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2020年11月7日   田中 宇 アメリカの大統領選挙の、行く末予測。

2020-11-09 19:27:47 | 初心者のブログ作成
2020年11月7日   田中 宇
揉めている米大統領選挙に関し、マスコミ軽信者が多い日本などでは「トランプとその支持者は、民主党が広範な選挙不正をしたというウソを言って、敗北が決定的なのに負けを認めようとしない」という見方が席巻している。だが、私が見るところ、民主党が広範な選挙不正をした可能性は十分にある。そして、米国の選挙制度を見ていくと、トランプと共和党が民主党の選挙不正を指摘し続け、自分の勝ちを主張し続けて敗北を認めずに頑張っていると、たとえ「民主党の選挙不正」がマスコミや権威筋も認める公式な話にならなくても、選挙制度に沿って、合憲的に、トランプが勝っていく道筋があることがわかる。それは、大統領選挙で勝者を確定できず揉めた場合にどうするかを決めた合衆国憲法の修正12条に依拠した道筋だ。 (Donald Trump's Stealthy Road to Victory) (米民主党の選挙不正)
修正12条で今回使われそうな要点は2つある。一つは、どこかの州で共和党と民主党が別々に選出証書を作ってワシントンDCに送ってきた場合、どちらが正当かを決めるのは連邦議会上院の議長、つまりペンス副大統領だということ。もう一つの要点は、トランプとバイデンの両方が270人分=過半数の選挙人数に達しなかった場合、どちらが勝ったかを決めるのは、通常と異なる「1州1票」の方式に基づいた連邦議会下院だということ。連邦下院は、通常の「1議員1票」の方式なら民主党が多数(下院選挙が今の趨勢のまま民主党が多数を維持した場合)だが、1州1票方式だと共和党が多数になる。どちらの要点を経由しても、修正12条という名の裏街道はトランプの選出に行きつく。米大統領選の制度は複雑難解なので、これだけではわかりにくい。以下、私なりに説明していく。 (Twelfth Amendment to the United States Constitution)
合衆国憲法は、大統領選挙に関して、有権者1人1票の一般投票を定めていない。米憲法に基づく「選挙人制度」の本質は、各州が投票するかたちで大統領を決めることだ。各州の規模などに応じて大統領を選ぶ際の発言力に差をつける意味で「〇〇州は〇人」といった「選挙人」の制度がとられている。米国は連邦制の「合州国」であり、各州の意思が連邦の運営を決める。各州の意思を決めるのは州議会と知事(州政府)だが、州の議員と知事を選挙で選ぶのは州の有権者なので、その点で間接民主制だ。憲法上、各州は、どのような方法で選挙人団を選んでも良い。19世紀には、州議会が選挙人団を選出する州がいくつもあった。それをさらに民主的にするという意味で、憲法はそのままで、今はすべての州が州民の一般投票で選挙人団を決める方法を採用している。米最高裁は、各州が勝手に大統領選の一般投票をやめても良い(合憲だ)と判決している。 (How Donald Trump Could Steal the Election)
大統領選の一般投票の対象は「大統領候補」でなく「自分の州の選挙人団候補」だ。大統領候補の数だけ選挙人団候補がある。最多数の票を取った選挙人団候補が正式な選挙人団になり、選挙人集会を開いて州としての正副大統領を選出し、州知事の承認のもと、その議事録を選出証書としてワシントンDCの連邦議会に送る(勝者総取り方式を採用する全米48州の場合。今回の選挙で揉めている諸州はすべてこの方式。残りの2州は比例配分的な方式)。連邦議会は1月6日ごろに「連邦議会両院合同会議」を開き、そこで各州から送られてきた選出証書を集計し、正副大統領を選出する。揉めない大統領選の年には、投票日の翌日ぐらいに確定した当選者がそのまま選出され、この手続きのすべてが儀礼的なものになる。
