Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

泡坂妻夫その世界

2014-02-10 10:24:34 | ミステリ小説
好きなミステリ作家のひとりである泡坂妻夫氏が亡くなられてもう7年になる。初めて読んだ作品は「乱れからくり」だったけれど、
その独特の世界で繰り広げられる物語はとても魅力的だった。「11枚のトランプ」や「湖底のまつり」、「花嫁の叫び」、「喜劇悲喜劇」など面白い作品を見せてくれました。趣味で
奇術をされその腕前は玄人はだしとの事で、ミステリのトリックと奇術のトリックは相通じるものがあったと言うことなんでしょう。ペンネームの泡坂妻夫は本名からのアナグラム
と云うのは有名な話で多分に子供のような遊び心を持った素敵な人でした。「毒薬の輪舞」ではミステリのいろいろなトリックとかネタを集めた評論のような一面もある作品を書かれていました。
「喜劇悲喜劇」では回文という洒落た遊びを使った物語を見せてくれました。回文とはご存知のとうり上から読んでも下から読んでも同じという文のことです。
「きげきひきげき」、本のタイトルから回文になっている、この作者ならではの遊び心満載の作品でした。いちばん好きだったのは「花嫁の叫び」で読み終えた後の興奮は今でも
覚えています。ちょっとヒチコックの「レベッカ」に似た雰囲気とストーリーの物語ですが、最後の意外さには驚きました。
ミステリを読んでいて、頭の中であれこれと有名なトリックを思い浮かべて、この作品にはどれが使われているのだろうとか考えて、先回りして犯人を見破ってやろう
といった趣旨で私はミステリを読んでいません。むしろ見事に騙されるのを期待して読んでいます。
名探偵 亜 愛一郎を誕生させ、奇術師であり名探偵というキャラクターの曽我佳城も創造され、楽しいミステリの数々を世に送り出された氏のミステリ界における功績は
とても大きなものであったと思います。惜しい作家をなくしたものと今さらながら思います。 合掌。

落語とミステリーの融合

2014-02-10 09:24:50 | ミステリ小説
日本独自の芸能である落語。その落語をモチーフにした珍しいミステリです。しかも、その中身は本格的なミステリで読者は落語の面白さと
謎解きを充分楽しむことができます。普段あまり落語を耳にしない読者でも楽しめるように工夫もされていて、その古典芸能の魅力が伝わってきます。
「七度狐」と云う話を使ってストーリーが作られています。名門春華亭の六代目古秋が七代目を指名する一門会が静岡にある杵槌村で行われることになった。季刊落語の編集部員である間宮 緑は北海道に出張中の編集長の
名代として杵槌村に向かう。この村は以前は狐の村と呼ばれ温泉郷として栄えたが当事の面影は無い。一門会の直前に折からの豪雨により村は孤立する。そして見立て殺人が起きる。警察も近寄れない孤立した村で
起きる殺人事件。新米記者の間宮 緑は洞察力に非凡さを持つ編集長に電話で伝えるが、村に近寄れないとなっては何とも致し方ない。見聞きした事すべてを報告するが更なる事件が起きる。
と、この様なストーリーですが本格ミステリのアイテムがてんこ盛りの物語で、トリックや意外な犯人といったところがミスリードの巧みさもあり、そうあっさりとは真相に気づくことはないでしょう。
豪雨による孤立した村と云うクローズド・サークルの舞台を使ったり、見立て殺人と云った金田一耕助の世界をなぞった構成がミステリファンの心をくすぐります。
ちょっと毛色の変わったミステリとしても面白い一冊です。