わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

Let the (Right One / Me) In

2012-09-09 | 映画・ドラマ・本
 自分が吸血鬼のような生活をしているから…でもないのですが、吸血鬼映画を続けて二本観ました。とはいえ、この二本、同じ映画にのスウェーデン版オリジナルと、そのハリウッド・リメイク版。私は普段は余りホラー映画は観ません。理由は当然、こわいから。でも、この映画に関しては、「詩的な雰囲気」とか「純粋な初恋ロマンス」がテーマで怖くないよ、って見た人が言っていたのと、公開時にえらく評判が良かったので、図書館で見つけたので借りてみたのです。実は私が見たかったのは、オリジナルのスウェーデン版(2008年制作)、「Let the Right One In(邦題:ぼくのエリ 200歳の彼女)」だったのですが、家に帰ってよく見たら、ハリウッド版(2010年)の「Let Me In(邦題:モールス)←音が出ますので、ご注意」だった。しかし、この邦題は酷いね。オリジナルの方はネタバレしてるし、ハリウッド版の方は、何の映画かわからない。もっとも、原作小説の題名が、「モールス」なのだそうですが。しかし、映画の中で、エリが200歳なんて説明なかったと思うけどなぁ…

 で、まぁ、せっかく借りてきたのでハリウッド版から見たのですが、主人公の12歳の男の子、いじめられっ子もオーウェンが出会った不思議な少女「アビー」役が、「キック・アス」のヒットガール役で強烈な印象を残した、クロエ・モレッツちゃんだったから、「私はとっても強いのよ」って台詞に、「そりゃー、あんたは銃器類の扱いも得意なら、カラテもできるヒット・ガールちゃん」なんて、自分で脳内茶々入れモードになってしまって、シリアスなお話なのに真剣味に欠ける。ヴァンパイア化したアビーの、しゃかしゃかしたゴキブリっぽい動きや、露骨なメイクも苦笑を誘うけど、分り易いお話で、それなりに楽しめました。クロエちゃん、可愛いしね。ちなみに「モールス」は、アパートの隣同士に住むオーウェンとアビーが、壁越しにモールス信号を使って会話することから。このモールス信号の部分は、ラストで生かされていましたが、題名にするほどの重要性は感じられなかった…というのも、二人のモールス信号での会話の内容が、観客には伝えられなかったからだと思うんだけど。

 で、やっぱ元々見たかった、評価の高いスウェーデン版も見たくなって、こんどこそ、こちらを図書館で借りる。どっちにしても、図書館でタダで借りられるというのがミソね。先に、ハリウッド版を見ておいて良かったのは、ストーリーが予め判っているから、ずーっと字幕を追わなくても物語についていけるので、たっぷり雰囲気を楽しめたところ。同じくスウェーデン版が評判よくてハリウッドでリメイクになった「ドラゴン・タトゥーの女」は、最初にスウェーデン語+字幕で見て混乱したんだけど、ハリウッド版でやっっとストーリーが理解できたから。

 白い雪の中にぽつんと立つ鮮やかな赤い家、白樺の森、いかにも北欧~!な景色や、ウィズミカルなBGMと、雰囲気のいい映画です。ハリウッド版では、どよ~んと寒そうな雰囲気だったのが、スウェーデンはキーン!と、切れそうな空気の冷たさを感じました。光を表す主人公のオスカーは、金髪で透き通るように白い肌に青い目、一方、闇に生きるヴァンパイヤのエリは、黒髪で大きな黒い瞳が闇を見透かすよう。この点が、ハリウッド版では逆で、オーウェンが黒髪の、なんかドンヨリした男の子、アビーは金髪碧眼の女の子なんですよね。他の違いは、スウェーデン版では、エリの去勢跡のある股間が映される場面があります。ここんとこ、日本じゃ映倫に引っかかってボカシだったそうですが、結構、映画の鍵となる重要な場面だと思うんですけどね。別に毛が生えてるわけでも、性器が映ってるわけでもないのに(だって無いんだもん)、別に有耶無耶にせんでも…と、思った。

 これで、ハリウッド版でアビーが「I'm not a girl.(私、女の子じゃないの)」と何度も言っていた意味に繋がるのですが、クロエちゃんは、エリを演じたリーナ・レアンデション嬢のように中性的じゃないし、当然ながらハリウッド版にようぢょの股間は御法度なので、こちらの方は「実は私、少女じゃなくて200歳の老婆なの」って意味なんかしら(ちょっとイヤ)

 ハリウッド版は、苛めっ子の仕打ちが一層陰湿かつ凄惨で、クライマックスのプールでオスカー(オーウェン)を溺れさせようとする苛めっ子主犯の兄の首が水中を漂ようが、苛めっ子達が血の海で倒れていようとも、当然の報いを受けたんじゃない?って気になったけど、スウェーデン版は、兄貴以外の苛めっ子達まで可愛くて、そこまでしなくとも…って気になりました。

 と、言うわけで、最初にいきなり事故場面を持ってきたり、アビーの採血係のおっさんが犠牲者となる青年を車内に隠れて襲う場面等、メリハリの効いた構成と、この事件を嗅ぎまわるのが単なる近所の親父じゃなくて刑事という設定の、ハリウッド版のほうが私には面白かったのですが(頭がハリウッドに侵されているのかも?)、アビー役に既にスターのクロエ・モレッツを持ってきたのは、ヴァンパイア少女のミステリアスさにそぐわず、ちょっと失敗だったようにも思えます。クロエちゃん、とっても健康そうで、あんまり儚げじゃないしさー。


英語版Wikipediaからもらってきた比較写真


左がエリ、右がアビー

 ラストシーンは、スウェーデン版に入っていた監督の談話だと、「ハッピーエンド」なのだそうですが、オスカー(オーウェン)は、12歳のままのエリ(アビー)に生き血を提供するために、各地を転々としながら人殺しをして老いていくのかと思えば、全然ハッピーエンドじゃない。萩尾望都さんの漫画だったら、ここで(その名も)オスカーも吸血鬼になって、連れて行かれちゃうけど、それじゃ二人で、闇に紛れてヨーロッパ殺人稼業になっちゃうもんね。EU中、指名手配されそう。今時は、吸血鬼にとっても生きにくい時代になったものだ。

 ところで、昼間でも全く平気、超人的なパワーと美貌で、別に人間の血を飲まなくても大丈夫だよっ!な、ご都合主義「なんちゃってヴァンパイア」や、デミ・ヴァンパイヤが流行る昨今、ちゃんと、入っていいよって言われなきゃ他人の家には入れなくて、人間の生き血を飲まなきゃ生きていけなくて、太陽の光を浴びると燃えて灰になっちゃう、弱点を持った「正しい」ヴァンパイアも、なかなかに新鮮でした。やっぱ、ヴァンパイアはこうであって欲しいのだ。



あと、自分の意志で何時でも狼になれる狼男とかねー
いくらラノベでも、ちょっと都合良すぎっだろ

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