読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

恩田陸著「きのうの世界」 another yesterday

2009-06-25 | 山本甲士・恩田陸
「塔と水路がある町」と呼ばれるM町のはずれ、「水無月橋」で見つかった死体。
1年前に失踪したはずの男は、なぜここで殺されたのか?
不思議な街を舞台に、謎の失踪を遂げた一見平凡な人物の彼を追って街に現れた『よそ者』の正体はと?推理小説風ではあるが「推理小説」を読んでるんだという思い込みを捨てて読む必要があると思う。
今日と昨日を隔絶するある大掛かりな出来事。水無月橋殺人事件と呼ばれるその事件には、数々の謎があった。
中でも一番大きな謎は、偽名を名乗って生活していたその被害者が、ある晩上司の送別会から忽然と姿を消し、一年あまりもこの町で暮らしていたという事実だった。
彼は何を考え、何を思って暮らしていたのか? 
東京からこの町に来なければならなかった理由とは何か?
『全てのものを記憶し、あらゆる方向から物体を把握できてしまうという特殊能力』を持っていたという市川吾郎の謎を追いつつ、物語は、その町に住む人々の思いや町そのものの謎を明らかにしてゆく。
「あなた」という二人称で書かれる人物が、市川吾郎の殺人事件を追うという形式をとってはいるが、殺人事件に絡む人々を描き出すうちに、実は「あなた」が誰かや町の秘密もやがて明らかになってゆく。
失踪・殺人事件の中に織り込まれた数々の民俗学的な記号が暗示する封印された土地の記憶。
ストーリーが進むにつれて、様々な登場人物が発する言葉や体験する出来事が、すれ違い、記憶の中で重なり、響き合うことで、何かとてつもない秘密が、世界の闇のようなものが、隠されているのではないかという疑問が、次第に予感から確信に変わっていく不思議な感覚・・・パラレルワールド。 
このどうしようもない不安感と不安定さがまったく関連性のないような一つ一つを拾いパズルが完成したとき明らかになる違う新しい世界を見ることになる。
こらはホラーなのかファンタジーなのか、SFなのか?ミステリーでは無いないような気がするが・・・個人的には消化不良気味の後味でした。
『人間を人間たらしめるのは、遠い過去からの記憶の蓄積であり、その蓄積を認識できる精神のみである。気の遠くなるような無数の過去によって、世界は成り立っているのだ。』(P471)  2008年9月 講談社刊
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恩田 陸 著「ドミノ 」

2009-03-01 | 山本甲士・恩田陸
群像ドタバタコミック小説。登場人物がやたら多く散漫。
東京駅構内を舞台にドミノ倒しのように一つの出来事アクションが次の
アクションを生み次々に連鎖していく様子を描いているのだが設定のリアルさが
不足しているし、風刺の笑いも少ない。
2001 年 角川書店 刊

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恩田 陸 著「チョコレートコスモス」

2009-02-25 | 山本甲士・恩田陸
表題の花はコスモスに似た花で、花色はチョコレート色、そして香りまでが
チョコレートに似た甘いバニラ臭がするユニークな多年草のキク科の植物だそうです。
著者は「コスモス」と言う言葉の意味に「舞台」や「女だけの血でできた宇宙」と表している。
演劇界の裏側、オーデション現場を描いて「芝居」や演技における可能性や
どう演じるのだろうかといった推理小説的面白さもあるが演劇を見たり興味のない人にはわかりにくいかもしれない。
若きベテラン俳優・東響子は、奇妙な焦りと予感に揺れていた。
伝説の映画プロデューサー・芹澤泰次郎が芝居を手がける。
近々大々的なオーディションが行われるらしい。
そんな噂を耳にしたからだった。
同じ頃、旗揚げもしていない無名の学生劇団に、ひとりの少女が入団した。
舞台経験などひとつもない彼女だったが、その天才的な演技は、次第に周囲を
圧倒してゆく演じる者だけが見ることのできるおそるべき世界のバトル。

2006 年 毎日新聞社 刊
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恩田 陸 著「夏の名残の薔薇」

