以前、森田健さんから怪しいFAXDMが届いた、という話をブログに書いたら、勉強会でご一緒している先生が、森田健さんの著書とDVD、それに森田さんが主宰している不思議研究所が発行している会報「不思議の友」を貸してくれた(nikukyuu先生、ありがとうございます)。今回は、それを読んだり見たりしていろいろ感じたことを書いてみたいと思う。
森田健氏のプロフィールについては、本の著者紹介やネットで見てもらえばすぐわかるが、簡単に記すと…
1951年生まれ。富士通(株)を経て、コンピュータ・ソフトの会社を経営しながら不思議研究所を設立し、時空と「私」の謎を解決すべく、数々の不思議現象を探究している。
…とのこと。本業はあくまでコンピュータ・ソフト会社の経営であり、不思議研究は趣味というか副業のようなもの、と読めるが、不思議研究の方で何冊も著作があり、DVDブック『究極のいい運命へ 神とつながれ』(講談社刊)の中で、六爻占術を使って株で億単位の儲けを出した、と言っているので、実際はむしろそちらの方がメインかもしれない(ちなみに、経営しているソフト会社については、詳細は不明)。
『「不思議の友」特別号・声大賞』には、冒頭にこんな文章が書かれている。
--------------8<--------------8<--------------
あなたも飛べる!
世の中の商品には、一般的に「保証」というものがあります。
例えば、車を買った時、もしそれが走らなければ、修理するか交換してくれます。とにかく、期待値のものが必ず得られるようになっています。
しかし、不思議研究所が販売しているような「不思議グッズ」は違います。
「不思議グッズ」の購入は、ひとつの賭けだと思います。当たることもあれば、外れることもある・・・。
私たちは世間一般の常識に慣れているため、期待値が得られないと腹を立てます。でも、一種の賭けである以上、期待値を越えたものが得られる場合も多数存在します。
車を買ったのに、空を飛ぶ機能まで付いていた・・・。そういう商品が「不思議グッズ」なのです。(中略)
空を飛べたとき、その商品は何百倍もの価値になります。そういう楽しさは、世間一般の商品では持つことができません。
あなたはどちらが良いですか? 何百倍もの価値を見つけてみませんか?
そして、あなたも飛ぶことが出来たなら是非、声大賞に応募してみてください。
-------------->8-------------->8--------------
実は、会報誌「不思議の友」は不思議研究所の商品カタログでもあって、「太極八卦鏡」「財運ストッパー」「金の水」(神経系統、ホルモン分泌に優れ、性(精)力アップ、若々しい体作りに効果がある…と書かれているが、成分は不明。薬事法に引っかからないのだろうか?)「時空ジェラート」(コクのないアイスクリームだが、太極八卦図を応用し、宇宙のエネルギーを吸収させている…らしい)などを通信販売している。
こういう分野の商品には、「一見変だが実は凄いもの」が少なからずある(もちろん、「ただ変なだけのもの」の方がずっと多いが)。ただ、こういった商品にはクレームがつきもの。「買ったけど、全然運が良くならない」「健康にいい、というから買ったのに、病気になったじゃないか」…上の文章は、こういったクレームを封じるとともに、こう言っているように私には見える。「私どもの商品を買ってご希望の結果が得られないとしても、それは商品のせいではありません。しかし、商品を買った後で何か(ご希望していたことと違う分野も含めて)良いことがあったなら、それは全て私どもの商品の御利益です」と。
ちなみに、『「不思議の友」特別号・声大賞』には、その商品を買った客からの投書(もちろん、いいことしか書かれていない)が掲載されているが、客の声を集めて、それを大々的に見せる、というのはエモ-ショナル・マーケティングの基本的なテクニックであることも、付け加えておこう。
ところで、以前のブログにも書いたことだが、私が森田氏の主張することの中で最も納得できないのが、「運命はすべて決まっている。しかし、一定の範囲内でなら変更することができる」という考え方である。これは『「不思議の友13・1」増刊号』の中で、六爻占術を解明したトラさん、という人の言葉として出てくる。以前届いたFAXDMでは、あらかじめ決定された運命の中では死ぬはずだった人を六爻占術によって救った、という話も出ていたが、それは本当に「一定の範囲内での変更」に当たるのだろうか?
