Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

『ゼロ・グラビティ』悪く云えば映像だけの作品。

2014-01-04 08:55:42 | 日記
IMAXの3Dで観ましたが、その映像に圧倒されました。
コンピュータ技術が開発されるのを何年も待ち製作にあたった、との監督のコメントを目にしました。
具体的にどのようなことなのか解かりませんが、その臨場感溢れる映像は半端ではありません。
自身が宇宙に飛び出し、直ぐ横で起きているサンドラ・ブロックが遭遇するドラマをリアルに見ている、
そんな気分になります。物語そのものはシンプルです。宇宙でのサバイバルと云うほどには
起伏にとんだ展開が不足していますが、これまでにない映像の世界を堪能できるのは間違いありません。
サンドラ・ブロックも撮影は大変だったろうなと推察されます。
極限の世界でホンのちょっと勇気を搾り出せば、二者択一の結果はどうであれ運命は変えられる。
あきらめていてはそこでお終いだ。
それがサンドラ・ブロックからのメッセージなんでしよう。

   2013  アメリカ  91分

   2014/1/3      IMAX3Dで観賞。
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「火刑法廷」ディクスン・カーの古典

2014-01-02 19:51:58 | ミステリ小説
ジョン・ディクスン・カーの作品の中ではこの「火刑法廷」が一番とされているのが通説です。
この本の特徴は多分にオカルト的な要素が含まれていることです。ミステリとオカルトの融合したストーリーとしてはこの作品が原型なのかもしれません。
そのオカルト的な部分とは魔女と魔術に関することです。昔毒薬を使った毒殺事件は数多くあったようです。そして女が砒素を使って何人もの人を殺害した
事件も数多くあり、そういった事件を裁くのに特別に火刑法廷が開かれたそうです。
この本のタイトル「火刑法廷」はそういったところから来ているようです。
さて、この本の謎は大きく二つ。急死したデスパード家の当主に毒殺の疑いを持った甥のマークは、友人達の手を借りて埋葬された霊廟から遺体を掘り出
しますが、開けた棺の中にあるはずの遺体が無く消えていた。そして、当主が急死したその夜その部屋では古風な衣装を身に着けた女がいて、壁に塞がれたドアから出て行き
部屋から忽然と消えてしまうのが目撃されていた。この二つの大きな謎にマークと友人たちが戸惑いながらも解決の糸口を探ろうと使用人たちの話を聞きながら
調べていると、突然ブレナンと名乗る市警察の警部が現れる。誰かが秘密の手紙を送ったようでデスパード家の当主の死は毒殺であると密告していた。
ここから警察の調べた各人のアリバイなどが示されるが、消えた遺体の謎と部屋にいた女性の正体、そして部屋の塞がれているドアから消えた謎などがかえって
混迷することになる。このオカルト的な謎に合理的な判断で解決するのはいったい誰なのか。そしてどのように説明するのか非常に興味が湧きます。
この他に、友人で編集者のエドワードが預かった作家の原稿に一緒に挟んであった写真。それはどう見ても妻のマリーに見える。
しかし、写真の女性マリー・ドブレーは1861年殺人罪でギロチン刑に処されていた。この写真を見た後エドワードは妻マリーの謎めいた
行動にも困惑する。 こうして毒殺に関してのエピソードを交えながら後半に至り、ある一人の男がエドワードの前に現れて
事件の謎を解き明かすことになります。この本にはけっこう謎解き以外にも登場人物の個性が多彩で物語としても上手く書かれていて
かなりストーリーテラーであると感じました。古典のなかの古典といえますが今読んでもなかなか楽しめます。
新訳版が出ていますのでそちらがおススメです。


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洒落た展開の邦画二本。

2014-01-02 09:04:57 | 日記

「キサラギ」 アイドルの死の一周忌にネットで知り合った五人の男たちが集まります。追悼の会のはずだったが、死の真相について話し合っているうち
ハンドルネームでしか知らなかった五人の素性が明らかになってくると中に意外な人物がいることに気付きます。ひとつの密室劇ですが会話によって展開する先の読めないストーリーが、
異色のキャスティングと相まって、とても面白いサスペンス・コメディとなっています。練りこまれたこの脚本の良さ。最後まで画面に釘付けとなります。