2008-12-14 | 山本甲士・恩田陸
晩秋の有る時期、国立公園内の山頂にあるグランドホテルで、沢渡家の三姉妹の
貸しきったこのホテルで招待客の中で起きたある「事件」のミステリー。
山奥のクラシック・ホテルで毎年秋に開催する、豪華なパーティ。
参加者は、姉妹の甥の嫁の美貌の桜子や、次女の娘で女優の瑞穂など、華やかだが何かと噂のある人物ばかり。
不穏な雰囲気のなか、関係者の変死事件が起きるが・・・。
19世紀の同名のクラシック曲に因み第一変奏から第6変奏までに分れており
章がかわるごとに同じテーマが繰り返されつつ、どんどん変って微妙に
変化していく形式の手法が使われた推理小説です。
『夜のピクニック』のような作風に惹かれてこの本を読もうとするとガッカリするだろう。
『登場人物中に「特例」を認められる者がいなくなることによる、
「特例」を利用した詐術の数々を排除する目的と、登場人物と距離感を取る為に
「三人称多視点」の形式で物語が語られる作者の多用している方法』が
この作品にも使われていると解説に有るが難解な納得性のない終わり方に「???」一杯。
2004年 文藝春秋刊  文春文庫


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山本甲士著「あたり 魚信」

2008-09-12 | 山本甲士・恩田陸
「巻き込まれ型」小説で有名な著者の魚釣り連作短編。
「おいかわ」「らいぎょ」「うなぎ」「あゆ」「たなご」「まぶな」
ふと手にした釣竿。
釣りの面白さにハマった主人公たちに起きた奇跡。
釣りを通しての人々の心の交流を描いた作品です。
物語のモデルになったこの地方にはことわざに『奇跡を信じたければ、釣りをするがいい』という言い伝えが残っていました。
しかし今はそれを知る人も少なくなってしまいました。
いずれの章でも、様々な理由から思いがけず釣りをすることになった
主人公たちが、その面白さに目覚めると同時に、生きることに希望を持ち、
人とのふれあいの大切さを再認識するといった心が少しほんわかとする
物語ばかりです。
そして言い伝えは本当だったのか興味が湧きます。
釣り好きの人は勿論、今まで釣りをしたことがない私でも、一度位
釣りをしたくなる気にさせる本でした。
2008年6月 文藝春秋 刊
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恩田陸著「 中庭の出来事」

2008-05-30 | 山本甲士・恩田陸
2007年 第20回 山本周五郎賞受賞作
謎が謎を呼ぶ物語。「まず読者が解くべきは、小説内で何が起こっているのか?」(解説より)
瀟洒なホテルの中庭。こぢんまりとしたティー・パーティの席上で、気鋭の脚本家が不可解な死を遂げた。
周りにいたのは、次の芝居のヒロイン候補たち。
自殺なのか他殺なのか? 犯人は誰? それとも、これもお芝居?互いに交錯し、繰り返し行なわれるスレ違う場面。
芝居とミステリーが融合した、謎が謎を呼ぶおはなし。
「どういうこと?」と思って、ページを戻り読み返す。読み進めていくうちに、だんだんと不安になっていきます。
まるで何がなんだ頭がくらくら、一瞬自分がここがどこかわからなくなる、
ストーリーが細切れにされていて、複雑なパズルのようそんな足元のおぼつかない頼りなさ、
それこそがこの作品の魅力なのか「劇中劇」がこの小説の最大の仕掛けであり面白さと解説されているが・・・
何とか我慢で読んだけど・・・
最後までさっぱり理解不能でもう一度読み直すべきなんだろうが・・・
今のところそんな意欲湧かない。
2006年11月 新潮社刊 1785円
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山本甲士 著「どろ」

2008-04-14 | 山本甲士・恩田陸
市役所に勤める男、岩室とペットの葬儀屋に勤める男、手原が、
はじめは小さな誤解だったのに、お互いにはじめた嫌がらせが
どんどんエスカレートしていき、ついには 職場や家族を巻き込む
「戦争」となってしまう。
新興住宅街の隣同士の住人がはじめる「どろ」試合。
普通の二人男だがフラストレーションをかかえる毎日、
嫌な客や無能な上司に囲まれた仕事に従事し、
腹には「爆弾」を抱えていてさらに家庭のストレスなどが積み重なって、
後悔しながらも引くに引けず、どこまでもヒートアップした報復バトル
やがてそんな仕返し合戦が楽しみに変ってくる。
ストレスを多く抱える現代人
どこでも起こりそうで、ありそうなちょっぴり怖い滑稽なお話でした。

