肩の凝らない漢方の話

漢方薬にまつわるあれこれを、気の向いた順に語っていきます。
私たちの生活に根差した漢方の世界をご紹介します。

漢方小噺~神農さま~

2025-02-25 15:34:46 | 漢方小噺
昨年のことです。コラムを読んでくださった方から
「神農(しんのう)」についてのおたずねがありました。
その方は、以前より、神農について興味を持ち調べており、
「神農は、体は人間、頭は牛、葉っぱの蓑を着て、木の枝を持っているのでは?」
とのことでした。

当薬局のサイトにふわふわ浮いている神農さまは、頭にこぶがあるけれど、人の顔をしています。
というわけで、調べてみました。

炎帝神農(えんていしんのう)は、古代中国の伝説上の皇帝の一人。
今に伝わるお姿は
1. 耒(すき)を持って田畑を耕す農民型
2. 羽衣を着て仙草を持つ仙人型
3. 体は人間、頭は牛の人身牛首型
で、立像、座像、半身像があるそうです。
   
               農民型
  
            
               仙人型

サイトの神農さまは、仙人型。
お尋ねの方の神農さまは人身牛首型と同じ「神農」でもお姿が違ったのですね。

サイトの神農さまには、頭に二つ、ちょうど牛の角のようなこぶがあります。
葉を重ね合わせた蓑を着て、右手に薬草を持ち、左手に巻物を持っています。

祖父 太田裕康によれば、
「神農さまは、たくさん勉強して、頭に知恵がいっぱい詰まっている。その知恵が収まりきらずこぶになって生えてきた。そのこぶは、知恵の塊。」
だそうです。
幼かった私は、勉強しすぎるとこぶが生えてきちゃうのか。と心配しましたが、
「人間ができるちょっとやそっとの勉強じゃ、生えてこない」
と一笑に付されました。

神農は医薬の神様で、百草をなめ、一日に70回も毒にあたりながら、医薬、食糧の適否を判別し、本草書を著したといわれています。
他にも耒鍬(すきとくわ)を作り、民に農業を教えた、農業の神様。
五弦の瑟(おおごと)を作った、音楽の神様。
市を開いた、商売や市場の神様。
八卦を重ねて六十四卦を為した、易の中興の祖。
などと言われ、各地で祭祀されています。
「神農まつり」や「薬まつり」と呼ばれる祭礼もあるようです。
機会があれば、一度訪れてみたいと思いました。

参考 「医史跡を訪ねて」 鈴木五郎 米田該典 著 小太郎漢方製薬発行
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漢方小噺~2025年はどんな年?~

2025-01-09 14:48:51 | 漢方小噺

 新年あけましておめでとうございます。
 今年も生活に根差した漢方の世界をご紹介していきたいと思います。
 どうぞよろしくお願いします。

 昨年は、甲辰(きのえたつ)で、社会の動きも平穏、万物は順調に成長し、繫栄する。
雨が多く、湿った年になる。とお伝えしましたが。
地球規模でみれば、雨による被害は多く、戦渦の広がりなど平穏からは程遠い年でしたね。
ただ、個人的には平穏な一年だったように思います。
皆様には、どんな年でしたか?

 2025年は、乙巳(きのとみ)。
中国の古い医学書「黄帝内径 運気篇」によると
厥陰司天・金運不及・少陽在泉です。
この年は、万物がことごとく繁茂する成長の年だそうです。
気候は、暑さが厳しい一方、急に冷えて雹や霜の降りることがあるようで、
秋の訪れが遅く、冬は厳寒となるそうです。
金運不及のため、肺を傷めやすいとされています。
花粉症のひどい方や呼吸器系が弱い方は早めのケアをお勧めします。

 この「運気篇」は、天気の変化を
5,6,10,12,30,60年のリズムで統計を取って規律を見つけ、記した書物だそうです。その出典には諸説あります。
2000年以上も昔の話なので、現代にあてはめるには無理がありますが、先人の知恵と思考をたどるのも面白いと思いご紹介しました。
参照 「意訳黄帝内経運気」小木戸丈夫+浜田善利共著、築地書館
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漢方小噺~お正月の風習 2~

