肩の凝らない漢方の話

漢方薬にまつわるあれこれを、気の向いた順に語っていきます。
私たちの生活に根差した漢方の世界をご紹介します。

薬食同源 ~牛黄(ごおう)~

2024-08-23 17:59:47 | 薬食同源
牛黄は、牛の胆のうにできた結石、つまり胆石です。
「日本薬局方」にも収載されている生薬です。

食材として用いることはまずないので、「薬食同源」と言ってよいのか迷いますが。
生薬のお話としてご紹介します。

少し話がそれますが、「生薬」と聞くと
草や木、種など植物由来というイメージを持たれる方もありますが。
植物だけでなく、鉱物、動物に由来するものも多くあります。

牛黄には、停滞して流れにくくなった物を他に押し流す作用があり、
体の中にこもった熱を取り除く。
気血のつまりを取り除き、流れを良くするといわれています。

「神農本草経(しんのうほうんぞうきょう)」を紐解くと
牛黄は
急に何かに驚いてひっくり返る「驚癇(きょうかん)」
悪寒と発熱を伴う「寒熱(かんねつ)」
異常な発熱のために狂ったようになり、けいれんを起こす
という病に効く
また、邪気を取り除き、鬼気を追い払う作用がある
と書いてあります。
命に係わるような重篤な状態の時に用いていたのではないかと想像します。
それだけ、貴重な生薬だったのでしょう。

現代では、動悸による不安感の鎮静、疲労回復、滋養強壮を目的に色々な製品に配合されています。
特に、栄養ドリンクに多いですね。
今年の夏は大変暑いので、疲労回復にと牛黄製剤を手にされる方も多いのではないでしょうか?
そんな時に、牛黄にまつわる駄文を思い出していただければ幸いです。

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暮らしと健康~心(しん)の弱り~

2024-08-09 16:12:47 | 暮らしと健康
 
夜、草むらから涼やかな虫の音が聞こえ始めました。
暦の上では、もう秋です。

とはいえ、昼間はまだまだ暑いですね。前回に引き続き、夏のお話です。
夏に影響を受けやすい五臓は「心」(しん)です。
「心」は、「血」を全身に巡らせる。
感情、感覚、思考などの精神的な働きをコントロールする。
といった働きをすると考えられています。

「心」は、暑を嫌います。
暑すぎる夏は、「心」を傷つけてしまいます。
また、暑すぎるからといって、冷やしすぎると陽気が上手く発散できず、
熱がこもり「心」が弱ります。

何事も、ほどほどが良いのですが、近年の日本の夏は、暑すぎます。
打ち水や行水、夕涼みのような昔から伝わる方法だけでは涼しくなりません。
また、空調設備の普及で、屋内と屋外の気温差も大きくなりました。
程よく暑い中で過ごし、陽気を発散させることが難しくなっていると感じます。

室温を28℃前後に保ち、適度に体をうごかし、汗をかく、
冷たい物をとりすぎない
など、夏は特に、季節に合った過ごし方を心がけたいものです。

ちょっとしたことで汗が出て止まらない。
舌が赤くなる。力なく笑う。憂鬱になる。
げっぷが多くなる。
これらは「心」が弱っているサインです。
毎日の過ごし方を見直してみてください。

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漢方小噺 ~夏の過ごし方~

2024-08-01 13:57:46 | 漢方小噺
 暦の上では、夏は、5、6、7月の3か月です。
今年は7月19日~8月6日が夏の土用。
8月7日立秋から秋になります。

 ですが、それはあくまでも暦の上のお話。
今年は、10月まで、平年より気温が高くなるらしいですね。
というわけで、先人に学ぶ、夏の過ごし方をご紹介します。

 中国の古い医学書「黄帝内経(こうていだいけい)」によると、
夏は「蕃秀(ばんしゅう)。
天地の陰陽の気が活発に交流し、陽気が多く発生するので、
生命あるものすべて、花咲き実る盛んな季節」
だそうです。成長の季節ですね。

 その夏の養生法は次のように記されています。
*夜は夜更かしせず、朝は早く起きる。
*日が長くても飽きないようにする。
*春に思い起こした志を高ぶらせることなく、のびのび過ごす。
*体内の陽気を発散させる。
*心に不満をためない、体に熱をこもらせない。

 夏に『ため込まず、ほどよく発散させる』ようにすれば、
秋に疲れが出ず、健康に過ごせるそうです。

 『ほどよく』が難しいのですが、例えば、お風呂。
暑いからとシャワーで終わらせず、
37~39℃のぬるめのお風呂にゆっくりつかってみてください。
特に、冷え症の人は、秋、冬を過ごしやすくなりますよ。

入浴前の水分補給もお忘れなく。
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