監督 佐藤祐市 脚本 古沢良太
出演 小栗 旬 ユースケ・サンタマリア 小出恵介 塚地武雅(ドランク・ドラゴン) 香川照之



「約三十の嘘」 詐欺師たち六人が久しぶりにチームを組み、北海道で一仕事終えて大金を手に入れます。しかし、帰りの車中大金の入ったバッグが消えます。舞台が寝台特急の中と云う密室劇で、消えた
大金と犯人探しのお話です。お互い馴染みの六人。そして訳ありの六人です。消えたバッグを巡って腹の探りあいをします。詐欺師が詐欺師を騙すのか疑心暗鬼に囚われながらお互いを問い詰めます。列車は一路東京へ。しかし、バッグは出てきません。誰が何故こんな真似を。いろんな思いが六人に降り掛かります。監督・脚本大谷健太郎 出演 椎名桔平 中谷美紀 妻夫木 聡 田辺誠一 八嶋智人
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「沼田まほかる」その恐ろしく魅力的な世界

2014-01-02 07:17:54 | ミステリ小説
「ユリゴコロ」                                                
偶然見つけた謎めいた手記。
その恐ろしい内容。異常な心と行動。
誰が書いたものなのか? 父かそれとも母か。手記を手にして読み始めた亮介は疑心暗鬼に陥ります。過去の記憶と合致する部分もあり
手記を読む手が止まらなくなります。 怖いです。あらゆる意味で怖いです。人間の持つ心の中の闇の部分が完全に表に出て
思うが侭に行動する。そんな異常な記録が綴られています。しかし、最後のページを読んで涙がジワッとなってこぼれ落ちそうになりました。
美紗子と父の旅に出る別れのシーンで、これまでのさまざまな事柄が消え去っていくような、そんな気になるとても感動する良いラストでした。
まるでホラー小説のような内容と展開でページを捲る手が止まりませんでした。
ですが母の意外な正体というオチとも相まって、かなりのきわどさを持ったストーリーから一転して家族の愛を描いた内容に変貌します。
こういった物語は私自身にはガツンと胸に響きます。

「アミダサマ」                                                     
                この作品は、別に作者はホラーとかサスペンスといった色合いで物語を書かれた訳では決してないとそう思います。
僧侶の経験もある氏の独自の現世観や仏教の世界観などを多少交えながら書かれた物語だと感じました。
人の世の無常とか、何でもないことが歪んで広まったり、悪いことが連鎖して起きたりするがそんなことは特別なことではなく
普通にあることで、そんな中を人は生きていくのだと言っているようです。
自分を見失っている人、何かに囚われている人を救ってくれるのは結局そばにいる愛する人であり
愛する人がいるからこそ人は再生できる。いろいろな因縁やしがらみに振り回されず、本当に自分に必要な人、ただ本質をみてその人だと
気付くべきだと教えてくれている、そんな気持ちになる物語でした。安っぽいホラーでは決してありません。        
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「石持浅海」のミステリ

2014-01-01 09:04:11 | ミステリ小説
「届け物はまだ手の中に」

殺人を犯した彼はひとつの手土産を持って友人宅に現れます。しかし、友人は書斎にこもったまま現れません。丁度子供の誕生日で庭でパーティが始まるところでした。

友人の妻、妹、社長である友人の秘書の三人に迎えられパーティに参加します。始めは普通に世間話などでパーティを楽しんでいましたが、やがて彼は不審を覚えます。

何故彼は書斎から出てこないのか。彼の持っている手土産は時間の猶予がありません。彼は自分の意図を隠し様子を探り出すことにします。

彼、石持浅海はこういった心理戦、頭脳戦の描写がとても上手く読み応えがあります。

密室物の傑作「扉は閉ざされたまま」のように会話によって徐々に事態の様子が明らかになってくる、といった展開が緊張感とともに

読者の興味をグイグイと引っ張っていく要素になっていて、会話も知的で上質であるので読んでいてとても気分が良いんです。

何故書斎から出てこない、何が起きているのか、三人を相手に彼はさりげない会話を装いながら彼の様子を探り出そうとします。

この相手の胸のうちを読む会話の応酬のところがこの本の面白いところで、ラストでお互いの事情が明らかになるまでとても楽しく読めました。

彼はこういったシチュエーションのストーリーを書かせたら一番ではないかと思います。

アッと驚くトリックを駆使した本格物と云うのでは決して無いですが、とても好きな作家のひとりです。


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