2014年山梨県のある村にあった宗教団体コミューンで起きた大量虐殺事件。首謀したのは石黒望。彼女は幼い頃から軍事教練で鍛え洗脳してきた5人の少年少女を33人の殺人の実行役としたのだ。驚く事件に世間は震撼したが5人は年齢故に罰せられることがなかった。殺人を犯し生き残った子供は「生存者」と呼ばれ、その存在は多くの議論を呼んだ。時が経ち、生存者の一人わかばは警察に唯一逃亡していた石黒の遺体が発見されたと聞かされるが、その後何者かに自分も襲われる。共に暮らした仲間と14年目に再会するが彼らもまた被害に遭っていた。そんな過去と向き合いながら、襲い掛かる謎の刺客と対峙するサスペンス。大人になり、一般社会でひっそりと暮らしていた彼ら「生存者」の日常が突然崩されていく。SNSで身元をバラされ、次々とナイフで襲撃される。手口から相手は素人ではなさそうだ。敵は誰なのか。彼ら5人は生き残れるのか。主犯者の動機も、過去の契機も、一応書かれてはいるが納得できるものではないし、荒唐無稽な展開は不満だが、だからといって、まるで面白くないことはなくアクションミステリーゲームに引き込まれた如く、アクションシーンを想像しつつ、バイオレンスの映画の如く500頁楽しめた。後半小さなドンデン返しがセットされているが後味の爽快感は皆無。
「正義の本質とは、同質性の追求だ。正義によって染め上げられた社会では、異質なものは生き残ることは出来ない、正義を掲げる集団は、自分たちを同じ色に染めようとする。<お前は本当に正義なのか>と問い、答えられなければ排除されるだろう。すでに内ゲバがはじまっているのは、その証左だ。人は、そんなことでは結びつけない。・・・支配・被支配によってのみ、人は結び付けられるかも」(P100)
2022年8月双葉社刊
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます