深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

謎が謎呼ぶ『電脳コイル』

2007-07-15 18:29:00 | 趣味人的レビュー
最近の土曜夕方の楽しみはアニメである。午後6:00からの『地球(テラ)へ…』と6:30からの『電脳コイル』は、毎週欠かさず視ている。特に、NHK教育の『電脳コイル』にはハマっている。NHKの、しかも教育テレビでやっているアニメなんか視て面白いのか、と思う向きもあろうが、とんでもない誤解である。

スポンサーがいないため基本的に視聴率に縛られないNHKは、昔から時代を先取りするような前衛的な番組や、一部のコアな視聴者から熱狂的に支持されるようなエッジの効いた番組を精力的に制作している。土曜のこの時間枠は以前「ドラマ愛の詩」という枠で、恩田陸の同名の小説を原案にした『六番目の小夜子』などの名作を生み出している。それがアニメ枠に変わり、『ツバサクロニクル』のあとに始まったのが、この『電脳コイル』だ。

その『電脳コイル』だが、舞台は近未来202X年の大黒市という架空の街。この頃、ネット環境は今より遙かに整備され、子供たちの間では着けているだけで常時ネットにアクセスできる「電脳めがね」が爆発的に普及している。この電脳めがねは、そこに映る現実の風景とヴァーチャルな情報とを融合させて見せてくれる機能があるようで、マルチウィンドウでファイルなどを表示、検索できるだけでなく、めがねをかけた時だけ見ることのできる、さまざまな電脳生物も開発され、ペットなどとして飼われている。

日本で最も地域の電脳空間化が進んでいるはずの大黒市には、実は至る所に今は存在しないはずの古いヴァージョンの電脳空間が落とし穴のように点在している。物語は、小学6年生の小此木優子(優子の「優」は「やさしい」とも読めるので、通称ヤサコ)が父の異動に伴って金沢からこの大黒市に引っ越してくるところから始まる。そう、ヤサコは転校生なのだ。あの「少年ドラマシリーズ」の『謎の転校生』『明日への追跡』『未来からの挑戦』などが、そして『六番目の小夜子』も皆そうだったように、物語はいつも転校生から始まる。そして、もう一人の転校生、天沢勇子(勇子の「勇」は「いさましい」とも読めるので、通称イサコ)の登場と共に、その物語が大きく動き出していく。

ヤサコにとって大黒市は祖母の家があり、来るのは初めてではない。鳥居の連なる長い階段を上っていく夢を何度も見たことがあり、それは昔に大黒市に来た時の記憶と関連しているらしいのだが、その夢を除いて、ヤサコには当時の記憶がほとんどない(封印してしまっているのか?)。ヤサコが大黒市にやって来たその日に、飼っている電脳ペットのデンスケが古い電脳空間に落ちてしまう。それを救ってくれたのがフミエで、ヤサコはフミエから半ば強引に電脳コイル探偵局の会員にさせられてしまう(会員番号8番)。優柔不断で、流されてしまう性格。

その電脳コイル探偵局を主宰しているメガ婆(会員番号0番)は、実はヤサコの祖母。老婆だが電脳空間を操る卓越した技術を持ち、メタバグを材料にしたメタタグ(貼ると電脳体の機能をアップさせることのできる御札)や、電脳空間に垂らして電脳体をつり上げることのできる電脳釣り竿など、お手製の電脳グッズを作っては、自分のメガシ屋(昔で言う駄菓子屋)で「ここでしか手に入らないもの」として売っている。コイル探偵局の真の目的はまだわからないが、ヤサコやフミエたちの知らない何かを知っているよう。

コイル探偵局・会員番号7番のフミエは、困っている人を見るとつい何とかしてあげたくなる、お節介タイプ。オヤジという電脳生物を使っているが、以前飼っていた電脳ペットに死なれた(実はサッチーに消去された)時の悲しい思い出があるため、オヤジのことはペットではなく“しもべ”と呼んでいる。学校では生物部(実態は、“電脳生物”部になってしまっている)に所属していて、そこにも半ば強引にヤサコを引き込んでしまう。

その生物の部長がハラケン。一見ボーッとして頼りなさそうな男子だが、実はかなりの電脳使い。大黒市にだけ存在する謎の電脳体、イリーガルのことを一緒に調べていた同級生のカンナが1年前に不可解な交通事故死を遂げ、それ以来たった一人でイリーガルとカンナの死について調べている。彼もまた電脳コイル探偵局の会員である(会員番号5番)。

そのハラケンを実の息子のように可愛がる叔母タマコは、大黒市の電脳空間管理局に勤務する。大黒市の電脳空間の異常に早くから気づき、疑わしい異物を排除するサーチオートマトン(ウィルス駆除ソフトのようなもの)のサッチーキュウちゃんを導入したのも彼女。だがサッチーやキュウちゃんは作りがやや粗雑で、不正規のソフトやわずかなバグのある電脳ペットも容赦なく攻撃し消去してしまうため、市民から不評を買っている。そうまでしてタマコは何に備えているのか? ところで、タマコの上司として異動してきたのがヤサコの父で、「サッチー」というダサいネーミングは彼の発案。

イサコは、ヤサコと同じ金沢から、ヤサコの1日遅れで転校してきたが、大黒市にはそれ以前から入って、何事かを行っていた。暗号式と呼ばれるものを駆使して電脳空間を操る彼女は、「暗号屋」と呼ばれる存在の一人か? 転校初日には、大黒黒客倶楽部の面々と電脳空間でバトルを繰り広げたが、圧倒的な力の差を見せつけて大勝。その後は女王のように彼らの上に君臨している。体に鍵穴のようなマークがいくつもあり、キラバグを探しているが、それが何で、何の目的かは不明。ヤサコとは正反対に、超然として人に心の内を見せないが、イサコにもまた封印された過去があるのか?

そのイサコとバトルを繰り広げた大黒黒客倶楽部(ちなみに、黒客(へいくう)とは中国語でハッカーの意味)は、ダイチ他数人の生物部のメンバが立ち上げた、言わば部内クラブ。モノによっては高値で取引されるメタバグ(電脳空間内の異物が固まったものらしい)を集めて資金源にしている。イサコとのバトルで大損害(お年玉12年分)を受け、今はイサコのパシリになっているが、このままでは終わりそうにない。

NHKでは多くの場合、この種の物語は中学2年生を主人公にするのだが、今回は小学6年生というのが新しい。普通、小6が主人公のドラマだと、お受験かイジメか児童虐待か、といった話になってしまうところだが、この『電脳コイル』の中に広がるのは、そんなお受験ともイジメとも児童虐待とも無縁の、私にとっては自分が小学生だった昭和40年代を思い出させる、懐かしい風景だ。電脳めがねはなかったが、あの頃あったワクワクするようないろいろなものが、この物語の中には詰まっている。

原作・脚本・監督の磯光雄は、あの『新世紀エヴァンゲリオン』も手がけた一人で、この『電脳コイル』は初のオリジナル作品。それからアニメ版とはまた違う、『六番目の小夜子』や『慶次郎縁側日記』などの脚本を手がけた、(『エヴァ』のアスカではない)宮村優子の小説版『電脳コイル』があり、これも彼女の初小説である。

『電脳コイル』の公式HPはこちら。更に詳しい情報が知りたい方は、こちらの『電脳コイル』Wikipediaへ。

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