渋いっ!僕らのTokyo Jazz Cruising♪~今夜も出航!~

Live cafe & bar 池袋Apple Jump(アップルジャンプ)店主の日誌

プロご用達・福田 重男の燻し銀TRIO

2008年07月14日 | ジャズ・ライブ
停泊地)御茶ノ水ナル(08.7/2)
メインアーティスト)福田 重男(p) 小杉 敏(b) セシル・モンロー(ds)

ジャズの世界には、“プレイヤーズ・プレイヤー”という言葉があります。
これは、一般リスナーの人気・知名度はそれほどではないんだけども、プレイヤー間では絶大な人気があり、様々な影響を与え、リスペクトされているプレイヤーをさす言葉です。

ものすごくBIGな例で言うと、なんといってもアルト・サックス奏者「チャーリー・パーカー/Charlie Parker」ですね。中学生のころからジャズを聴いていた私にも、大学に入るまでは、ほとんど意識して聞いていた記憶がありません。
確か、マッセイ・ホールという実況盤でディジー・ガレスピーと一緒に「何とかピーナッツ」とかいう曲を演ってるひとだったかな、という感じですね。ところが、大学のジャズ研に入ると状況は一変します。
「モダン・ジャズを演るんだったら、パーカーを演んなきゃ!」と先輩に教えられ、それから毎日がパーカー。来る日も来る日も朝から晩まで、みんなで「NOW'S THE TIME」。夏休みが終わる頃には、少しずつ、アドリブに生かせるようになって、それまで、ソロになると突然ロックのブルースようになってしまってたのが、なんとなくJAZZYな感じに変身。(当時は、ギターを担当してました。)
それからは、夢中になって、しばらくパーカーに没頭という感じでした。

ギターでいえば、「パット・マルティーノ/Pat Martino」かな。「想い出のサン・ロレンツォ」でジャズシーンに颯爽と登場した「パット・メセニー/Pat Metheny」を尻目に、当時ジャズ・ギター仲間では“パットと言えばマルティーノ”という合言葉が流行ってました。(いや、正確に言うと自分だけ使ってた!)
このひとの「EXIT」というアルバムに残した「酒とバラの日々」や「ブルー・ボッサ」のソロ・パフォーマンスは、凄いですよ。思い出しただけでもめまいがします。

さて本題です。日本のジャズピアニストの中の“プレイヤーズ・プレイヤー”といえば、なんといっても、本日ご紹介する福田 重男さんですね。1957年生まれといったら、私と一緒か。(うん、誰かと違って無駄に年をとってないな。)わたしの数少ない知り合いのピアニストにも福田さんのファンが何人かいます。
「ちょっと、行き詰ると福田さんを聞きに行くんです。」とか「どうしたら、あんな風に、素敵に歌の伴奏が出来るんでしょう。」といった様々な形で注目されております。

本日のライブは、スタンダードの「How about you」でスタート。
全体の構成は、スタンダードを中心に、オリジナルを随所に織り交ぜて進んでいきます。
福田さんのピアノは、とにかく気を衒わないオーソドックスなスタイルです。素材を生かして、時には激しく、時にはリリカルに、歌心たっぷりに曲を料理していきます。何か築地の腕利き料理人のようですね。決してフレンチとか中華ではありません。プロの方が行き詰ると聞きに行くと言うのが分かるような気がします。

そして3部。このナルは50分×3本の、3ステージ制がメインです。演奏者泣かせのまるまる150分のパフォーマンスです。
そしてこの3ステージ制の場合、2ステージが終わると帰ってしまう人が結構多いんです。まあ、終電の関係もあったりするんでしょうが、残念ですね。
何しろ、実はこの3ステージ目が一番良かったりすることが多いんです。

これには理由があります。
まず、第1ステージ目は、ご挨拶と言うか肩慣らしという感じで進みます。実際、ベーシストとかも音量のバランス調整とかをよくしています。
そして第2ステージ目が一番の聞かせどころで、自信のある自己のオリジナルの大曲などが披露されることが多いです。みんなで合わせる所があったり、超ハイスピードだったりと、神経をたっぷり使います。本日で言えば、大好きなF1ドライバー、ナイジェル・マンセルに捧げた「Go Ahead Nigel」ですね。
そして、聞かせどころ満載の第2ステージ目を終えたあたりは、何かふっと力が抜けて、ちょっと軽くスタンダードでもやりましょうか。というゆるい感じになります。このリラックスした感じが丁度いい塩梅になるようで、3ステージ目がとても楽しかったりする訳です。まあ、リスナーも同じような精神状態ですね。

その3rdステージは、コールポーターの軽快な「I Love You」でスタート。
このスイング・ナンバーが、少し酔い気味の体に心地よく浸み込んで行きます。
そして本日の1番は、モンク珠玉のバラード「Round Midnight」。これ、絶品です!(2月に吉祥寺SOMETIMEで聞いた石井彰さんのこの曲も、素晴らしかったです。このときも3rdステージのしかも最後の曲です。わぁー、最後までいて良かった!としみじみ思いましたね。)

そして次にジョビンの名曲「フォトグラフ/Fotografia」。本日のもうひとつの1番です。そして、これがまた絶品なんです。大げさにに言えば、本日の名演をじっくり味わうために、今まで何度も寄り道してブラジル音楽の旅に出かけたのかな、とさえ思いました。

と言うことで、本日最後まで残っていた人への最高のプレゼントとなった最終ステージとなりました。
うん、若いミュージシャンのフレッシュでエネルギッシュな演奏も良いけど、やはりベテランプレイヤーの、燻し銀のようなライブは、プライスレスですね。

ところで、この御茶ノ水ナルの姉妹店が代々木に有ります。こちらは、ボーカルもの中心の店です。この店のことを、プレイヤー同士では“代ナル”と呼んでいます。

と言うことは、御茶ノ水ナルのことは“おナル”っていうのかな?
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