自分ごと化会議
今朝の新聞に,東海第二原発が立地する東海村で,住民が原発問題を議論する「自分ごと会議」が,昨年12月からの5回の会議を経て,村長への提案書をまとめたというニュースが載せられていた。
この会議は,島根原発が立地する松江市で,2018~19年に市民団体が主催した「自分ごと化会議in松江」をモデルとし,その会議をコーディネートした社団法人「構想日本」の提言で,村主催で行われたものである。
「構想日本」は,ホームページによれば,政策提言などを行うシンクタンクで,地方自治体に働き掛けて住民参加型の事業仕分けや,地域の課題についての「自分ごと化会議」をコーディネートしている。
また,「自分ごと化」とは,ある課題について他人任せにせずに,当事者意識を持って自己責任で捉えようという趣旨で,ネットで見ると,高校生などの若い人たちがオンラインを利用して国際的なつながりを持った「自分ごと化プロジェクト」を実施している。
東海村の場合は,住民票から18~75歳の千人を無作為に選びだして会議への参加を呼び掛け(85歳はお呼びでない!) ,応募してきた26名によって会議が構成された。
提案書(案)は以下の6項目からなっている。
(1)村、原電、住民間で原発の正確な情報を共有する
(2)東海第二原発の安全性を強化し、残るリスクを住民に説明する
(3)東海第二の事故に備えた広域避難計画を整備する
(4)東海第二の立地による交付金など、村の現状を知る
(5)東海第二に代わる村の魅力をつくり出す
(6)原発に関する建設的な議論を行う場を多くつくる
提案書は会議参加者の意見などを踏まえて修正し,来年1月に村長に提出されるという。
住民が原発問題を村議会や村当局に任せずに,自分たちの問題としてとらえて提言する,一種の直接民主主義的な動きは,大変結構だと思う。それを前提に,ニュースから得た印象あるいは疑問を述べてみたい。
会議のメンバーは無作為に抽出された住民からの応募者で構成されている。この操作によって,村民の偏らない意見をまとめることを意図したのだろう。しかし,応募者は26名で,最後は15名になっている。この人たちは,指名されても応募しなかった人たちに比べて,原発問題に関心が高く,いわば「自分ごと化」への志向性を持っていたのではないだろうか。その他の人たちとの乖離を埋め,「他人ごと化」を誘発しないようにする工夫が必要に思える。
会議では東海第二原発再稼働の是非そのものは議論しなかったという。参加者からは「賛成、反対を明言して、意見を戦わせる場があってもよかった」という意見が出され,特に第6項の表現について議論があったという。提案の全体的な印象としては,原発およびその再稼働の是認が背景にある印象を受ける。ある結論を前提にして,そのための地ならしに,会議が利用されるようなことがあってはならない。
「構想日本」が組織した住民参加型プロジェクトの成功例として挙げているのは,自治体がその提言を積極的に取り入れて実施しているものである。東海村において,この「自分ごと化会議が村政にどのように位置付けられているかは不明だが,会議の実施だけでお茶を濁さないで欲しいものだ。
冬 二 景

2013年1月,蔵王にて

暖をとる。2016年3月カナダホワイトホースにて。