Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

「ラバー・ソウル」 ストーカー男の恋 

2013-10-13 07:58:07 | ミステリ小説
  現実社会では何かと問題のストーカー。
悲惨な事件が起き、その行動の心理が理解出来ずにいる私などはただ驚くばかりです。恐らく何事にしても「あきらめる」という概念、ピースが抜け落ちているんでしょう。
世の中、人生にはいくら望んでもどうにもならないことはあります。それらを受け入れられない人間。やはり病んでいるとしか云えないのでしょうか。

病気が原因で顔が奇形になった男。社会と隔絶し閉じこもった生活を送る男。ただ、その分時間はあり興味のあることには没頭できる。やがてある雑誌に音楽の評論を書いた文を送り編集者に認められる。
そして運命的な出会いで知り合った一人の女性。彼女が忘れられない男はすべてを知りたくて彼女の後を追い住まいまでも見つけ出してしまう。

捜査関係者の質問に答える形式で彼の独白が始まり、何が起き何があったのかが少しずつ明らかになってくる。
彼の心の内の独白と質問に答える内容で、彼の行動とその様子が綴られていく。
ピッタリと彼女の私生活に張り付き影のように付きまとう彼。

やがて起きる殺人事件。

ラストには読者の思い込みをひっくり返すドンデン返しで悲惨な出来事の終息を迎えます。

現実社会では嫌悪されることですが、ミステリの中ではこういった男の行動もストーリーの上でやむを得ないでしょう。

井上夢人 著 「ラバー・ソウル」 2013年版 このミステリーがすごい 13位の作品です。
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神のロジック・人のマジック

2013-10-07 08:19:54 | ミステリ小説
ミステリーにおけるトリックのひとつに叙述トリックがあります。
しかし、この言葉自体がとても危険な言葉です。つまりこのミステリーは叙述トリックものです、と云った時点である意味ネタバレになってしまうからです。
この西澤保彦の「神のロジック・人のマジック」もその叙述トリックで書かれたミステリーです。面白いのはこの本が出版されたのが、2003年5月文芸春秋からでした。

もうひとつの有名な作品に歌野晶午が書いた「葉桜の季節に君を想うということ」があります。
これも叙述トリックとして書かれたミステリーで、読んだ読者を「うーん」と唸らせた、とてもよく出来たミステリーです。
この本は同じ文芸春秋から2003年3月に出版されました。つまり、同じような内容のミステリーを二人の作家がほぼ同時期に書いていたことになります。
まったくの偶然でしょうがミステリー作家の頭脳って面白いですね。
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『開かせていただき光栄です』

2013-10-06 18:39:19 | ミステリ小説
とても素晴らしいミステリーです。
その読後感は満足の一語と云えます。最後のドンデン返しに「あっ!」となりました。そうです。ちゃんと伏線はあったのです。しかし、まったく気付きませんでした。
まんまと作者にしてやられた訳ですが、とても幸福な裏切りで作者に敬意を表したいと思います。
解剖学が先端科学であると同時に偏見にさらされた18世紀のロンドンが舞台です。そして内科医よりも下に見られていた外科医。当事の社会情勢を下敷きにして起きた事件。
時にはウィット溢れる記述で解剖学教室で起きた不思議な出来事を翻訳本のような文章で読ませます。

2012年本格ミステリ大賞の受賞作ですが、この時作者の皆川博子氏は年齢80歳を超えての執筆でした。
その年齢でこれだけのミステリが書けるその創作意欲に感服します。
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鑑識の天才と謎の殺人鬼

2013-10-06 17:58:27 | ミステリ小説
 
リンカーン・ライム。
彼は事故により四肢麻痺の身体ですが、その才能を惜しんだ警察の尽力により特別チームを率いる警部として活躍する鑑識の天才と云われる人物です。
彼の捜査は徹底して現場から微細物証拠を採集し、分析によって姿が見えない犯人に迫っていくことです。
そして、仲間達のフトした思い付きや感想、意見などを参考に思考を重ねて証拠物件とも合う人物像を作り上げていきます。
今回の事件はウォッチ・メーカーと名乗る殺人者が現れる。その現場には必ずアンティークな時計が置かれていた。
やがて警察の捜査で同じ時計が十個買われていることを突き止める。犯人は連続殺人を企てているのか?被害者候補はまだいることになる。リンカーン・ライムは
ウォッチメイカーを阻止できるのか?
ドンデン返しに次ぐドンデン返しで読む者の予想を裏切る緻密なプロット。交差する事件とスリリングな展開に魅了されるミステリーです。
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一級のサスペンスと感動のストーリー『黙秘』

2013-10-06 16:41:59 | 日記
 『黙秘』 
 母親と娘の心の葛藤を描いた内容だけれど、原作がスティーヴン・キングらしいサスペンス感たっぶりの展開でみせます。
20年前の父の死に関して容疑を受けた母。証拠不十分で起訴が見送られた過去があり、その時から距離を置き母とは離れて暮らしてきた娘。
 
冒頭の母親演じるキャシー・べイツと老婦人役のジュディ・バーフィットの二人が暮らす家。老婦人と今で言えば看護人のような世話をしながら暮らす
様子が描かれる。気心が知れた二人の生活のなかで、時には老人特有の癇癪を起こしたような言葉を投げつける老婦人。
そして、車椅子に乗った老婦人が二階から階段を落ちて死亡する事故が起きる。階段から落ち倒れている老婦人を見下ろすキャシー・べイツ演じるドロリス。
彼女が手をかけたのか?と思わせるワンショット。 駆けつけた警察の中に、20年前ドロリスの夫が死亡した事件を担当し彼女に疑惑の眼を向けた刑事がいた。
そしてニューヨークでジャーナリストとして働いていた娘セリーナ(ジェニファー・ジェイソン・リー)に匿名のFAXが届き母親が
老婦人殺しの容疑で拘留されたことを知り故郷に帰る決心をする。
序盤のストーリーですが、ここから娘が事件を調べていくうちに20年前には見えなかったものが少しずつ浮かび上がってくる展開となります。
父親の死の真相。老婦人の秘密。それらを絡ませながら冷えていた母と娘の心の交流が始まり、全てが明らかになって二人の距離が縮まっていく様子が
とても感動をよびます。ラスト・シーンでのジワッとくる感動を見逃していた方はぜひ味わって下さい。
出演者たちも名優揃いでこのストーリーを盛り上げます。

1995年 アメリカ
監督 テイラー・ハックフォード
出演 キャシー・べイツ、 ジェニファー・ジェイソン・リー、ジュディ・バーフィット、
   クリストファー・プラマー、デビット・ストラザーン
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