真。それはどう見ても妻のマリーに見える。
しかし、写真の女性マリー・ドブレーは1861年殺人罪でギロチン刑に処されていた。この写真を見た後エドワードは妻マリーの謎めいた
行動にも困惑する。 こうして毒殺に関してのエピソードを交えながら後半に至り、ある一人の男がエドワードの前に現れて
事件の謎を解き明かすことになります。この本にはけっこう謎解き以外にも登場人物の個性が多彩で物語としても上手く書かれていて
かなりストーリーテラーであると感じました。古典のなかの古典といえますが今読んでもなかなか楽しめます。
新訳版が出ていますのでそちらがおススメです。



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