With Coronavirus
政府は5月8日をもって,新型コロナウイルスの法律上の位置づけを,現在の2類からインフルエンザと同等の5類に変更する方針を決定した。いうならば,日本では新型コロナウイルスと共生する,With Corona の時代に入ることになる。
一昨年の1月15日のブログに,長崎大学熱帯医学研究所山本太郎教授の新聞紙上に掲載された,「新型コロナ感染症と生きるには」と題する発言の要旨を紹介した。2年前の発言であるが,現在の状況にとって示唆に富んでいると思うので,再掲する。
山本氏は,今の感染対策において,「何をめざすのか,いまどこにいるのか,ロードマップ」が示されていない点が不足していることを,まず指摘する。氏のいう目指すところとは,社会経済と両立する集団免疫によるウイルスとの共生である。ここに至る過程には,社会経済的あるいは防疫的な措置の「大きな物語」のほかに,もう一つ個別の死に関わる「小さな物語」が存在する,という。そして,ウイルスとの共生が望ましくてもそのために命が失われてよいということではなく,「小さな物語」に寄り添って「大きな物語」を進めていかなければならないと指摘している。さらに氏は,「パンデミックに倒すべき相手はいない。闘うのではなく,ウイルスを社会に取り込んでいくという感覚が必要」であるという。
氏のいうロードマップは,感染の拡大に応じて規制を強め,波が収まると緩めるという,ピーク アンド カットの戦略に基づいて描かれていたと言えよう。そして,新型コロナウイルス感染症を2類から5類に移し,社会は目指すところのコロナとの共生を実現する,ロードマップ上の段階に至ったと政府は宣言しようとしている。
しかしそれは,感染対策を個人の責任にすべて負わせることであってはならない。「小さな物語り」に寄り添うことは依然として行政の責任である。
新型コロナウイルスに対する集団免疫が果たして形成されているのか,「治療薬」とされる薬に効果はどの程度か,重症化しやすい高齢者や持病保持者へのケアはどうするのか,ワクチンの定期的な接種をどう継続するのか,予防・治療措置に対する財政的援助はどうするのか,これらをしっかりとわたしたちに示すことを求めたい。
わたし自身は,これまでとってきたコロナウイルスに対する予防措置を緩めるつもりはない。
天 馬
高校陸上競技部のOBで作っている「天馬会」の機関誌『天馬』60号が届いた。
総ページ数90の立派な冊子である。大正4年卒から現在に至る107年間の卒業生の名前が収録されている。毎年編集・出版の労をとってくださる,在松本のOB諸氏には心から感謝したい。
今号は,昨年亡くなった前天馬会会長藤森茂幸氏への追悼記事が目を惹いた。わたしは現在「東京天馬会」の会長を仰せつかっているが,前会長だった元宮内庁長官・日本赤十字社名誉社長の故藤森昭一氏は茂幸氏のお兄さんであり,ご兄弟そろって天馬会の発展にご努力いただいたことに感謝し,ご冥福をお祈りする。
『天馬』の内容は盛り沢山だが,一番楽しみにしているのは「はがき便り」で,旧知の方々の消息を知ることができることである。ところが,この投稿の密度が若い世代に行くほど薄くなる。高校を出て新しい社会に触れたり,働き盛りで多忙だったり,理由はいろいろあるだろうが,年をとると同じ釜の飯を食った仲間ほどいいものはない。どうか「天馬会」をお忘れなく。
STOP WAR!