なにげな言葉

なにげない言葉を あなたに伝えたい
迷宮・緑柱玉の世界の独り言

映画みたい!?

2012-06-05 | なにげな言葉
私の付けている時計を見て、取引先の専務が一言

「それ、男物だろ!」
「そうですよ。」
「何故、男物しているんだ?」
「いただきました。」



その声を聞いていた事務員が寄ってきた。
「紳士物いただいたんですか?」
「預かったと私は認識しているんですけどね。」

するとそこに、社長が
「何だか、意味ありげな時計だな!」
「そんなことありませんよ。」

すると事務員
「預かるって、プレゼントではないですよね
 普通、プレゼントされるって付けているのは見ます。」


皆の好奇心が、腕時計に・・・
私は、腕時計を着物の袖で隠した。

すると専務
「かなり使いこんでいるみたいだね。」
私はその時、答えてしまった
「学生時代からだと聞いています。」
答えてしまったと思ったけれど、もう遅い

好奇心という種火に油注いだのは、私でした。

「ご主人の時計ですか?」
と直ぐ聞いてきたのは、事務員
私は一瞬躊躇ったんです

「そう、主人のです。」
間違いないと言えば間違いない。
私が主人と思っていれば問題ないわけです。

「ご主人の学生時代の時計かぁ。年代物だね。」
「大切な思い出の時計だそうです。」
「だから、預かっているのか?」
「思いはいろいろあると思いますが、今は、私の手元にあります。」


そんな会話を社長としていると
違う女子社員が近寄ってきて
「ご主人の時計だから何時も付けているんですか?
 私以前から、気になっていたんですよ。
 会議中とか、待機中に時計の硝子を拭く仕草がいいなぁって思ってました。」
「え?」


確かにスーツでも着物でも使える。
使えない時は、鞄の中に入れていた。
見られてたのね。

「聞かせてくださいよ!
 その時計の経緯!」


若い女子社員のストレートな質問に、其処にいた社員の人の目の色が変わった。

「特別なん何かはないです。
 ベルト交換頼まれて、お返ししたら、持っててと言われた。
 それだけのことですよ。」


「でも、学生時代からの時計って事はお話ししてくださっていたんでしょ?
 大切だから、使っていたんですよね。」

その問いに、違う男性社員が
「俺も高校時代の時計取ってありますけど、使おうとは思わないなぁ。」
「僕は、どこか行っちゃったなぁ。」
「俺、使ってますよ!」

と、若い男性社員が腕を見せた。

「その時計、彼女に渡す?」
若い女子社員が言った。
「渡さないよ。彼女、絶対使わないし、無くしちゃうよ!」

私は、そんな会話を聞きながら考えた。
何故、私に時計くれたんだろう。
思い出の時計
ずっと大切にしていたことが、はっきりしている時計
だからあの時、貰えない
預かるだけ。
さよならする時には、返すからね
預かるだけだからね。と言ったのを覚えている。

あれから、何回か、電池交換した。
電池交換しても動かなくなっちゃって、修理してほしいと持っていったら
長期使用しているようなので、分解掃除しなきゃいけないって言われた。
まぁ、迷わずに、「お願いします!」と言ったのは、言うまでもない。
掃除と摩耗した部品を交換してもらい、再び動き出した時には、嬉しかったなぁ

互いにどんな思いがあるかなんて、分からない。
渡す方、渡された方
プレゼントは、選んでいる時が楽しいという。
貰って嬉しくて、肌身離さずってプレゼントは、確かに珍しい
思いが交差しているか、擦れ違っているかは、分からない
でも確かに、これはうれしいプレゼントだった。
そんな風に思っていると、知らず知らずに、時計の音を聞いたり、指で触れたりしているらしい

「ほら、音聞いてるでしょ!」

その声に、私の方を皆が見た。
「大切な時計だからね。」
隠す必要もないし、正直に言った。
「何時も一緒の感じでしょ!」

乙女チックかもしれないけれど、正直な気持ち
離れているから、何か一緒の物
そんな心があるのかもしれないなぁと思った

すると、
「素敵!何だか、映画で見た風景だ!」
と誰かが言った。
「目覚めた彼女の腕に腕時計が残っていて、目覚めた彼女は、大切そうにその時計を眺めるんだよ。
 ただ、それだけのワンシーンなんだけど、良いなぁって思った事思い出しましたよ。」

と、事務員が言った。
「私も似た様なの知っている。
 目覚めた時、僕が来ていたこと分かるよプに付けていったんだよ!という男のセリフ。
 言われてみたいなぁ。なんて思ってました。」

と、若い女子社員。

「時計を彼女の腕にしていくのか?」
と専務。
「そうですよ。彼女の所に自分の何かを遺して行くんです。」
「気障というか、そんなことできるか?」

と、社長
「専務も社長も出来ないなぁって顔してますよね
 だから、だめなんですよ。
 女はしてほしいんですよ。」

と、女子社員

「こいつの主人は海外だからな、気障なんだよ!」

主人違いだけど、此処では否定しない。
確かに一緒の時を刻んでいる気がするからね
映画みたいかぁ
映画みたいに、素敵じゃないよ
でも、素敵な演出ではある
指輪が繋がりの象徴のようになっている分
違う何かがあるというのは、それはそれで素敵な気がする

「僕がしていた時計。持ってて!」


やっぱり、映画みたい?!
貰った時のことを忘れかけていて、改めて手にしてキュンとした。
そうなんだよね
日常にだって素晴らしい一場面があるんだよ
でも、流れていっちゃうから、気にも留めない

映画みたいな恋

してみたいんじゃなくて、映画みたいな恋をしているんだよね
思い出させてくれたみんなに感謝
そして皆、映画の様な恋を憧れていることも分かった
皆が主役なんだよ


今日も私の腕に・・・


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