樋口顕シリーズ。東京の荒川の河川敷で高校生の水死体が見つかった。所轄の警視庁千住署が自殺と断定したが、遺族は納得していない。高校生は生前旅行を計画しており、遺体の首筋には引っかき傷があったという。両親が司法解剖を求めたものの千住署の刑事に断られ、恫喝までされていた。本部捜査一課の樋口は別働で調べ始める。しかし、「我々の捜査にケチをつけるのか」と千住署からは猛反発を受け、本部の理事官には「手を引け」と激しく叱責されてしまう。特別な才能はなく、プライドもないが、上司や部下、そして家族を尊重する樋口顕は警察組織のルールを破ってまで、真実解明のために必死に取り組む。組織は、なんのためにあるのか?そして、上に逆らっても戦える勇気があるのか?忖度では、事態を変えることはできない。樋口顕の芯の強さに感心する。信念を曲げない点では竜崎とよく似ていると思った。
2023年3月幻冬舎刊
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