複雑系には、「地球のある場所で蝶が羽ばたくと、その反対側の地域にハリケーンが起こる」という考え方がある。つまり、系の中のミクロの事象がマクロの事象に決定的な影響を及ぼす可能性がある、ということだ。この複雑系の考え方に従うと、あらかじめ決まっていた未来に小さな変更を加える(=ミクロ・レベルでの事象の変化)が、系そのものの「ありよう」を変えてしまう可能性があることになる。つまり、「すべて決まっている」はずの未来が変わってしまうのだ。つまり、運命は
1.全て決まっていて、一切の変更はあり得ない(ただ、我々がこの先、何が起こるのかを知らないだけで)。
2.極めて流動的で、いくらでも変更可能。
のいずれか、ということになる。
もし1が正しいとするなら、六爻占術は「あらかじめ決まっている未来を覗くためのツール」であり、未来変更機能はない。未来が変更できたように見えるのは、単に結果の解釈の仕方が間違っていたからに過ぎない。2が正しいとするなら、六爻占術は「未来に起こる可能性のあることを予測するツール」なので、その結果が常に正しいとは限らなくなる。いずれにせよ、六爻占術は普通にある「比較的よく当たる占い」以上の何物でもない、という結論になってしまうのだ。
この問題を別の角度から考えてみよう。ここでは、六爻占術は100%当たり、その結果が気に入らなければ変更もできるツール、と仮定する。
さて、n人の合格枠を持つ試験を、nより十分大きなN人が受験するとする。N人の受験生にはあらかじめ、それぞれ合否を六爻占術で占ってもらう。「合格」という結果が出た人は何もしないが、「不合格」という結果が出た人は「合格」になるように運命を変えておいてもらう(なお、この占いと運命変更は六爻占術の熟達者が責任を持って行うとする)。すると、この人たちが受験する時には、N人全員が六爻占術で「合格」となる運命が与えられていることになる。さて、この人たちはn人という合格枠の中で全員合格できるのだろうか? 仮にもし、合格できた人ががN人中n人であるならば、六爻占術の的中率はn/N(例えば、n=10、N=1000なら、10/1000=1/100)になってしまう。
一つの考え方としては、占いで「不合格」と出て、そのまま運命も変更できない人がいるに違いないことになる。しかし、死の運命も変えられるほどの六爻占術が、試験の合否ごときを変えられないとは、ちょっと考えづらい(実際、DVDの中で1人の受験生の合否を六爻占術で変えた話が出てくる)。また、もし変更できないとしたら、変更できた人とできなかった人の差は何なのか(例えば、「合格」という結果になった人がn人になった段階で、n+1人目からは変更が効かなくなるのか?)、あるいは、「もう合否は変更できない」という運命を六爻占術で変更できないのか(メタ・レベルの運命変更)、など…考えると興味は尽きない。
これ以外にも、ここに書くと長くなるので泣く泣く落としたツッコミどころは山ほどあるのだが、私としてはバカバカしくなってきたので、この辺でこの件からは手を引きたいと思う。私の遺志(って、まだ死んでないけど)を引き継いで、もっとこの件を追求したい、という方は、お止めしません。ただ、くれぐれもミイラ取りがミイラにならないよう、お気を付けあれ。
堕ちていくのも幸せだよと~(沢田研二『時の過ぎゆくままに』)
森田健氏のプロフィールについては、本の著者紹介やネットで見てもらえばすぐわかるが、簡単に記すと…
1951年生まれ。富士通(株)を経て、コンピュータ・ソフトの会社を経営しながら不思議研究所を設立し、時空と「私」の謎を解決すべく、数々の不思議現象を探究している。
…とのこと。本業はあくまでコンピュータ・ソフト会社の経営であり、不思議研究は趣味というか副業のようなもの、と読めるが、不思議研究の方で何冊も著作があり、DVDブック『究極のいい運命へ 神とつながれ』(講談社刊)の中で、六爻占術を使って株で億単位の儲けを出した、と言っているので、実際はむしろそちらの方がメインかもしれない(ちなみに、経営しているソフト会社については、詳細は不明)。
『「不思議の友」特別号・声大賞』には、冒頭にこんな文章が書かれている。
--------------8<--------------8<--------------
あなたも飛べる!
世の中の商品には、一般的に「保証」というものがあります。
例えば、車を買った時、もしそれが走らなければ、修理するか交換してくれます。とにかく、期待値のものが必ず得られるようになっています。
しかし、不思議研究所が販売しているような「不思議グッズ」は違います。
「不思議グッズ」の購入は、ひとつの賭けだと思います。当たることもあれば、外れることもある・・・。
私たちは世間一般の常識に慣れているため、期待値が得られないと腹を立てます。でも、一種の賭けである以上、期待値を越えたものが得られる場合も多数存在します。
車を買ったのに、空を飛ぶ機能まで付いていた・・・。そういう商品が「不思議グッズ」なのです。(中略)
空を飛べたとき、その商品は何百倍もの価値になります。そういう楽しさは、世間一般の商品では持つことができません。
あなたはどちらが良いですか? 何百倍もの価値を見つけてみませんか?