2024-12-26 21:30:11 | 漢方小噺
あっという間に年の瀬です。
漢方専門薬局がお勧めする、お正月に取り入れたい風習
お屠蘇に続いて、初風呂です。
初湯とも若湯とも言い、季語にもなっているそうです。

初風呂とは、新年初めて入るお風呂のことです。
今は、多くの人がほぼ毎日お風呂に入りますが、
江戸時代には、元旦は「福を流して洗ってしまわないように」お風呂に入らず、
正月二日のお昼に初湯に入ったそうです。
地域によっては今もその風習を守っているところもあるようです。

元旦は、人だけでなく、道具も休ませる大切な日。
毎日使う、場所や道具にはそれぞれを司る神様がいると考え、
元旦はその神様に感謝をし、休息していただく日とされていました。

初風呂に薬草を入れ、身を清め新年の無病息災を祈願してみませんか?
ヨモギや松葉など、香りもよく体を温めてくれる薬草がお勧めです。

それでは、良い年をお迎えください。

参考 ちょっと江戸知識 コラム江戸

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漢方小噺~お正月の風習~

2024-12-12 18:47:38 | 漢方小噺
師走ですね。街には、お正月商品が並んでいます。
少し早い気もしますが、
漢方専門薬局が選ぶ、お正月に取り入れたい風習を2つご紹介します。

ひとつめが 「お屠蘇(とそ)」

これは絶対、外せません。我が家では、毎年欠かさずいただいています。

一家の健康と長寿を願い、
元旦から三ヶ日の間は、年の若い人から順にお屠蘇をいただきます。

その由来は、諸説ありますが、
漢の名医 華佗(かだ) が発明し、日本には、平安時代に伝わったとされています。
邪気を屠り絶やし、人の根気を蘇生せしめるというので、屠蘇と命名したそうです。

今に伝わる屠蘇散の処方はいくつかあるようですが、
基本は、山椒、陳皮、桂皮、山帰来、白朮、防風、桔梗を合わせたもので、
とても良い香りがします。

作り方は簡単。
屠蘇散 一袋をみりんまたは清酒 三合~五合に浸け、一晩おきます。

お好みでみりんと清酒を合わせたり、白ワインをつかってもよいそうです。
みりんをお鍋にいれて1分くらい沸騰させたものに浸ければ、お子さんやアルコールが苦手な方もいただけます。

我が家はみな、アルコールが苦手なので、煮切みりんを使った、甘いお屠蘇派です。
盃を口元に寄せると、芳しい香りがして、何とも言えない幸せな気持ちになります。

ぜひ、お試しください。

ふたつめは 「初風呂」
  こちらは次回に。
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漢方小噺~冬の過ごし方~

2024-11-22 18:13:19 | 漢方小噺

 ようやく冬がやってきました。
 一年が過ぎるのは早いですね。
 漢方小噺として季節の過ごし方をご紹介してきましたが、最後の季節、冬です。

  中国の古い医学書「黄帝内経(こうていだいけい)」によると、
 冬は「閉蔵(へいぞう)。もろもろのものが門戸を閉ざして閉じこもる季節」だそうです。
 その冬の養生法は次のように記されています。
*夜は早く寝、朝は遅くまで床にあって、日が昇ってから起き、寒気に損なわれないようにする
*気を鎮めて、何かしなければ、と思う気持ちを隠す
*ひそかな心持で、すべてに満足する
*直に寒さに触れないよう、温かくして過ごす
*働きすぎて汗をかいたり、陽気を逃さないようにする

  天の陽気の力も弱くなる冬。心も体も穏やかに過ごす。身体を温める。
 動きすぎて汗をかかないように注意して、体の中の陽気を逃がさないよう。
 陰気を養うように過ごせば、春も元気に迎えることができるそうです。

  とはいえ、師走は、仕事納めや大掃除、迎春準備と心も体もフル回転の時期です。
 だからこそ、8割出来たら大満足。5割できたらヨシ。
 くらいの気持ちで過ごしましょう。

  今年は、夏も秋も暑い日が続き、陽気を使いすぎ、
 エネルギー不足の人が多くみられます。
 冬の間に気を養い、新しい一年を元気に過ごせますように。

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