池田 悟≪作曲家≫のArabesque

・・・深くしなやかに・・・(音源リンクしてます)

シューマン「クライスレリアーナ」

2008-12-06 | 弾いたピアノ曲

シューマンの「クライスレリアーナ」全8曲を数ヶ月かけて暗譜した。関心の高い順に練習していったため、番号順では無い。

第1番…限りなく上昇する右手の円運動。勢いを増しながら最後は半径がどんどん広がり最高音D音に達し、放たれたような爽快感が生まれる。
極めて速いテンポのため、ここで音を外さずに弾くのは困難だが、にもかかわらず弾くのが心地好い。
常識的なつけ方とは半拍ずれたバスのシンコペーションにより、推進力を生む。

第8番…ベートーヴェンの第7交響曲と同じ、スキップする乗馬のリズムに固執する。
バスはうっかり者か意地っ張りのように右手に逆らい、勝手気ままにずれ、きしみを生む。
そのずれ方は主題が繰り返される度に微妙に異なるので、丸暗記するしか無い。油断するとバスの「間違え方」を間違えてしまうのだ。

第7番…激しく衝突し、しぶきを上げるアルペジオ。副主題は7の和音のゼクエンツ(連鎖)で安定を確保する。
直後、狂おしいフガートの主題がみるみる合体し、頂点に導く。一見穏やかに見える最後のコラールは、根音では無く第2転回のまま消え去る。

第2番…角笛の平明な主題に2つのインテルメッツォが挟まれる、8曲中最も長大。
第1のインテルメッツォは謝肉祭気分のご挨拶。第2のインテルメッツォは16分音符のアルペジオを下地に、メロディーとバスが模倣する充実したもの。その中間部、半音階で粘っこく上昇する形に変容し、螺旋の形相に息を呑む。主部再現への推移は蜃気楼の如く両手が逆転し、夢心地のまま、あっけに取られる手法で主調に戻る。

第3番…第2番の締めくくり「G-A-B♭-D」で開始する、3連符のリズムによる2拍子のスケルツォ。なだらかな中間部の中、時折第7番の波乱を予感させる。

第4番…明らかにピアノには不向きな、オクターブで塗り重ねられたピアニズム。
低音が重苦しく、むしろ壮大なパイプオルガン。祈るような後半のピークは、再弱音で囁く。

第5番…付点のリズムを基調とする、3拍子のスケルツォ。しつこいほどのフレーズの反復によって生まれる、音楽の魔力。
などと分析できるうちはまだ序の口で、中間部の後半、突如想像を絶する8分音符の半音階的迷宮になだれ込み、頭をぶん殴られたようなショックを受ける。

第6番…子守唄。やがて渦巻く暗雲にかき消され、我に返ると半音階で上行するバスと下行する内声が接近し、ドミナントに達した瞬間、F音のバスが天国的な長さで連打する。
ゆったりと漂流する付点のリズムは、第8曲の軽快な固執リズムに受け継がれる。



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
何故?シューマン?クライス?をお聞きしたいです... (Amicizia)
2008-12-09 22:43:20
何故?シューマン?クライス?をお聞きしたいですね。映画「僕のピアノコンチェルト」を観てからシューマンを再評価してます。 ところで 最近は「まちあるき」は無いのでしょうか?楽しみにしているのですが
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Amiciziaさん、 (I)
2008-12-10 19:10:35
ピアノ講師や志願者の演奏を聴く機会が多く、食指が動いたのです。
Schumannには情緒過多、根拠に基かない作風、という印象があり、暗譜しにくく、これまで敬遠気味でした。
ロマン派はソナタや変奏曲などより、自由な小品集が白眉です。
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