深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

殺人に至る病

2010-09-03 00:35:13 | 趣味人的レビュー

この間やっと、奈須きのこの同名の原作をアニメ化した『空(から)の境界』の第7章「殺人考察(後)」を見ることができた。

Wikipediaによると、この『空の境界』は奈須きのこがweb小説として発表したものが最初で、その後、講談社ノベルスに模した体裁で同人誌として刊行されたが、それが当の講談社の編集者の目にとまり、講談社ノベルスから全2巻の形で出版された。その時、通常版と合わせて出された5000部限定の愛蔵版は、予約開始から2時間で完売したという。現在は、同じ講談社から全3巻の文庫版も出ている。

──万物には全て綻(ほころ)びがある。その綻びを「死の線」と呼び、その綻びを見ることのできる目を「直死の魔眼」と呼ぶ。この『空の境界』は、その目に万物の綻びが見える少女、両儀式(りょうぎ しき)を巡る物語である。

2008年に発表された「未来福音」──これは現在のところ書籍化される予定はない──を除いて『空の境界』は全7章から成るが、この7つの章は時系列の順に並んではいない。時系列順に並べ直したものがWikipediaに出ているが、例えば第1章「俯瞰風景」は、時系列的には第2章「殺人考察(前)」、第3章「痛覚残留」、第4章「伽藍の洞」より後の話だ。だから、この小説を初めて読む人や(全7章を1章ずつ映画化した)アニメを初めて見る人は、何の予備知識もないまま、いきなり物語の中盤に放り出されることになる。そして何もわからないまま登場人物たちと行動をともにするのだ。

こういう、細かい設定や世界観を明らかにしないまま読者や観客を物語世界の中に放り出す、という手法はストーリーテリングのテクニックとしてしばしば使われるもので、例えば『新世紀エヴァンゲリオン』などは、まさにその集大成と言っていい。つまりストーリーの展開そのものが重要な仕掛けになっているのだ。だから、これから『空の境界』を読んで/見てみようという人は、(私がそうだったように)ほとんど何の予備知識も持たずに作者の仕掛けに乗っていくのが一番いい。だから、この後に述べるようなことは端的に言えば「余計なこと」に他ならない。

ただ「余計なこと」ついでに一言述べれば、この『空の境界』の英語のタイトルは『The Garden of Sinners』つまり「罪人たちの園」という。その名の通り、『空の境界』の主要な登場人物たちは皆、人殺しやそれに関わっている者たちばかりだ。それもただの人殺しではない。殺人嗜好症、猟奇的殺人、快楽殺人鬼──死に近づきすぎて、死と同化してしまったような者たちばかりが登場する物語なので、ここまで書いておいて何だが、一応注意しておこう。

「よい子はこういうものに手を出してはいけない



では、ここから『空の境界』に接する人たちの興をそがない程度に、「余計なこと」を書いていこう。

【主な登場人物】
両儀式:この物語の主人公。3退魔家の1つ両儀家の長女。上に兄が1人いるが、父親は式に家を継がせるべく、幼い頃から武術などの英才教育を施してきた。式には識(しき)という殺人嗜好症を持ったもう1人の人格があったが、ある出来事をきっかけにして式の中から識が失われ、代わりに「直死の魔眼」を得ることになる。アニメ版で声を担当するのは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版 破』で真希波・マリ・イラストリアスを演じた坂本真綾。

黒桐幹也(こくとう みきや):式に好意を寄せる青年。式にうるさがられながらも、何かと式の世話を焼く。この物語は、高校に入る前のある日、幹也が雪の中にたたずむ式の姿を目にしたことが全ての始まりだった。意識不明の状態で入院し続ける式を、「伽藍の洞」に勤めながら見舞い続けたのも幹也だった。式は幹也のことを「フランスの詩人みたいな名前」と呼ぶが、これはジャン・コクトーのことを指していると思われる。

蒼崎燈子(あおざき とうこ):人形工房「伽藍の洞」を主宰する優れた人形師だが、同時に猟奇的な殺人事件が起こると警察関係者などから密かに調査を依頼されたり、その後の「後始末」に動く、裏の顔を持つ。実は封印指定を受けた最高位の魔術師の1人。人形師そして魔術師としての燈子の真の力は第5章「矛盾螺旋」の中で示される。式と幹也は「伽藍の洞」で燈子に雇われている。

荒耶宗蓮(あらや そうれん):燈子のロンドンの魔法学院時代の学友。「元は台密(天台密教)の僧だった」とは燈子の弁。燈子が肉体から人間の起源を追求していたのに対して荒耶は魂からのアプローチを試み、今もなお「根源の渦」を探している。この「根源の渦」とは、アカシック・レコードのようなものらしい。

黒桐鮮花(こくとう あざか):幹也の妹だが、兄に恋していて、式とは恋のライバル関係。燈子の元で魔術師としての修行中。第6章「忘却録音」では主役を務める。

浅上藤乃(あさがみ ふじの):第3章「痛覚残留」に登場。3退魔家の1つ浅神の血を引く。成績優秀で清楚な美人だが、街の不良グループのオモチャにされている。「歪曲」と呼ばれる念動力を持つ。アニメ版で声を担当するのは、ロングヘアーをおかっぱにした女の子を演じたら右に出る者はいない(?)能登麻美子。
同じ能登麻美子が声を担当したアニメ版『君に届け』の黒沼爽子(さわこ)は、実は「能力を持たない、もう1人の浅上藤乃」なんじゃないか、と私は個人的に思っている。

アニメ版全編の音楽を担当するのは梶浦由記。そしてその各章の主題歌を歌うグループとして梶浦が編成したのがKalafinaである(だたし、Kalafinaはアニメ版『空の境界』プロジェクト終了後も活動を継続している)。
アニメ版を制作したufotable自身が第1~3章のハイライトシーンを編集して作った『空の境界』PVがあるが、そのバックに流れるのがKalafinaの歌う第1章の主題歌『Obliviouse』だ。これを見て、作品の雰囲気だけでも感じてみてほしい。ついでに第1~6章の予告編も。

──用意された駒は3つ。
 死に依存して浮遊する、二重身体者
 死に接触して快楽する、存在不適合者
 死に逃避して自我する、起源覚醒者
互いに絡み合いながら相克する螺旋で待つ──


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