フロンティア
12月6日から,NHKBSの新シリーズ「フロンティア」が始まった。
“最先端を切りひらく者にしか見えない景色がある”といううたい文句で,科学,宇宙,歴史,アートなどの分野の最先端を担っている人たちからその現状をレポートしてもらう,ドキュメンタリー番組である。
第1回,第2回をビデオに収録して観た。なかなか面白かった。
第1回は「日本人とは何者なのか」というテーマで,日本人のルーツを探る最先端の情報が紹介された。
研究手段の主役はゲノム解析。DNAのシークエンス解読が容易になったことを背景に,発掘した人骨のゲノムを比較することで,日本人のルーツの物的証拠が得られる。
縄文人のゲノムは,アフリカを出て東南アジア海沿いに北上した集団と類似し,驚くことに縄文人は,近隣の古代人とは異なり,アフリカを出て東アジアに至った集団の直系子孫であると考えられる。大陸から海によって隔てられた千人の集団から1万6千年から3千年前に至る縄文人が形成され,北東アジアから渡来した集団がこれに交わって,弥生人が形成される。
日本人の起源としては,縄文弥生の二元説が定番だったが,古墳時代の人骨のDNA解析から,この二元では説明できないことが分かり,古墳時代に東アジアから渡来した人たちが弥生人と交わって現代人の祖先が形成されたと考えられるようになっている。(三元説については,2021年9月18日のブログ参照)
わたしたは,自分の体の中に人類発祥の地のアフリカからの血を受け継いでいると考えると,非常にうれしくなる。
日本人は1万数千年に及ぶ独特の縄文文化に東北アジア,東アジアの文化を取り入れ,多様性の中から現在の文化を築いてきた。われわれは内なる多民族なのだ。
第2回は,「AI 究極の知能への挑戦」がテーマで,最先端のAI研究者がの研究内容が紹介された。
先ず登場したのは,イギリスの企業が開発したAmecaという人型ロボットで,ChatGPTが組み込まれている。音声で対話をし,日本語でも応対する。対話の途中で,「休憩しましょう」と提案すると,「休憩して外の風にあたると,リフレッシュできます。」と答える。
生成AIに,手塚治虫の漫画『ブラック・ジャック』の新作を創出するプロジェクトも紹介される。生成AI(ChatGPT)は,見守る映画監督らの思いもよらぬストーリーを作り上げる。
そのほか,地形の変化に応じてボールを転がし続けるドリブルロボット,ひっくり返って足をばたつかせながら30分で自力で立ち上がり,さらに30分で起き上がって歩き始めることを学習するロボットの紹介があった。
生成AIは膨大な単語のつながりの中から,TPOに応じた蓋然性の高い文章を紡ぎ出すことを通じて,解答や方針を導き出す。心理や感情も言葉のつながりで表現される。
さらに番組では,人間の知能がどのようにして形成されるかについての研究も紹介された。バーチャルの子宮空間の中で胎児を動かし,子宮との接触が知能の形成にどう作用するかを明らかにする研究,脳細胞を培養した小塊を培地の中において,相互の干渉を解析する研究など,”Body shapes brain.”とAIとは別の方向から知能の形成に迫る研究が行われていた。
最後に,「AIは人間の知能を越えるか」との質問に,人型ロボットのAmecaが「越えると」答えていたのが印象に残った。
内容的に難しいところはあるが,お手軽に最先端の動きを知るには格好の番組である。
寒さに耐えて

ヤセイカンラン

エゾギク

チャノキ
STOP WAR!