2001年中央公論新社 刊1995円  小学館文庫版650円

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山本甲士著「バット・ブラット」

2008-04-04 | 山本甲士・恩田陸
飯田優作は弟の秋葉秀作選手をオリンピックに送る夢を持っていたが、
五輪代表選考会を兼ねた北九州国際マラソンで途中接触転倒、
弟は負傷を負い退場した。
誰かが弟をおとしいれるために仕掛けられた罠と感じた飯田はライバルで
大会優勝者のエリートランナー神辺儀徳選手に復讐しようと計画を立てて準備を始める。
やがて神辺選手が刺殺された。犯人は兄の飯田なのか。
警察の捜査の手が伸びる直前に、飯田は水路に落ちて溺死した。
弟の秋葉は真相を探るためにスポーツクラブに潜入する。
元女子プロレスラー轟さくらと共に探り始めるが・・・
マラソンにまつわるミステリー
ドーピング問題や一寸設定が古い気がするが暇つぶしに楽しめる小説です。
1997年角川書店刊
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山本甲士 著「かび」

2008-03-23 | 山本甲士・恩田陸
主婦がたったひとりで大企業を窮地に追い込む!サスペンス
幼稚園に通う娘と大手の会社の研究室に勤める夫の3人家族の
専業主婦が夫のストレスと過労から来る脳梗塞で入院したことから
会社に復讐する物語。
企業城下町のその市に君臨する大企業の手口は労災申請を止めさせ
穏便にリストラを計ろうとする会社側、平凡な主婦が理不尽な対応に
遂に怒りを爆発させる。
一個人が大企業相手に闘うサスペンス小説であるが、どうしても
陰湿な非合法的手法に納得出来かねる部分があるが
しかしそのスートリー展開はハラハラドキドキで結末まで楽しめました。
2003年 小学館 刊
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山本甲士著「とげ」

2007-12-29 | 山本甲士・恩田陸
関西の地方都市、南海市市民相談室の主査「長倉晴之」が主人公。
相談室に係ってくる電話は市民からの クレーム、的外れの相談事、
理不尽な要望等々。
たらい回し、事勿れ主義の役所体質に働かない無能力の上司と
無責任で無愛想な部下の板ばさみにあいながら仕事をこなす。
家庭に帰っては共働きの公務員の妻と兄弟喧嘩の絶えない
小学生の息子達、最近家に連続の正体不明な嫌がらせ。
憂鬱な日々に キレそうになりながら唯一の楽しみは水槽に飼う
熱帯魚を見ながら飲む発泡酒。
しかし、理不尽な日々についに立ち上がる・・・。
普通の小市民が主人公の小説です。
読んでいて前半の重苦しい展開から後半のブチキレ反撃と
痛快な結末にと進むにつれやっと溜飲を下げることが出来る結末でした。

小学館刊 1700円  
☆☆☆ ☆ ☆☆☆ ☆ ☆
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山本甲士 著「ナイト 」

2007-12-20 | 山本甲士・恩田陸
仰木美沙31歳。ひとり暮らし、恋人なし。職業、探偵。
ヤクザに追われて失踪し行方不明になった従兄の子供「速人」を預かることに・・・。
それは、幼くして亡くした弟への自責の念からだった。
しかし、美沙と速人には、暴力団の執拗な脅迫と監視が待ち受けていた。
やがて、美沙の身辺にも危機が迫り、生き延びる為に暴力団に戦いを挑むのだった。
彼女の取った方法は、反社会的、小市民的モラル外の行動で一般的には
認められないが読んでいて小気味いいのは何故か?
世の中の理不尽な事が多すぎることからくる
闇の仕置き人願望のなせる業か・・・・
  2000年 角川春樹事務所 刊

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