しかし、今年は違う。トランプと支持者たちは「民主党がひどい選挙不正をやった」「本当は勝ったのに」と言い続けている。軍産マスコミ権威筋とその軽信者たちは、トランプ敵視もしくは民主党寄りなので、選挙不正は今のところ陰謀論扱いされている。だが、トランプ側が今の態度を続けると、少なくとも共和党全体として「本当は勝ったのに民主党がひどい選挙不正をした」という主張が強くなる。この状態で、選挙人制度の手続きが行われていくとどうなるか。 (Trump’s Endless Lawsuits Could Theoretically Help Win Him Election If This Turns into a Bush v. Gore Situation)
今回の選挙で、開票の途中で優勢がトランプからバイデンに替わり、それが民主党の偽造票紛れ込ませの不正のせいだと疑われているアリゾナ、ウィスコンシン、ミネソタ、ペンシルバニアの各州(選挙人が4州合計で57)は、いずれも州の議会上下院の多数派と知事がすべて共和党だ。州を共和党が握っている。これらの州では、州として「選挙不正がなかったらトランプの勝ちだった」とか「民主党が選挙不正を行い、偽造票と正規票を見分けられず不正がない状態を判定できないので、一般投票は無効にせざるを得ない」と判断し、トランプの選挙人団に選挙人集会を開かせ、州知事の署名も添えて選出証書を連邦議会に送りそうだ。当然、民主党側は「冗談じゃない。勝ったのはバイデンだ」と言い、バイデンの選挙人団も同じ日に選挙人集会を開き、州知事の署名なしで選出証書を連邦議会に送るだろう。 (These Are The Nightmare Scenarios For The 2020 Election)
事態は、修正12条の、複数の選出証書が送られてきた場合に該当していく。そして1月6日の連邦議会の両院合同会議で、4州から送られてきた2つずつの選出証書のどちらをとるかを議論して揉めた後、最終的に、憲法の解釈にのっとり、上院議長であるペンス副大統領が、4州のトランプ選挙人団の方を正当だと決定し、トランプが当選者になる。米憲法の修正12条には上院議長が決めると明記されていないものの、各州からの選出証書の開封と集計は上院議長が行うと定めており、開封と集計の際の各種の判断が上院議長に委ねられていると解釈できる。これと同じ事態は、1960年のケネディ対ニクソンの大統領選のハワイ州で起きている(当時の副大統領だったニクソンは両院合同会議で、ハワイ州における自らの敗北を認める形でケネディを勝たせた)。 (1960 United States presidential election in Hawaii)
現時点でネバダ、ペンシルバニア、ノースカロライナ、ジョージアの4州でまだ勝敗が確定していない。このまま両候補とも270人に達しないまま12月8日の選出証書の提出期限が過ぎ、その状態で1月6日の両院合同会議になると、過半数に達した候補がいない状態になり、修正12条の解釈に沿って、連邦議会下院での1州1票制の投票で大統領が決められる。1州1票制で計算すると現在、全米50州のうち26州が共和党優勢、22州が民主党優勢になり、トランプが勝つ。トランプは今年9月に、このパターンになって自分が再選される可能性があると支持者集会で語っており、裏街道の存在を把握している。トランプは再選後、今回の民主党の選挙不正を捜査検挙するだろう。 (Keep Your Faith – Trump Already Won)
私が今回これらの裏街道の存在を知ったのは、米ハーバード大学の権威あるグレアム・アリソン元国防次官補がナショナルインテレストに書いた記事を見たからだ。「裏街道」という言い方も、アリソンの記事の題名「Stealthy Road」からもらった。「裏道」だと不正の意味が入る。これは立派な合憲なので「裏街道」にした。アリソンは、裏街道が現実になる可能性が今のところ20%しかないとも書いている。だが、彼は民主党のエスタブであり、裏街道が現実化してトランプが続投する可能性が高い、とは口が裂けても言えない。私には、裏街道になる可能性が現時点で40%ぐらいに見える。その確率は今後、時間がたつほど増えていく。裏街道が現実になると、民主党左派は激怒して全米で延々と暴動を起こす。マスコミも怒号だらけになる。しかし合憲なので止められない。米国が大混乱する中でトランプが続投する。 (Donald Trump's Stealthy Road to Victory) (投票後に政権転覆・カラー革命の試みに転換する米大統領選)
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