二本松城 陸奥 中世山城と近世城郭の複合城郭遺構を見学 東海古城研究会の見学会で訪れました

二本松城は霞ヶ城とも呼ばれ福島県二本松市郭内にあります。初代城主は畠山満泰で田地ケ岡からこの地に城を移したと伝わります。その後、目まぐるしく城主が変わり江戸期に入り丹羽光重の時代に近世城郭として形を整えられたとされます。東海古城研究会の特別見学会「福島県の古城と史跡をたずねて」に参加して見学しました。今回の参考資料は (1)パンフレット｢史跡 二本松城跡」、 (2)見学会当日資料と (3)パンフレット｢二本松 まち歩きマップ」などです。


二本松城　破線内は初期の城域　後に奥州街道は南東に付け替えられた
　資料によると、畠山満泰が築城した初期の二本松城は新城館に居館があり、本丸に詰城を設け家臣の屋敷を尾根続きの南と東に配置したとされます(点線の城域を想定)。旧奥州街道(想定)は城内を通っていましたが、後の城域拡張で南東に付け替えられ、地形を利用して城の防御性を高めたとされます。


二本松城　復元された櫓と石垣の調和が抜群で美しい！
　二本松城は戊辰戦争で落城、廃城となり昭和57年(1982)に門や櫓が再建されいまの美しい姿になりました。資料によると写真に見える二階櫓は往時に存在しなかったとされます。


二本松城　戊辰戦争と二本松少年隊の悲しい歴史を内包した城　近世城郭がメイン
　現地では戊辰戦争、二本松藩戒石、二本松少年隊に関して熱く語る地元のボランティアガイドさんの案内がありました。目につくのは近世城郭の美しい石垣ですが、所々に中世城郭も見ることが出来ました。


二本松城　二本松少年隊士像と箕輪門の二階櫓
　戊辰戦争で命を落とした少年は白虎隊だけでなく二本松少年隊も忘れてはならないとガイドさんの説明にも力が入りました。像は近年設けられたもので傍らの女性は、戦いに赴く幼い隊士の母親が夜なべで出陣腹を縫う姿ですね。


二本松城　箕輪門　西から　
　箕輪門は城の正門にあたり、丹羽光重の時代に造られたとされます。現在の門は近年の復原のようです。


二本松城　三ノ丸　南から　手前に下段　奥に上段
　三ノ丸は御殿が建っていたようですが、明治になって山田 脩によって製糸工場が建てられて改変があり、御殿の復原は難しいという結論になったというニュースも最近ありました。山田 脩は郷土の恩人として今でも感謝されているようで、遺構の保存と今の生活との調和は難しいですね。



二本松城　三ノ丸 南面高石垣　南から
　城内で最も豪華な石垣が三ノ丸下段の南面に在りました。石垣上端部は積み直しでしょうか、石が新しそうに見えますね。土塀は近年の復元のようです。


二本松城　洗心亭　南から　
　洗心亭は城主愛用の建物で城内に残る唯一の江戸時代の建物です。一時城外に移築され後に再移築されたことにより戊辰戦争の戦火を逃れたということです。資料によると山田 脩が愛した寓居でもあり、彼は洗心亭で亡くなったとありました。


二本松城　二合田用水　南から
　図２の見晴台付近を流れる二合田用水は、遠く16km先の安達太良山山麓から引かれた用水で、城内で不足する水だけでなく、付近の田を潤し城下町の用水としても利用されていたとされ、ガイドさんの説明では雪解けの頃にはあふれんばかりの水量になるとのことでした。見晴台からは安達太良山を見ることも出来ました。


二本松城　搦手門　北から
　搦手門は裏門ともいわれます。今は石垣の門と門の礎石が残りますが、資料によると発掘調査で畠山氏か蒲生氏時代の掘立柱の冠木門跡も検出されたとありました。
　

二本松城　本丸 内枡形虎口　南西から　全面修築復原工事が行われた
　二本松城の本丸は城内の最高所に位置しています。近年石垣の全面修築復元工事が行われ、美しい姿の石垣を見学出来ました。奥に見えるのは東櫓台です。


二本松城　本丸  天守台　南東から　
　二本松城の本丸の天守台に天守が建つことはなかった様ですが、全面修築復元後の石垣の姿は美しく、見とれてしまいました。


二本松城　本丸 北西側法面の二段石垣　南西から
　本丸の北西斜面は急角度ですので、崩落を防ぐためでしょうか、二段の石垣が築かれていました。石垣と法面を合わせた高低差は随分ありますね。


二本松城　本丸南面下の野面積の大石垣　東から
　本丸の石垣の多くは近世のものと思われますが、この大石垣は野面積みで古く、蒲生時代の石垣の可能性がありそうです。


二本松城　本坂御殿北上の城内路　南下から
　二本松城の城内には幾本もの城内路が残されていました。写真の城内路もそのうちの１本です。古い時代の本丸方面への城内路は搦手門方面からだったと思われますが、近世になって本丸や蔵屋敷などへのアクセスにはこの城内路などが使われたのではないかと想像しました。


二本松城　本坂御殿　南東下から　建物は現代のもの
　本坂御殿は城主の居館だったと思われ、ここから三ノ丸に出向いて政務を執り行ったと想像しましたがどうでしょう。

二本松城は長い歴史の中で大きな改修を何度も受け、城域の拡大も行われたようで、個々の遺構の役割を確認するのが難しい面もありましたが、資料とガイドさんの説明などを加味して構成してみました。地元ガイドさんの戊辰戦争に対する強い思い入れを感じつつ、興味深い遺構を沢山見学出来て良かったです。