「塔と水路がある町」と呼ばれるM町のはずれ、「水無月橋」で見つかった死体。
1年前に失踪したはずの男は、なぜここで殺されたのか?
不思議な街を舞台に、謎の失踪を遂げた一見平凡な人物の彼を追って街に現れた『よそ者』の正体はと?推理小説風ではあるが「推理小説」を読んでるんだという思い込みを捨てて読む必要があると思う。
今日と昨日を隔絶するある大掛かりな出来事。水無月橋殺人事件と呼ばれるその事件には、数々の謎があった。
中でも一番大きな謎は、偽名を名乗って生活していたその被害者が、ある晩上司の送別会から忽然と姿を消し、一年あまりもこの町で暮らしていたという事実だった。
彼は何を考え、何を思って暮らしていたのか?
東京からこの町に来なければならなかった理由とは何か?
『全てのものを記憶し、あらゆる方向から物体を把握できてしまうという特殊能力』を持っていたという市川吾郎の謎を追いつつ、物語は、その町に住む人々の思いや町そのものの謎を明らかにしてゆく。
「あなた」という二人称で書かれる人物が、市川吾郎の殺人事件を追うという形式をとってはいるが、殺人事件に絡む人々を描き出すうちに、実は「あなた」が誰かや町の秘密もやがて明らかになってゆく。
失踪・殺人事件の中に織り込まれた数々の民俗学的な記号が暗示する封印された土地の記憶。
ストーリーが進むにつれて、様々な登場人物が発する言葉や体験する出来事が、すれ違い、記憶の中で重なり、響き合うことで、何かとてつもない秘密が、世界の闇のようなものが、隠されているのではないかという疑問が、次第に予感から確信に変わっていく不思議な感覚・・・パラレルワールド。
このどうしようもない不安感と不安定さがまったく関連性のないような一つ一つを拾いパズルが完成したとき明らかになる違う新しい世界を見ることになる。
こらはホラーなのかファンタジーなのか、SFなのか?ミステリーでは無いないような気がするが・・・個人的には消化不良気味の後味でした。
『人間を人間たらしめるのは、遠い過去からの記憶の蓄積であり、その蓄積を認識できる精神のみである。気の遠くなるような無数の過去によって、世界は成り立っているのだ。』(P471) 2008年9月 講談社刊
1年前に失踪したはずの男は、なぜここで殺されたのか?
不思議な街を舞台に、謎の失踪を遂げた一見平凡な人物の彼を追って街に現れた『よそ者』の正体はと?推理小説風ではあるが「推理小説」を読んでるんだという思い込みを捨てて読む必要があると思う。
今日と昨日を隔絶するある大掛かりな出来事。水無月橋殺人事件と呼ばれるその事件には、数々の謎があった。
中でも一番大きな謎は、偽名を名乗って生活していたその被害者が、ある晩上司の送別会から忽然と姿を消し、一年あまりもこの町で暮らしていたという事実だった。
彼は何を考え、何を思って暮らしていたのか?
東京からこの町に来なければならなかった理由とは何か?
『全てのものを記憶し、あらゆる方向から物体を把握できてしまうという特殊能力』を持っていたという市川吾郎の謎を追いつつ、物語は、その町に住む人々の思いや町そのものの謎を明らかにしてゆく。
「あなた」という二人称で書かれる人物が、市川吾郎の殺人事件を追うという形式をとってはいるが、殺人事件に絡む人々を描き出すうちに、実は「あなた」が誰かや町の秘密もやがて明らかになってゆく。
失踪・殺人事件の中に織り込まれた数々の民俗学的な記号が暗示する封印された土地の記憶。
ストーリーが進むにつれて、様々な登場人物が発する言葉や体験する出来事が、すれ違い、記憶の中で重なり、響き合うことで、何かとてつもない秘密が、世界の闇のようなものが、隠されているのではないかという疑問が、次第に予感から確信に変わっていく不思議な感覚・・・パラレルワールド。
このどうしようもない不安感と不安定さがまったく関連性のないような一つ一つを拾いパズルが完成したとき明らかになる違う新しい世界を見ることになる。
こらはホラーなのかファンタジーなのか、SFなのか?ミステリーでは無いないような気がするが・・・個人的には消化不良気味の後味でした。
『人間を人間たらしめるのは、遠い過去からの記憶の蓄積であり、その蓄積を認識できる精神のみである。気の遠くなるような無数の過去によって、世界は成り立っているのだ。』(P471) 2008年9月 講談社刊