仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

「黄金の島」(上・下) 真保裕一

2006-04-11 22:38:07 | 讀書録(ミステリ)
「黄金の島」(上・下) 真保裕一

お薦め度:☆☆☆+α
2006年4月11日読了


暴力團の抗爭のほとぼりが冷めるまで國外に隱れてゐることを命じられた坂口修司。
バンコクに潛んでゐたものの、刺客に襲はれ、ベトナムへと逃げる。
ベトナムはかつての「北」が政權を握り、共産黨幹部がはばをきかしてゐて、一般庶民の生活は窮乏してゐる。
庶民はなんとかして國から脱出して豐かな生活を送りたいと考へてゐる。
彼らが、いはゆる經濟難民の「ボート・ピープル」である。
團結して亡命資金を作らうとする若者たちのグループと修司が出會ふところに物語が生まれる。

文庫本にして上下併せて1000ページを越える大作である。
ベトナムの若者たちの、なんとかして國を脱出して人間らしゐ生活をおくりたいといふ氣持ちが痛いほど傳はつてくる。
彼らの目指すは日本。
日本は彼らにとつては「黄金の島」なのだ。
しかし、その「黄金の島」から逃げて來てゐる修司にとつて、彼らの夢はあまりに現實離れしてゐる。
關はり合ひになるつもりなどなかつた修司であつたが、いつしか彼らと行動を共にすることになつてしまふ。

小さな漁船で日本を目指す彼らに台風が襲ひかかるシーンは壓卷だ。
ベトナム人の若者たちと日本人の修司の間に生まれた信頼關係が台風に飜弄される。
所詮、生きて來た環境が違ひすぎるとお互ひに理解し合へることはないのか。

冒險小説として讀んでゐると、なかなか面白い。
映像化しやすい作品だとも思ふ。
ただ、私にとつては、修司がベトナムの若者達と一緒にわざわざ危險を冒して日本に歸らうとするのかがわからない。
どうにも無理があるやうに感じてしまふ。
いくらページを費やしても、その無理な感じは解消できなかつたやうに思ふ。


2006年4月11日讀了


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