2017年冬期のアニメも始まってもう1カ月。最近は堪(こら)え性がなくなったのか、以前は3話くらいまで見てから切るかどうか判断してたのだが、今期は1話だけで3つ見るのをやめた。そんな中にあって、最後まで絶対見ようと決めてるアニメもある。その中の1つが『昭和元禄落語心中』だ。
前半となる「与太郎放浪篇」は去年、2016年に放送され、今期やっているのは物語の後半にして完結編となる「助六再び篇」。
前半となる「与太郎放浪篇」はというと、こんな話だ。
刑務所から出所したばかりの男が、昭和の名人とうたわれた噺家、八代目有楽亭八雲のもとに弟子入り志願にやってくる。弟子は取らないという八雲だったが、断られたら行くアテがない、というその男にふと興味を持ち、与太郎という名を与えて内弟子にする。その八雲の家には、かつての兄弟子で今は亡き有楽亭助六の娘で、彼女の両親に関わるある出来事から八雲に憎しみの目を向ける、小夏が一緒に住んでいた。
もともと刑務所の慰問で聞いた八雲の落語に魅せられて弟子入りした与太郎だったが、小夏から助六の落語のレコードを聞かされ、八雲とは全く違う助六の落語に惹かれていく。そしてついに、八雲の高座の最中に舞台袖でイビキをかいて寝てしまい、八雲を激怒させてしまう。
そんな夜、八雲は自分の部屋に与太郎と小夏を呼び、自分と助六とのことを語って聞かせる…。
──というのが最初の部分で、ここから話は過去へと遡るのだが、ここで「与太郎放浪篇」のダイジェスト動画があるので、張っておこう。KING RECORDSがアップしたものなので、著作権侵害で消されてしまうことはないだろう。
さて、踊りの家に生まれながら足が悪く、家業を継げない少年が、同じ芸事をやっているという理由で、七代目有楽亭八雲の家に養子に出される。「実家に捨てられた」という思いを抱きながらも彼はそこで菊比古という名を与えられ、落語家として生きていくことを定められる。それが後の八代目八雲である。
七代目八雲にはもう1人、初太郎という弟子がいた。繊細で内向的な菊比古とは正反対の、豪放磊落な初太郎は落語もどんどん上達して二代目助六を襲名。そのことが菊比古を苦しめ、追い詰めていく。そして芸者、みよ吉を巡る助六との確執などを経て、ついに自分の落語を見つけ出す菊比古と、、圧倒的な実力を持ちながら、その豪放さ故に協会の重鎮にまで楯突いて転落してしていく助六──その2人が交わした約束とは?
──というのが「与太郎放浪篇」のお話。だからサブタイトルに反して、与太郎が出てくるのは最初の部分だけなのだ。
初太郎・助六を演じた山寺宏一が、この『昭和元禄落語心中』のオーディションの時のエピソードをどこかのアニメ雑誌で語っていた。
山寺はもともと落研の出身で、そこから声優、俳優を志したらしい。で、『落語心中』のオーディションで出された「指定されたある落語の演目を3分程度にまとめて、それを吹き込んで提出せよ」という課題に「あの演目を3分にまとめろなんて、落語のアニメをやろうというのに全く落語のことがわかってない!」と激怒したのだそうだ。それで「俺は絶対このオーディションに通ってやる。その上で『お断りします』と蹴ってやるんだ」と決心してオーディションを受けて実際に通り、後でスタッフと話したら本当に落語のことを深く理解していることがわかって、「ゼヒやらせてください」となったのだとか。
だがその山寺宏一の助六もさることながら、圧巻なのは八代目八雲を演じる石田彰だ。石田は50代になった今でもウブな高校生から凶悪な連続殺人鬼までを演じ分けるベテラン声優だが、『落語心中』での彼はまさに「声優による話芸の凄み」を肌で感じさせてくれる。入門当初のつたない菊比古から、名人とうたわれるようになった八代目八雲まで、物語が時間を行きつ戻りつする中で落語での語りを含めて全く違和感なく演じ分けるその演技は、何度見てもゾクリとするほどだ。
で、これは菊比古が演目「死神」によって自分の求める落語の形を見出すシーンの動画。いつ消されても不思議ではないので、見るなら今のうち。
そして「助六再び篇」は、ついに真打となって三代目助六を襲名した与太郎と、小夏、そして八代目八雲が織りなす物語。原作は完結しているが私は原作を読んでいないので、この先どうなるのかは知らない。まだ『落語心中』を見たことがなくて、もしこの記事を読んで興味を持ったなら、アニメをゼヒ見てみてほしいと思う次第。
では、お後がよろしいようで。
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