NHK Eテレで放送している『ねほりんぱほりん』という番組がある。山里亮太とYOUが司会を務めるトーク番組なのだが、毎回登場するゲストが全員、顔出しNGの“わけあり”の人たちばかり(これまで登場したゲストは、元極道、薬物依存症、プロ彼女、地下アイドルオタク、ゲーマー、子供を虐待していた人、震災で家族が行方不明の人、プロになれなかった元奨励会員、などなど)。そのため、トーク音声はそのままに、画面上は山里亮太とYOUはモグラ、ゲストはブタの人形で、人形劇のように構成されている(司会の2人がモグラなのはゲストを深堀りするため、そしてゲストがブタなのはタブー(禁忌)のもじりだそうだ)。
その『ねほりんぱほりん』がseason5を迎え、その一発目が「“世界一”のグルメガイド本調査員」だった。
審査の公平性を保つため、詳細は一切公表されてこなかったが、今回「ブタの人形ならば」と世界で初めて現役調査員のテレビ出演が許可された
のだという。
ゲストで登場したシロウさん(仮名)はフランス料理の元料理人で、14年のキャリアを持つミシュラン調査員。これまで約5000店を調査してきたが、全ての店を公平に評価するため体調には万全の注意を払い、この14年間15%の体脂肪率を維持し続けている。また、何の仕事をしているのか一切明かせないため、友達がどんどん減る上、写真に写るのも避けなければならない、などの苦労があるらしい。
けれども、そういった話もさることながら私が一番印象深かったのは、『ミシュランガイド』の星を巡る下りだ。ある店は星が付いていきなり海外から引き合いが来るようになり、通訳付きで商談などをするようになったという。ところがその後、星が消えて、店主は毎日毎日、何が悪かったのかずっと悩み続けているそうだ。
その「星を下げる」ことについて、番組ではこんなやり取りがあった。
シロウ:星を付けるということもとても重要なことなんですが、それ以上に、星の評価を下げるということは慎重にならなければなりません。
山里亮太:そうかぁ、そうだよなー。シロウさんも星を減らす決断って、したことあるんですか?
シロウ:(少し間があって)あります。
山里亮太:へぇぇぇ…。
シロウ:ある星付きの店だったんですが、そのお店が(ミシュランの)基準を満たしてなかったんです。
山里亮太:その店、どなったんですか?
シロウ:他の調査員にも1年を通して何度も行ってもらったんですが、最終的にはスターミーティング(=星の評価を決める会議)でその店は星が付かなくなったんですが、これでもかというくらい議論しました。
YOU:シロウト側からすると、星がなくなるほど何かが変わることがあるんですかね?
シロウ:先輩調査員と話したことがあるんです。同じ人が作ってるんだから、そんな変わらないんじゃないかと。そしたら先輩調査員が「いや、見えないところで必ず変わってる」と。「我々の人生みたいなもんだ。人もそれぞれ変わるんだ。変わってない方がおかしい」と。「そのために調査するんだ」と。
山里亮太:確かに。
YOU:そうですね。
『ミシュランガイド』に限らず、本やマスコミに取り上げられると、忙しくなって本業がおろそかになったり慢心したりで、その後、評価を落として消えていく店はあるが、評価を落とした店が全てそうだったとは思わない。真摯に努力していても微妙にその方向がズレていたり、何かボタンの掛け違いのようなことがあって時流から外れていってしまうということは常にあり得る。あるいは、これは以前「俺の腕は落ちてないのか?」でも書いたことだが、
腕ってヤツは、上がってると感じてなきゃダメなんだよ。
維持してると思ってんなら、落ち始めてるってことだ。
ということなのかもしれない(そういう意味では「前と比べて何が悪かったんだろう?」という方向で考えているなら、その時点で既にダメだとも言える)。
いずれにしても怖い。なぜなら、それはいみじくも先輩調査員が言うように「その人の生き方そのもの」を映し出しているということなのだから。
我々治療業界には『ミシュランガイド』のような、中立的な立場で実力を評価した本はない(一見それっぽく見える本は出ているが、そいうのはカネさえ払えば載せてもらえる)。から、飲食店のように星が付いたの付かないので悩むことはないのだけれど、それだけに自身のことを省みる目は必要なのかもしれない(昔教わったキネシオテーピング協会の教育部長もしている岡根知樹先生は、「俺ってスゲー!」みたいにならないようにするために、ずっと加瀬建造先生の下で雇われ院長を続けているそうだ)。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます