読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

吉田修一著「ミス・サンシャイン」

2022-09-08 | や・ら・わ行
主人公は大学院生の岡田一心、ゼミの担当教授から紹介された昭和の大女優、和楽京子の倉庫整理のアルバイトに出掛ける。伝説の映画女優「和楽京子」こと、石田鈴さんの家に週に1、2度通って、荷物整理をするのだ。鈴さんは一心と同じ長崎出身で、かつてはハリウッドでも活躍していた銀幕のスターだった。一心は最近知り合った桃ちゃんに思いを寄せながら、鈴さんが今までどのように生きてきたか知る度に鈴さんにも惹かれてせつない恋に溺れていく。いまは静かに暮らしている鈴さんとの交流によって、大切なものに触れていく。「大女優」の一生が語られ、そこに一心の生き様、恋愛、人生がシンクロしていく展開です。黄金期の映画女優たちへの憧れのようなオマージュ、失われたもの、決して取り戻すことができないものへの哀悼を感じながら読みました。たんたんと展開される物語を読み進むうち被爆者でもある鈴さんの哀しみが深く伝わり、著者の原爆や故郷への思いも感じました。
「こんないい女優をちゃんと使いこなせなくなった映画が悪いのよ。」(P144)
「いい映画の脚本にはさ、誰かの失敗した人生が書かれてあったのよ。必死に生きて、失敗した人の人生」「人ってね、失敗した人から何かを学ぶのよ。決して成功した人からじゃない。試しに世の成功した人たちに聞いてみればいいわ。あんたたちはどちらで人生を学びましたかって。何かを得た人の言葉と、何かを失った人の言葉だったら、どっちを信じますかって。きっとみんな、何かを失った人から人生を学んだって答えるはずよ」(P172)
「恋心というのは嫌われたくないと思う気持ちであると。そして愛するというのは嫌われてもいいと思う気持ちじゃないだろうかと。」(P238)
2022年1月文藝春秋社刊


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 東野圭吾著「ブラックショー... | トップ | 東野圭吾著「危険なビーナス」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

や・ら・わ行」カテゴリの最新記事