アニメ『Ghost in the Shell 攻殻機動隊』シリーズをハリウッドが独自に再構成し実写化した映画『Ghost in the Shell』があまりにもアレで、その口直しを兼ねて劇場アニメ『夜は短し歩けよ乙女』を見た。
2016年は『聲(こえ)の形』『君の名は。』『この世界の片隅で』など、劇場アニメの良作が次々と公開されて話題になった年だったが、『夜は短し歩けよ乙女』は続く2017年に劇場公開されるアニメ作品のうちの期待の1本と目された作品だが、実は私は直前まで見る予定ではなかった。監督の湯浅政明はアニメ『四畳半神話体系』でその独自の世界観が絶賛された人だというが、私はその『四畳半神話体系』を見てなかったし、昭和初期の日本が舞台らしい『夜は~』の予告編にもあまり興味が湧かなかったから。
なので、てっきり「『夜は~』は俺の湯浅政明デビューだな」と思ってたら、何と湯浅はアニメ『ピンポン』も監督してたことを、これを書く直前に知った。あ~何だ俺、もう『ピンポン』で湯浅ワールドの洗礼を受けてたんじゃん。
で、あんまり気乗りのしないまま見てしまった『夜は短し歩けよ乙女』だが、湯浅マジックにやられて、『Ghost in the Shell』を見た時の「コレじゃない感」など跡形もなく吹っ飛んでしまいましたとさ。
公式HPによれば、『夜は短し歩けよ乙女』は第20回山本周五郎賞と2007年本屋大賞第2位に輝いた森見登美彦の原作をアニメ化したものらしいが、私は山本周五郎賞受賞作も本屋大賞受賞作も読んだことがないので知ら~ん。そもそも、「○○賞を取ったらしいから読んでみよう」なんて本の選び方をしないもんで。ただアニメは掛け値なしに面白かった。
2016年の劇場アニメが精緻な取材が作り出す重厚な物語世界や実写以上に実写的な描写で評価されたとするなら、『夜は~』は物語といっても、「黒髪の乙女」に一目惚れした「先輩」が彼女のハートを射止めるべく涙ぐましい奮闘を繰り広げる、というだけの話だし、絵はもう徹底的に省略された「塗り絵」みたいな感じだし、別にどこかに伏線が張り巡らされているわけでもなく、徹底的にバカバカしい、ただただテンポと軽さだけが信条みたいな作品だ。だけど、昭和初期の京都の学生たちが繰り広げるドタバタ純情物語に、そのテンポと軽さが実に心地いいのである。
「黒髪の乙女」(CV:花澤香菜)はおしとやかな令嬢などではなく、とてつもない酒豪でしかもノリがいいから、酒場ではどこに行っても可愛がられ大人気。その彼女を追いかける「先輩」を演じるのが、もうミュージシャンだか俳優だか声優だかよくわからない、「星野源」自体が今やブランドと化している星野源。その一途さと一生懸命さは、プロの声優陣の中に入っても違和感がない(彼の他にも、いわゆる声優じゃない人もたくさん出ているが)。
とにかく四の五の考えず、湯浅政明のテンポとリズムに身を任せれば極上の時間を過ごせる。要するに私的には「人生は短い。『Ghost in the Shell』は見なくていいが、『夜は短し歩けよ乙女』は見ろ」と声を大にして言いたいのだった。
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