社会派医療ミステリ。中学生の娘・沙耶香を帝都大学付属病院に見舞った警視庁捜査一課の犬養隼人は、沙耶香の友人の少年・庄野祐樹と知り合う。長い闘病生活を送っていた祐樹だったが、突如自宅療養に切り替え、退院することに。1カ月後、祐樹は急死。犬養は娘と一緒に告別式に参列するが、そこで棺桶に横たわる祐樹の遺体の身体に奇妙な痣があることに気が付く。やがて同時期に同じ痣を持った女性の自殺遺体が見つかり、本格的に捜査の許可がでて聞き込みが始まる。やがて2人共「ナチュラリー」という民間医療団体で民間療法を受けていたことが解るのだが・・・。藁をもすがる家族の心理をついた芸能人や政治家が治ったという影響力ある人の発言で広まった民間療法、ハンガリー大学卒の医師と称する主宰の謎の男「ラスプーチン」の「素顔」と、団体設立に隠された真の狙いが謎解きになっている。高額な保険無摘要薬の使用の問題点や民間療法の闇を描いた医療ミステリで読みごたえはあるのだが初めに登場する姉妹の動機に難を感じた。
2021年1月角川書店刊
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