『鹿男あをによし』 万城目学
【お薦め度】 ☆☆☆☆
2011年10月19日讀了
「先生、サンカクを手に入れないと、この國は滅ぶよ」
主人公は、大學の研究室を追ひ出されて奈良の女子高に教師として赴任した28歳の男。
彼は周圍から神經衰弱と噂されてゐる。
そんな彼が、雌鹿に話しかけられる。
「鹿せんべい、そんなにうまいか」
「さあ、神無月だ― 出番だよ、先生」
出番とは?
さう、サンカクを手に入れることだ。
では、サンカクとは?
そして、それはどうしたら手に入れることが出來るのか。
ストーリーも面白いが、私が面白いと思つたのは堀田イト。
彼女は、主人公のクラスの生徒なのだが、最初の授業でいきなり遲刻して來る。
遲刻の理由を訪ねると、マイカーならぬ「マイシカ」を近鐵の入り口に駐めてキップを切られたといふ。
「冗談はよせ」
といふ主人公に向つて、堀田は云ふ。
「奈良の人間は、鹿に乘るのです」
もう、これには參つた。
もちろん、この娘が物語に絡んでくるのはこの時點でわかるわけだが、それにしても面白い。
堀田のキャラクターだけでも、物語を引つ張る力がある。
ラストシーンがまた良い。
鹿男のまま奈良を去ることになる主人公。
京都驛で新幹線のぞみに乘る主人公のもとに驅けてくる堀田。
そして堀田が主人公にしたことは・・・
この女の子、誰が演じたらベストだらうかと考へてしまふ。
いまだに答へは出ないのだが・・・
もう一つ、荒唐無稽なストーリーを成立させるための背景や小道具がまた面白い。
茨城縣にある 鹿島神宮 と奈良の 春日大社 の近しい關係について知つてゐる人はさほど多くはないだらう。
鹿島神宮の祭神は 武甕槌命 だが、藤原氏の氏神もまた武甕槌命であり、春日大社に祀られてゐる。
武甕槌命が白鹿に乗つてやつて來たとされることから、奈良では鹿は神の遣ひとされてゐる。
一方で、藤原氏の祖である 中臣鎌足 は鹿島神宮の神官であつたとする説もあり、鹿島から春日にやつてきたのは中臣鎌足その人とも考へられるのだ。
また、鹿島神宮には、地震を引き起す大鯰を押さへつける「要石」が、地震の守り神として傳はつてゐる。
つまり、地震の守り神もまた奈良の地にやつて來たと考へることも出來るわけだ。
そんな背景が、一應、この作品の荒唐無稽な部分を支へてゐる。
そして、もうひとつ。
卑彌呼が魏から貰つた鏡かも知れないといふことで話題になつた 三角縁神獸鏡 。
この古代史ファンには馴染のある鏡が、この作品の「目」になるのだ。
この鏡の特徴は、その名の通り、斷面を横から見ると縁の部分が三角形に盛り上がつてゐることなのだが、この作品ではこの鏡を面白い方法で使つてゐる。
確かにさういふ使ひ方をするためには、三角縁である必要がある。
卑彌呼がさうしたやり方で使つてゐたと鹿は云ふのであるが、さて・・・
「鴨川ホルモー」で万城目ワールドに惹き込まれ、いままたこの「鹿男あをによし」で飜弄されてしまつた。
次に讀むであらう「プリンセス・トヨトミ」がますます樂しみになつた。
【お薦め度】 ☆☆☆☆
2011年10月19日讀了
「先生、サンカクを手に入れないと、この國は滅ぶよ」
主人公は、大學の研究室を追ひ出されて奈良の女子高に教師として赴任した28歳の男。
彼は周圍から神經衰弱と噂されてゐる。
そんな彼が、雌鹿に話しかけられる。
「鹿せんべい、そんなにうまいか」
「さあ、神無月だ― 出番だよ、先生」
出番とは?
さう、サンカクを手に入れることだ。
では、サンカクとは?
そして、それはどうしたら手に入れることが出來るのか。
ストーリーも面白いが、私が面白いと思つたのは堀田イト。
彼女は、主人公のクラスの生徒なのだが、最初の授業でいきなり遲刻して來る。
遲刻の理由を訪ねると、マイカーならぬ「マイシカ」を近鐵の入り口に駐めてキップを切られたといふ。
「冗談はよせ」
といふ主人公に向つて、堀田は云ふ。
「奈良の人間は、鹿に乘るのです」
もう、これには參つた。
もちろん、この娘が物語に絡んでくるのはこの時點でわかるわけだが、それにしても面白い。
堀田のキャラクターだけでも、物語を引つ張る力がある。
ラストシーンがまた良い。
鹿男のまま奈良を去ることになる主人公。
京都驛で新幹線のぞみに乘る主人公のもとに驅けてくる堀田。
そして堀田が主人公にしたことは・・・
この女の子、誰が演じたらベストだらうかと考へてしまふ。
いまだに答へは出ないのだが・・・
もう一つ、荒唐無稽なストーリーを成立させるための背景や小道具がまた面白い。
茨城縣にある 鹿島神宮 と奈良の 春日大社 の近しい關係について知つてゐる人はさほど多くはないだらう。
鹿島神宮の祭神は 武甕槌命 だが、藤原氏の氏神もまた武甕槌命であり、春日大社に祀られてゐる。
武甕槌命が白鹿に乗つてやつて來たとされることから、奈良では鹿は神の遣ひとされてゐる。
一方で、藤原氏の祖である 中臣鎌足 は鹿島神宮の神官であつたとする説もあり、鹿島から春日にやつてきたのは中臣鎌足その人とも考へられるのだ。
また、鹿島神宮には、地震を引き起す大鯰を押さへつける「要石」が、地震の守り神として傳はつてゐる。
つまり、地震の守り神もまた奈良の地にやつて來たと考へることも出來るわけだ。
そんな背景が、一應、この作品の荒唐無稽な部分を支へてゐる。
そして、もうひとつ。
卑彌呼が魏から貰つた鏡かも知れないといふことで話題になつた 三角縁神獸鏡 。
この古代史ファンには馴染のある鏡が、この作品の「目」になるのだ。
この鏡の特徴は、その名の通り、斷面を横から見ると縁の部分が三角形に盛り上がつてゐることなのだが、この作品ではこの鏡を面白い方法で使つてゐる。
確かにさういふ使ひ方をするためには、三角縁である必要がある。
卑彌呼がさうしたやり方で使つてゐたと鹿は云ふのであるが、さて・・・
「鴨川ホルモー」で万城目ワールドに惹き込まれ、いままたこの「鹿男あをによし」で飜弄されてしまつた。
次に讀むであらう「プリンセス・トヨトミ」がますます樂しみになつた。
鹿男あをによし (幻冬舎文庫) | |
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本の感想
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映画の感想
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なお、私のブログですから、ネタバレがあるかもしれません。誠に勝手ながら、自己責任でお願いします。
楽しみです。
読み終えたら、ご感想を拝読します。