読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
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吉田修一著「永遠と横道世之介」上 

2024-02-17 | や・ら・わ行
シリーズ第3弾。2009年発表の『横道世之介』では、大学進学のために故郷長崎から上京した彼の1年間が、そして2019年続編の『続・横道世之介』(文庫化に際して『おかえり横道世之介』に改題)では、卒業後にアルバイト暮らしを送っている24歳のころの世之介が描かれました。今回の上巻では2007年9月から2008年2月までの半年間が書かれています。2007年39歳になったカメラマン・横道世之介が暮らすのは、東京郊外に建つ下宿「ドーミー吉祥寺の南」。元芸者の祖母が始めた下宿を切り盛りするあけみちゃん、最古参の元芸人の営業マン礼二さん、書店員の大福さん、大学生の谷尻くんらと「ゆるーっ」と暮らす毎日に、修学旅行に同行して記念写真を撮る仕事で知己を得た武藤先生から唐突に頼まれて引きこもりの息子一歩が入居することになって・・・。また、かつて横領罪で業界を追われた先輩と久方ぶりの再会を果たし、新たに写真の仕事を任されるようになります。下宿仲間たちと繰り広げる、温かくてしょっぱい人間ドラマです。一癖も二癖もある個性豊かな登場人物たちが世之介と触れ合いますが大きく激しく人生の方針転換を求められるというほどの波乱万丈のことは起こりません。新たな人間関係によって、ゆっくり、ほんのわずかにだけ人生が動いていく、そんなどこにでもありそうな展開です。「どんな人生だったらいいのか?」と尋ねられた世之介がこう言います。「俺だったら、こう思いたいかなー。『あー、いっぱい笑った。あー、いっぱい働いた。いっぱいサボって、そんでもって、いっぱい生きたなー』って」(P346)
「この世で一番大切なのはリラックスしていることですよ」
2023年5月毎日新聞社刊


 



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