そして、あなたも飛ぶことが出来たなら是非、声大賞に応募してみてください。
-------------->8-------------->8--------------
実は、会報誌「不思議の友」は不思議研究所の商品カタログでもあって、「太極八卦鏡」「財運ストッパー」「金の水」(神経系統、ホルモン分泌に優れ、性(精)力アップ、若々しい体作りに効果がある…と書かれているが、成分は不明。薬事法に引っかからないのだろうか?)「時空ジェラート」(コクのないアイスクリームだが、太極八卦図を応用し、宇宙のエネルギーを吸収させている…らしい)などを通信販売している。
こういう分野の商品には、「一見変だが実は凄いもの」が少なからずある(もちろん、「ただ変なだけのもの」の方がずっと多いが)。ただ、こういった商品にはクレームがつきもの。「買ったけど、全然運が良くならない」「健康にいい、というから買ったのに、病気になったじゃないか」…上の文章は、こういったクレームを封じるとともに、こう言っているように私には見える。「私どもの商品を買ってご希望の結果が得られないとしても、それは商品のせいではありません。しかし、商品を買った後で何か(ご希望していたことと違う分野も含めて)良いことがあったなら、それは全て私どもの商品の御利益です」と。
ちなみに、『「不思議の友」特別号・声大賞』には、その商品を買った客からの投書(もちろん、いいことしか書かれていない)が掲載されているが、客の声を集めて、それを大々的に見せる、というのはエモ-ショナル・マーケティングの基本的なテクニックであることも、付け加えておこう。
ところで、以前のブログにも書いたことだが、私が森田氏の主張することの中で最も納得できないのが、「運命はすべて決まっている。しかし、一定の範囲内でなら変更することができる」という考え方である。これは『「不思議の友13・1」増刊号』の中で、六爻占術を解明したトラさん、という人の言葉として出てくる。以前届いたFAXDMでは、あらかじめ決定された運命の中では死ぬはずだった人を六爻占術によって救った、という話も出ていたが、それは本当に「一定の範囲内での変更」に当たるのだろうか?
複雑系には、「地球のある場所で蝶が羽ばたくと、その反対側の地域にハリケーンが起こる」という考え方がある。つまり、系の中のミクロの事象がマクロの事象に決定的な影響を及ぼす可能性がある、ということだ。この複雑系の考え方に従うと、あらかじめ決まっていた未来に小さな変更を加える(=ミクロ・レベルでの事象の変化)が、系そのものの「ありよう」を変えてしまう可能性があることになる。つまり、「すべて決まっている」はずの未来が変わってしまうのだ。つまり、運命は
1.全て決まっていて、一切の変更はあり得ない(ただ、我々がこの先、何が起こるのかを知らないだけで)。
2.極めて流動的で、いくらでも変更可能。
のいずれか、ということになる。
もし1が正しいとするなら、六爻占術は「あらかじめ決まっている未来を覗くためのツール」であり、未来変更機能はない。未来が変更できたように見えるのは、単に結果の解釈の仕方が間違っていたからに過ぎない。2が正しいとするなら、六爻占術は「未来に起こる可能性のあることを予測するツール」なので、その結果が常に正しいとは限らなくなる。いずれにせよ、六爻占術は普通にある「比較的よく当たる占い」以上の何物でもない、という結論になってしまうのだ。
この問題を別の角度から考えてみよう。ここでは、六爻占術は100%当たり、その結果が気に入らなければ変更もできるツール、と仮定する。
さて、n人の合格枠を持つ試験を、nより十分大きなN人が受験するとする。N人の受験生にはあらかじめ、それぞれ合否を六爻占術で占ってもらう。「合格」という結果が出た人は何もしないが、「不合格」という結果が出た人は「合格」になるように運命を変えておいてもらう(なお、この占いと運命変更は六爻占術の熟達者が責任を持って行うとする)。すると、この人たちが受験する時には、N人全員が六爻占術で「合格」となる運命が与えられていることになる。さて、この人たちはn人という合格枠の中で全員合格できるのだろうか? 仮にもし、合格できた人ががN人中n人であるならば、六爻占術の的中率はn/N(例えば、n=10、N=1000なら、10/1000=1/100)になってしまう。
一つの考え方としては、占いで「不合格」と出て、そのまま運命も変更できない人がいるに違いないことになる。しかし、死の運命も変えられるほどの六爻占術が、試験の合否ごときを変えられないとは、ちょっと考えづらい(実際、DVDの中で1人の受験生の合否を六爻占術で変えた話が出てくる)。また、もし変更できないとしたら、変更できた人とできなかった人の差は何なのか(例えば、「合格」という結果になった人がn人になった段階で、n+1人目からは変更が効かなくなるのか?)、あるいは、「もう合否は変更できない」という運命を六爻占術で変更できないのか(メタ・レベルの運命変更)、など…考えると興味は尽きない。
これ以外にも、ここに書くと長くなるので泣く泣く落としたツッコミどころは山ほどあるのだが、私としてはバカバカしくなってきたので、この辺でこの件からは手を引きたいと思う。私の遺志(って、まだ死んでないけど)を引き継いで、もっとこの件を追求したい、という方は、お止めしません。ただ、くれぐれもミイラ取りがミイラにならないよう、お気を付けあれ。
堕ちていくのも幸せだよと~(沢田研二『時の過ぎゆくままに』)
そうですね。こういう人とは早くご縁を断つのが正解かと。でないと、逆にお金も運も吸い取られかねません。
コメントありがとうございます。
森田さん、そんなことになってたんですね。
>六爻にしろ、タロットにしろ、六爻が、タロットが、教えてくれるのではなく、自分の心のうちに、術をかけて、深層意識から、その結果を汲み出しているだけなんだろうと思いました。
全くおっしゃるとおりだと思います。そうしたものはあくまで補助的に用いるもので、そうしたものに全面的に寄りかかってしまったり、過度に効果を煽って寄りかかるようにさせるのは、やはり理に反することであり、何らかの歪みを生み出すのではないでしょうか。